株式会社ホリプロ本社

株式会社ホリプロ本社

1960年創業の株式会社ホリプロは、芸能生活50周年を迎えた和田アキ子さんなど多くのタレントを擁する老舗の大手芸能事務所だ。タレントをマネージメントする事業部のほか、映像事業部、公演事業部などがあり、ライブ、音楽、舞台などさまざまな現場で社員が活躍している。

そんな同社では、30年以上にわたり社員が日々の業務内容を報告する「日報」や「週報」を、紙の書類に書いて提出し、上長はこれらのすべてに対して目を通し、フィードバックするという業務フローを続けていた。

単なる承認と報告ではなく、コミュニケーションと人材育成のために

特に「週報」については、ホリプロ社内で「コメント」と呼ばれており、重要なコミュニケーションツールとして機能している。このことについて、同社 業務本部 総務部 部長の堀井一孝氏はこう語る。

株式会社ホリプロ 業務本部 総務部 部長 堀井一孝氏

株式会社ホリプロ 業務本部 総務部 部長 堀井一孝氏

「当社にとって普通の会社で商品に相当するのがタレントです。もちろん、『タレント=人間』であり、一人一人性格の違うタレントをマネージメントしていくことには大変な能力がいります。上司に適切な報告ができなければ、クライアントやタレントと、コミュニケーションのキャッチボールができません。週報のコメントは事実の報告だけではなく、むしろ社員が気づいたことや感じたことを書いてもらっています。それに対して上長がアドバイスや指示をフィードバックして、社員を育てようとしているのです。たとえばあるマネージャーが『今週は◯◯のオーディションがあって……、次は……しようと思います』と報告してきたら、上長は『◯◯なら事前に言ってくれればこういう対策ができたよ』とフィードバックを返せます。こうして社員は仕事のやり方を覚え成長していきます。また、社員が書くコメントの内容や長さ、言葉の調子を継続的に見ているうちに、上長はその変化に気づくこともできます。そのため当社における週報とは、コミュニケーションのツールとしてとても大切なものなのです」

しかしその一方で、紙による承認フローであるがゆえの課題も抱えていた。社員はコメントを記入した書類を毎週1枚、直属の副部長に提出する。部署によって人数の差はあるが、副部長はおおむね5~6人分の書類にコメントを書いて部長へ送る。そして部長は30人分ほどのコメントを書いて執行役員へ。役員は30~60名ほどのレビューを4週分、1か月に100枚以上に対してコメントを書き、その後で現場の社員にフィードバックされる。

管理職や役員もほとんど現場に出ているので、これだけの書類の処理がどれほど大変で時間がかかるかは想像に難くない。管理職や役員が書類の束を持って出かけ、稽古場の片隅で時間を見つけてコメントを書くこともしばしばだったという。社員の立場からすれば、ずいぶん前の報告に対してフィードバックが返ってくるようなタイミングとなり、即座に業務に活かせなかったり、振り返るには時間が経ちすぎたりしている、ということもあったそうだ。

FileMakerによるカスタム Appでフィードバックにかかる時間が激減

そこで同社では、2014年から全社員に貸与していたiPhoneを使った週報の電子化について検討を開始した。当初は、クラウドベースのアプリ導入を検討していたが、ロケ地や舞台の楽屋など携帯電話の電波が届きにくい場所での利用も視野に入れ、iOS 端末ともWindows PCとも親和性が高いことが決め手となり、固有のビジネスに最適なカスタム App(カスタムアプリケーション)を作成できる開発・実行環境ツール「FileMakerプラットフォーム」の導入を2016年に決定。2017年には、iPhoneとFileMakerで、この報告と承認フローをペーパーレス化したのだ。

外勤社員向けにiPhoneを300台、管理職(副部長以上)と役員にiPhoneとiPadを50台貸与し、これらのデバイス上のFileMaker Goでカスタム Appを利用している。オフィスでは、内勤社員に対し50台のWindows PCでFileMakerを使えるようにしている。

FileMakerを選んだ理由を堀井氏は、「まず、iOSデバイスとWindows PCの両方で使える必要がありました。そしてFileMakerならプロトタイプ的なものを作成し、使いながら工夫し改修していけるのが、我が社には合っていると思いました。タレントも現場もすべて違うため、定型業務が少なく、最適な答えもひとつではないからです」と説明する。

