労働人口の減少と少子高齢化が同時に、かつ急速に進行している現在、社員の能力を最大限発揮できる環境を整備する働き方改革は、企業にとってすぐにでも着手すべき課題である。しかし、いざ推進しようとしても、そこにはいくつかの壁が立ちはだかる。

本記事では、各種ITデバイスのレンタルと保守・運用サービスをサブスクリプション(月額制)で提供するパシフィックネット 執行役員 亀田崇宏氏と、同社のパートナーであり、テレワークやリモートワークを支援するファイル仮想化ソリューション「Shadow Desktop」を提供するアール・アイ 取締役 石坂俊成氏に、日本において「働き方改革を阻害する要因」とその解決策について対談してもらった。

  • パシフィックネット 亀田 崇宏氏(左)とアール・アイ 石坂 俊成氏(右)

    パシフィックネット 亀田 崇宏氏(左)とアール・アイ 石坂 俊成氏(右)

経営層の“クラウドアレルギー”が、働き方改革の推進を阻害する

石坂氏
「働き方改革を推進する」。このワードはテレビや新聞など、各種メディアを通じて耳にする機会がここ数年で急激に増えています。残業時間の削減だけが集中的に取り上げられていますが、背景には労働力人口の減少があります。最近は景気の後押しによる売り手市場の影響もあり、どの企業も採用には非常に苦労しています。働き方改革は自社が社員を思いやっていることを世の中に認知してもらう効果もあり、働く側が企業を選ぶ際に気にかけるポイントでもあります。

この点について一定層からの理解は得ているのだと思いますが、実際に働き方改革を推進しようとすると、色々な壁が立ちはだかる。私自身、多くの経営者と接したことで感じた要因のひとつに、経営層の情報リテラシー不足があります。

亀田氏
それは私も痛感しています。私たちもリモートワークについての相談をよくいただくのですが、クラウドサービスを活用した提案をすると「クラウドはだめ」と言われることが、本当に多いです。理由を伺っても「会社の決まりだから」と頑なに拒まれる。

パシフィックネット 亀田 崇宏氏

海外との大きな違いなのかもしれませんが、日本ではどうしてクラウドはだめという声が多いのだろうって思います。

MicrosoftやAmazonの最新設備が整った堅牢性の高いデータセンターにあるサーバーと、オフィスに置かれたサーバーとでは、セキュリティ面でどちらが安全なのか、何をもって判断されたのだろうか、と。 クラウドサービスにおいては既に多くの事例があり実績も豊富であるにも関わらず、どうしてもレガシーな方向に向かってしまう。 社内でシステムを構築した際に、運用における人的リソース(運用コスト)等の見えないコストを経営層は意識していないケースが多く、その点クラウドサービスは少ないリソースでも安全に、どこからでも運用管理ができるのは大きなメリットです。

石坂氏
あくまで私の肌感覚ですが、経営者の半数以上はクラウドの利用に“漠然とした”根拠のない不安を持っています。クラウドを活用することで業務効率改善や生産性向上を望めるはずなのに、クラウドを除外して考えるから選択肢が狭まってしまう。そのリテラシー不足が、働き方改革の実現を阻害している大きな要因だと思っています。日常生活では多くの方がSNSでつぶやかれていたり、ネットショッピングなどをされたりしているかと思いますが、あれも クラウドなんですけどね。

そのデバイスは、本当に社員の働き方を考えて選ばれたのか

亀田氏
もうひとつの壁は、デバイスに対するリテラシー不足だと感じています。これは最近お取り引きした企業様なんですが、リモートワークのためのシステムを導入したのに、リプレイスする端末がデスクトップでした。

石坂氏
持ち運ぶことが前提のシステムなのに、持ち運べない機種を選ぶなんて。

亀田氏
その企業は結局、初期費用で安いか高いかを判断してしまい、結果安い機種が選ばれました。もちろん、すべての端末を持ち運びが前提のモバイルにすればいい、とはなりません。社内で業務する部署なら、デスクトップPCの方が、画面が大きく作業がしやすいでしょう。しかし、リモートワークのためのリプレイスであるならば、一律でデスクトップPCをリース契約するのではなく、試しに一部の台数だけでもモバイルノートPCを試してみるという柔軟性があってもいいのはないか、と思います。

試すだけなら、意識のハードルも下がると思うのです。私たちが、ITデバイスを長期利用が前提で解約のしにくい「リース」ではなく、短期間でも利用可能な「レンタル」で提供しているのも、「試してもらいやすく」するためでもあるのです。

石坂氏
未だに、デバイスはリース契約が主流だと聞きます。リース契約は大体5年間なので、契約期間内は機種変更も原則できない。スマートフォンでさえ 2年契約が多くを占めるのに、PCは未だ5年。長期間使用し続けることでバッテリーも劣化し、動作も遅くなります。ストレージの容量だって足りなくなる。この機器へのリテラシー不足が生産性の向上を阻んでいます。昨今、ITサービスは買い切りではなく“月額費用”のサブスクリプションも台頭しています。所有ではなく利用です。

