2020年、小学校教育にコンピュータープログラミングが取り入れられるようになるという。これによって子どもたちのPC事情に大きな変化が生まれると予想されており、保護者の方々もふくめ様々な準備をしていかなければならない。

今回は、プログラミング講師としても活躍している株式会社H2O space代表取締役、ともすた合同会社代表のたにぐち まこと氏に、子どもたちの情報通信技術(ICT)教育事情について話を伺った。

たにぐち まこと
Web制作会社 H2O spaceで、現役のプログラマーとして活動しながら、2018年からプログラミングの学習事業をメインにした「ともすた合同会社」を設立。学習したい人が、いつでもどこでも“ちゃんと”学習できる場を目指して、映像講義の販売などを手がけている。
主な著書(監修含む)に「いちばんはじめのプログラミング(マイナビ刊)」「マンガでマスター、プログラミング教室(ポプラ社刊)」「マンガでざっくり学ぶプログラミング(マイナビ刊)」など。

2020年、何がわる?

――2020年、小学校教育にコンピュータープログラミングが取り入れられるとのことですが、何が変わるのでしょう?

たにぐち氏:詳しい内容については、まだ揺れている部分があったり、各小学校に任せられる部分もあったりするようなので、現時点では何ともいえないのが実情です。しかし、プログラマーを養成するような授業ではなく、たとえば算数や理科などにプログラミング教材を導入して、論理的思考を取り入れるというのが大きな流れのようです。

――プログラミング必修化の裏側には、日本の子どもにおけるICT事情が世界と比べて遅れているからとか、そういった理由があるのでしょうか?

たにぐち氏:私は、決して遅れているわけではないと思っています。各小学校には現在でもすでにコンピュータールームがあったりしますし、ICT教育には十分に取り組んできています。

ただし、これまでのコンピューター教育は、Officeソフトウェアを使って何かを発表する、といったような一般的な作業がメインで、プログラミングの思考などは入っていません。それを補完する意味で、今後の授業に取り入れられていくのだと考えます。

コンピューターへの興味を長続きさせることが大切

――たにぐちさんは、子どものころからコンピューターに興味があったのですか?

たにぐち氏:私がコンピューターに興味を持ったのは、小学校5年生のときです。父親は設計の仕事をしており、そのころは製図からCADへと、業界が大きく変化した時代だったそうです。

父親も改めてコンピューターの勉強をすることになり、その時に父のパソコンを借りてプログラミングを体験したのがはじめです。最初はOfficeソフトウェアの使い方などを勉強していましたが、ゲームが大好きな子どもだったので、「パソコンで何かできないか」と考えるようになりました。当時、コンシューマ機のソフトは自分にとっては高額で、頻繁に買えるものではありません。そこで調べてみたところ、パソコンがあればゲームを作れることが分かったので、そこからプログラミングに夢中になりましたね。

――やはり、コンピューターへの理解を深めるには環境が大切なのですね。

たにぐち氏:その通りです。しかし、一方的に教えるだけではダメだと思います。たとえば、ロボットを動かすプログラミング講座などは子どもたちに大人気ですが、そこでは動かし方を一問一答で学ばせることが多いように感じます。好きな事とはいえ、毎回正解、不正解でものごとを進めるのは、結構きついのではないかと。

ロボットをプログラミングで動かすことによって、どんなことができるようになるか、といった広い視野から様々な可能性を示してあげるほうが、子どもの興味も長く続くのではないでしょうか。

――まずは、コンピューターの可能性を教えてあげることが大事なのですね。

たにぐち氏:そうですね。プログラミングに興味を持ったとしても、プログラミング言語を習得する道のりは長く、外国語の習得とほとんど変わりません。単語も多く、それらを自在に扱えるようになるには、いくつもの壁があります。

子ども達が外国語を覚えるときも、最初は「外国の友達が欲しい」とか、「外国の歌が歌いたい」といった部分から興味を持たせて、それに向かって少しずつ言葉を覚えていく方が、興味が長続きするでしょう。プログラミング言語の習得も、外国語を学ばせるのと同じような過程を経ていくのが望ましいと思います。