『ソラニン』『おやすみプンプン』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』など、数々の名作を手がける漫画家・浅野いにお氏。デビューから20年を迎えた今年、初の原画展となる「浅野いにおの世界展〜Ctrl+T2〜」が開催されることとなった。

  • 「浅野いにおの世界展〜Ctrl+T2〜」
    2018年12月21日(金)から2019年1月14日(月・祝)まで池袋サンシャインシティにて開催

開催に際し、マイナビニュースでは浅野氏に特別インタビューを敢行。20年間の思い出や漫画制作へのこだわり、原画展への意気込みについて伺った。

浅野 いにお(あさの いにお)
1980年生まれ、茨城県出身。2002年『素晴らしい世界』(月刊サンデーGX/小学館)で連載デビュー、2005年に連載を開始し、若者の青春の葛藤を描いた『ソラニン』(週刊ヤングサンデー、小学館)は実写映画化もされる大ヒット作に。その後も『おやすみプンプン』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)などのヒット作を発表し、『情熱大陸』(TBS系)でも取り上げられるなど、若者を中心にカリスマ的な人気を博す。現在は『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)を連載中。
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◆僕は“努力が必要な人間”

――今回、原画展を開くことになった経緯は?

僕はこの20年、大きな賞をもらったり、盛大に祝われたりした経験がなくて。それでも漫画家として活動できているのは、綺麗事に聞こえるかもしれませんが、読者の皆さんがいたからだと思っています。ひとつの節目となる今年、応援してくれる方に何かしら還元したいと思い、原画展を考案しました。

根暗で卑屈な僕の漫画を「好き」と言ってくれる人は、声が小さいというか、なかなか顔が見えづらい。なので、一度くらいはリアルなイベントを通して、その人たちと会ってみたいという気持ちが強いです。

ただ、当初は画廊だとか小規模な会場を想像していたので、会場の大きさにはいまだにビックリしています。「こっ恥ずかしいな」という気持ちは拭えないですね。

――原画展のタイトル「Ctrl+T2」の意味と、そのメッセージを教えてください。

画像編集ソフトで「拡大・縮小」を行うショートカットキー、「Ctrl+T」から来ています。僕が漫画を作るときは、“作画”というよりも“編集”をしている感覚で。バラバラに描いた素材をまとめて、原稿になるよう組み立てて、そのときによく「拡大・縮小」を使うんです。

たとえば『おやすみプンプン』の主人公・プンプン。彼の輪郭は、小さく描いたイラストを拡大して使っているので、特徴的な線になっています。このような作り方をしている漫画家は、僕が知る限りでは僕以外にいない。だからこそ、原画展のタイトルにピッタリかなと。

  • 『おやすみプンプン』(C)浅野いにお/小学館

――デビュー当時から、「いつかは原画展を開催するかも」と想像していましたか?

まったく想像していなかったですね。そもそも漫画家がイベントを開くようになったのも、ここ10年くらいのことなので、当時は思ってもみなかったです。それに、僕の漫画はキャラが立っていたり華があったりするわけではないし。でも、そんな僕がイベントをすることで、「こういうのもありだよね」と感じてもらえたら嬉しいです。

――この20年のなかで、最も思い出に残っている瞬間はありますか?

『ソラニン』の実写映画が公開されたときですね。それまでは「自分の作品が誰かに読まれている」という実感がなかったのですが、良いものから悪いものまで、初めて人の意見が見えた瞬間でした。

――当時の自分にアドバイスするとしたら、何を伝えますか?

何も言うことはないですね。 当時は先が見えない不安に苛まれながら、必死に描いていました。担当編集にも、「その異常なまでの焦燥感が良いところだ」と買われていて。反発ばかりではなく、来たボールは何としても返す。「意地でも作家として軌道に乗る。そうでないと死んでしまう」みたいな気持ちが、僕がここまで残れた理由だと思っています。 「大丈夫だよ」とか優しい言葉をかけると絶対に怠けてしまうので、逆に「苦しめ」と伝えたいです。

――ちなみに、これまでの作品の中で、浅野先生が自分と似ていると感じるキャラクターは?