アール・アイ 石坂 俊成氏

サブスクリプションの利点は、始めること、解約することのハードルの低さです。月単位の契約なので、解約したいと思えば、契約更新をしなければいい。サブスクリプションの考え方は、パシフィックネット様が提供している「レンタル」と同じものです。私がパシフィックネット様とパートナーシップを結びたいと思ったのは、まさにそこなんです。

亀田氏
そうですね。また、レンタルであればリースと違い、途中で最新機種に変更することも可能です。今の時代、一から十まで、すべて決まってから動き出すようでは、他社との競争にも遅れをとってしまいます。まずは試して、問題があれば改善して、精度を高めていく。もし合わないと感じたらすぐに解約する。それが今の時代に合ったやり方だと思います。

SIMが持つ可能性

石坂氏
私がもう一つ、パシフィックネット様のソリューションで魅力を感じたのがBizmo(*1)の存在です。おそらく多くの人が朝起きてから、寝る前まで肌身離さず持ち歩いているスマートフォン。どうしてスマートフォンが便利なのかと言えば、ボタンを押せば、インターネットにつながって、すぐにさまざまなサービスを利用できます。そのサービスの多くはクラウドにつながっています。この“回線に接続する手間を省き、無意識にクラウドを使っている”という状況に、大きなビジネスチャンスが存在すると考えています。私はこれを、「PCのスマホ化」と呼び、大きく前進させていきたいと考えています。 スマートフォンとWi-Fiルーターをセットで持ち歩きませんが、PCにはなぜか、Wi-Fiルーターを持ち歩く人がほとんどです。これがデバイスに依存している弊害だと捉えています。

  • Bizmo ハイパーコネクト

    (*1)Bizmo:パシフィックネットが提供する法人向け通信サービスブランド

亀田氏
SIMであれば、大手キャリアと同じく通信可能範囲が広く、どこでもつながります。たとえば、ホテルやネットカフェ、あるいは無料のWi-Fiスポットなどで業務を行う場合、まず接続設定をしなければならない。また、それらがセキュアなネットワークかどうかもわからない。この点からも、SIMの方が安全で効率がいいと感じています。皆さんにも知ってもらいたいですね。

石坂氏
セキュリティと利便性のバランスが取れていないケースが結構ありますよね。例えば、社外にデータを持ち出さないためにVDI(デスクトップ仮想化)を導入した場合、ネットワークが切れると一切の作業ができなくなってしまいます。私はよく新幹線を利用するのですが、トンネルが多く、おそらく乗車時間の2/3は作業が滞ってしまいます。「いつでも、どこでも」であるのなら、ネットがつながらない環境でも、少なくとも作業はできなければなりません。そこが、一般的なVDIと私たちが提供する「Shadow Desktop」の大きな違いです。

「Shadow Desktop」
クラウドストレージに保存されているファイルを、パソコンのローカルドライブにあるかのように使用できるファイル仮想化ソリューション。VDI(デスクトップ仮想化)とは異なり、ファイルの操作は端末上で行うため、ローカルに保存されているファイルを操作しているような感覚で利用できる。なお、ファイルは端末にキャッシュされるため、操作中にオフラインになっても、そのまま利用が可能。ログオフ時にはデータをクラウドストレージにアップロードし、キャッシュデータはすべて削除されるため、端末側にデータは一切残らない。

https://www.ri-ir.co.jp/ri_product/shadowdesktop/

デバイスとともに、社内制度の見直しも必要

石坂氏
2020年の東京五輪まであと2年を切りました。開催期間中の累計来場者数はのべ1,000万人を超えると言われています。そんな状況下、通勤通学にも支障をきたすことが想定されます。開催期間中の通勤通学は差し控えるようにと、政府からお達しが出る可能性も考えられます(*2)。つまり2年後の段階で、リモートワークやテレワークに対応できていないと、オリンピック期間中は業務が大きく滞ることも考えられます。加えて、2020年には、Windows7のEOS(End Of Support)も発生します。Windows XPの時と同様の“狂想曲”がまたやってきます。今すぐにでも対策を講じていかないと、2020年以降に大きな負担になる可能性があります。

(*2)
総務省「2020年に向けたテレワーク国民運動プロジェクト - テレワーク・デイ参加企業の募集 -」
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000171.html

亀田氏
リモートワークのシステムそのものは、クラウドを利用することで、1ヶ月程度の期間で環境を整えることはできます。しかし、実際にリモートワークを実施するには、就業規則や人事評価制度、勤怠管理など、社内の様々なルールの整備が必要です。それを短期間で作り上げるのは難しい。ですから石坂さんのおっしゃったように、やれることから、早く実行すべきなんです。特にご自身でオフィスでも家庭でも、ITを駆使して 業務を遂行してこられた石坂さんならではの経験値はとても重要だと思います。

やってみなければ分からないことが非常に多い。まずは試して、その経験で導き出された課題や問題点をベースに社内ルールをアップデートしていけばいいのです。私たちが提供する仕組みは、多くの人に「試してもらう」ためのものなのです。

[PR]提供:アール・アイ