今回のペーパーレス化では多くのメリットが得られたという。まず何と言っても、フィードバックに要する期間の短縮だ。紙の書類では本人にフィードバックされるまで2か月ほどかかることもあったが、カスタム Appの導入後はほぼリアルタイムとなった。また、特に外勤社員からは、iOSデバイスならいつでもどこにいても入力できると好評だそうだ。

  • 外出先からでもコメントの入力や閲覧が可能
  • 外出先からでもコメントの入力や閲覧が可能
  • 外出先からでもコメントの入力や閲覧が可能

コミュニケーションの質など、ほかにも多くのメリットが得られた

FileMakerによるペーパーレス化の利点は、ほかにもある。フィードバックがすぐに返ってくるので、社員から「先週の続きで実は……」といった話が出てくるなど、コメントのキャッチボールが成り立つようになり、これまで以上のコミュニケーション活性化に寄与している。 今回のカスタム Appでは、社員がコメントを提出すると副部長以上に同時に共有され、順不同で返信コメントが書けるようになっている。このため、管理職と役員の情報共有や育成にも役立つようになったのだ。

また、意外に見落としがちな問題として、未提出者に対する対応とその管理がある。これを紙の書類でチェックするのはかなりの手間がかかるが、今回のカスタム Appでは提出状況を一覧表示できるので一目で把握することができる。

そのため、書類の仕分けをする内勤社員の作業時間が大幅に減少したのも大きなメリットだという。週報やコメントには企業秘密に関わる内容なども多いので、紙に比べて紛失や漏洩のリスクが低くなった点も重要だ。

UIを重視し仕様書なしで開発、ユーザの成長とともにカスタム Appも進化

このFileMakerのカスタム Appは要件定義ありきではなく、ユーザであるホリプロが何をしたいか、iPhone・iPad・PCでどのようなアプリの操作感にしたいかを重視して開発されている。

株式会社寿商会 代表取締役社長 若林孝氏

株式会社寿商会 代表取締役社長 若林孝氏

このカスタム Appを開発した株式会社寿商会 代表取締役社長の若林孝氏は、「まずはこれまで書いていた紙の書類と同様のレイアウトで使い始められるようにしました。ホリプロ様と話し合って開発を進めるうちに、コメントによるコミュニケーションの重要性がわかってきて、お使いいただきながら修正し続けています」と語る。

堀井氏も、「現場のスタッフが、より生産性をあげて活躍することを最優先に考えた結果、紙のレイアウトのまま iPhone へ移行することがベストだと考えました」と語る。

このため、社員を対象としたカスタム Appの導入研修はまったく必要なかったという。多くの機能を盛り込まず週報のコメントに絞ったことで、社員が抵抗なく使い始め、日々の業務の中に自然に組み込まれるという結果を得られたそうだ。使い慣れてきて、たとえば社員から「一覧表がほしい」との声が上がってきてから一覧表を追加するなど、カスタム Appに対する社員の成長に応じて進化させているという。

FileMaker Cloudに移行し速度と安定性が向上、さらに活用の幅を広げたい

2017年2月の導入当初はサードパーティのクラウドサーバーを利用していたが、2018年1月に、安定性やセキュリティ、管理のしやすさを目的にAWSクラウドサービス上で稼働するFileMaker Cloudに移行した。

「今まで以上にレスポンスが速くなり、より安定したのを実感しています。日報や週報は大切なコミュニケーションツールなので、社員が快適に利用できるのは重要なポイントです。そういった意味でも、FileMaker Cloudへ移行したのは正解だったと思います」(堀井氏)

日報や週報を通じて、ホリプロのコミュニケーション変革の一助となっているFileMakerだが、同社では今後、蓄積されたコメントのデータ活用のほか、会議室やスタジオ、貸出品の予約などのシステムにもFileMakerでカスタム Appを作成し、利用していきたいという。これらが実現されていけば、コミュニケーションを通じ、ホリプロの「働き方改革」にも大きな影響を与えていくだろう。

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