『プンプン』に出てきた雄一おじさんには、連載当時から自分を重ねています。いまも、相変わらずその延長線上にいますね。

  • 『おやすみプンプン』(C)浅野いにお/小学館

――あと、結婚したいキャラクターもお伺いしたく……。

うーん、難しいですね……。女性に限らずですが、自分が歳を重ねるごとに、キャラクターへの考え方がフラットになったんです。なので、どこか自分と接点がない存在というか。猫を見て「かわいい」と思う感情に似ている気がします。

『デデデデ』以降は特に距離が開いているんです。とはいえ、作者の目線は作品のどこかに入れておきたいので、『デデデデ』では自分の立ち位置を“母艦”に置いています。物語をどうとでも転がせるけど、基本的には関与せずに見ているだけの存在。

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

――どのタイミングから、目線が切り替わったのでしょうか?

『おやすみプンプン』がひとつのターニングポイントだと感じています。『プンプン』は、自分の内面を見つめ、一個人の自意識を深掘りしていく話。しかし、最終話に向かうにつれて、“自意識の呪縛から解放される”といった流れになりました。

それは、僕が歳をとったことで、僕自身のこだわりや自意識が薄らいできた、というのが関係していて。なので、俯瞰で見ながら全体を統括する“監督”のような役割に、ポジションが変わっていったのではないかと思います。

◆”浅野いにおのレベル”にはなれると勇気を持って

――今回の原画展は作品ごとにブースが分かれており、それぞれの世界観を表現しています。浅野先生のなかで、特に注目してほしいポイントは?

各作品を描いていた時期によって、自分の気持ちや目的が違っています。特に、『プンプン』や『デデデデ』といった長期連載には思い入れも強いので、そのブースには注目してほしいです。

あとは、ある時期から絵が急激に上達しているのが、顕著にわかると思います。僕は天才型ではなく、努力が必要不可欠な人間。なので、「頑張れば、“浅野いにおレベル“にはなれるんだ」と、勇気を持ってもらいたいです。

――ブースは年代順に並んでいるので、浅野先生の歴史が手に取るようにわかるのも見どころですね。

新人時代の原稿なんて、今の僕の感覚だとあり得ないくらい、恐ろしく真っ白なんですよ。その原稿も展示しているので、ある意味でも観る価値があるんじゃないかなと。

――最後に、今回のイベントを一言で表すとしたら?

うーん、ネガティブな言葉しか出てこないな……。“恥の上塗り”とかですかね。

新人のとき、担当に「自分の内面を表に出せ。それを恥ずかしがっているようでは、一生漫画家にはなれない」と言われていて。そこから、恥ずかしいと思う気持ちを無理やり抑えつけてきました。でも、僕自身の本質は変わっていないので、自分を表に出せば出すほど恥ずかしいんですよ。

でも、今回だけ。この原画展だけは、「自分のために何かしてみたい」という気持ちのほうが強いです。なので、恥ずかしいとは思いながらも、嬉しいですね。

あとは、僕が“恥ずかしい”という気持ちを抱えていることを、賢明な読者はわかっていると思います。そこも含めて楽しんでもらいたいです。

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「浅野いにおの世界展〜Ctrl+T2〜」は、2018年12月21日(金)から2019年1月14日(月・祝)まで池袋サンシャインシティにて開催。デビュー前の持ち込み原稿や各作品の原画のほか、『デデデデ』キャラクターたちの洋服なども見ることができる。

また、事務所を再現したブースでは、浅野氏も愛用しているマウスコンピューターのクリエイター向けPC「DAIV」の展示も。PCを使った漫画制作についてのインタビュー動画が公開される。

さらに、12月20日(木)に行われる特別内覧会には浅野氏本人が登場し、「DAIV」を使ったライブドローイングを行う。 作画の風景を生で見られる貴重な機会なので、ぜひ足を運んでほしい。

※特別内覧会はローソンチケットから要申込。応募多数の場合は抽選。
応募期間:11月9日(金)12時00分~11月13日(火)23時59分

「DAIV」特設サイトでは、”浅野いにおの漫画観”に迫るスペシャルインタビューを掲載中。詳しくはこちら

  • (C)浅野いにお/小学館 (C)浅野いにお/太田出版 (C)浅野いにお/ロッキング・オン
    ※画像クリックでスペシャルインタビューへ

◆画業20周年記念企画「浅野いにおの世界展~Ctrl+T2~」

日時:2018年12月21日(金)~2019年1月14日(月・祝) 12:00~19:00
(休館日:2018年12月31日(月)、2019年1月1日(火))
会場:池袋 サンシャインシティ ワールドインポートマートビル4F 展示ホールA
チケット:一般・前売 800円 / 一般・当日 1,000円 / 限定グッズ付前売 1,300円
中高生・前売 600円 / 中高生・当日 800円 (すべて税込)
主催:「浅野いにおの世界展」実行委員会
詳しくはこちら

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