2~50程度のアミノ酸からなる「ペプチド医薬品」の市場が、近年、急速に拡大しつつあります。ペプチド医薬品は、分子量の少ない「低分子医薬品」と抗体医薬品などの「高分子医薬品」の中間に位置付けられる「中分子医薬品」のひとつです。代表例として、血糖値を低下させるインスリンがよく知られています。

低分子医薬品は、経口投与が可能で、低コストで製造できるというメリットがあります。分子が小さく細かな標的を狙うのに適していますが、標的への特異性が低く副作用が起こりえます。一方で、抗体医薬品は標的への特異性や結合性の高さがメリットです。ただし、製造コストが高く、経口投与ができないというデメリットもあります。中分子医薬品は、これら低分子医薬品と抗体医薬品の"いいとこ取り"を実現する特徴を持つとされ、脚光を浴びるようになりました。

このペプチド医薬品に着目して事業を展開しているのが、2005年に東京農工大学発のベンチャー企業として立ち上がったJITSUBOです。高品質なペプチド原薬を安価で製造できる独自の技術を持つ同社は、現在、ペプチド原薬の受託合成事業に力を入れ、経営の地盤固めを着実に進めています。本稿では、JITSUBO 代表取締役社長 兼 CTOの金井和昭氏に、同社の強みや今後の展望について詳しくお話を伺いました。

  • JITSUBO 代表取締役社長 兼 CTO 金井 和昭氏

    JITSUBO 代表取締役社長 兼 CTO 金井 和昭氏

安価に高品質なペプチドを合成・開発できるJITSUBO独自の技術

JITSUBOは、東京農工大学の千葉一裕教授の研究室で見出された疎水性ベンジルアルコールの実用化を目指して2005年に設立されました。現在は「患者さんに低価格かつ高品質のペプチド医薬品を提供することで、希望に満ちた笑顔を世界中に増やす」というビジョンのもと、ペプチド原薬の製造受託事業、ペプチド医薬品の研究開発、および知的財産ライセンス事業を中心に展開しています。

金井氏バストアップ

同社の強みとなるのは、「Molecular Hiving(TM)(モレキュラー・ハイビング)」と「Peptune(TM)(ペプチューン)」という2つの技術です。Molecular Hiving(TM)は、千葉教授らが開発した疎水性ベンジルアルコールを活用した技術で、高純度のペプチド原薬を低コストかつ安定的に製造することを可能とします。従来の固相合成法という技術に比べて品質管理が容易であり、反応効率が高いことがメリットです。

一方Peptune(TM)は、ペプチド内に架橋構造を導入することにより、これまでにない立体構造や化学的性質をもつペプチドの構築が可能な技術です。ペプチド医薬品は胃で分解されるため、現状では経口剤ではなく注射剤としての利用が主となっていますが、Peptune(TM)を用いることで胃で分解されにくいペプチド医薬品の創出が期待できるなど、高機能な新規医薬品創出の可能性を秘めているといえます。

金井氏によると、現在は特にMolecular Hiving(TM)の技術改良に力を入れているといいます。「上市された医薬品原薬の製法としては、Molecular Hiving(TM)はまだ実績がない状態ですので、まずはペプチド原薬受託合成サービスを積極的に行うことで実績を上げ、商用医薬品の生産ができるような技術にまで向上させていくことが当面の目標です」(金井氏)

さまざまなシーンで活躍するアジレントのLCシステム

さらなる事業拡大を視野に入れJITSUBOは2017年、アジレントのUHPLCシステム「Agilent 1290 Infinity II」を導入しました。同システムは、最終原薬の純度試験や、中間体の品質確認を行う工程管理、分取精製の条件検討などさまざまなシーンで活躍しています。金井氏は「高耐圧でありながら、カラムの交換が簡単にできるところがいいですね。当社には分析を専門とする研究員もいますが、実際には工程管理試験などで合成を専門とする研究員も分析の作業を行います。Agilent 1290 Infinity IIは、分析を専門としない研究員でも簡単に測定作業ができるので非常に助かっています」と評価しています。

  • JITSUBOが活用しているAgilent 1290 Infinity II

    JITSUBOが活用しているAgilent 1290 Infinity II

また海外を含め技術移管を行う機会が多いJITSUBOにとって、相手先が保有するHPLCのモードで動作させることができる機能「ISET(Intelligent System Emulation Technology)」が搭載されていることも、Agilent 1290 Infinity II導入のポイントだったといいます。「分析法移管の際、相手先がアジレント以外のメーカーのHPLCを使用している場合もあります。ISETを用いることで、他社のLCで開発した分析条件で得られる保持時間および分離パターンを確実に再現できます。複雑な不純物プロファイルを変えずに技術移転が可能になります。当社にとってはとても重要な機能です」(金井氏)

さらに、溶媒やカラムの切り替えを容易に行えるオプション機能や、導入後のサポート体制も充実しています。金井氏は「以前から抱えていた課題を解決できる、いわば"かゆい所に手が届く"製品だと思っています。当社の研究員からも、非常に心強く思っているという声があがっていますね」と満足している様子でした。

  • Agilent 1290 Infinity IIを用いた測定の様子

    Agilent 1290 Infinity IIを用いた測定の様子

ペプチド原薬合成受託を軌道に乗せ、新薬ペプチドの創出を目指す

JITSUBOは今年3月に、インドの製薬会社 Neulandのグループ企業とパートナーシップを構築したと発表しました。この提携の目的について金井氏は次のように説明します。

「ペプチド原薬合成受託の間口を広げたいと考えました。当社の施設には現在、研究開発の機能しかありませんので、今回の提携によって実際の製造機能をNeulandが担う形となります。Neulandは、独自のペプチド精製技術とGMP原薬製造能力を保有しており、我々とちょうど補完関係にある企業といえます。欧米の顧客が多いため、グローバル展開していくうえでも非常に重要です。Neulandと提携することで、GMP対応した原薬を提供する枠組みを構築していきたいと考えています」

ペプチド医薬品は、がん領域から糖尿病などの代謝性疾患、遺伝性・希少疾患など、幅広く多様な領域が対象となり、2025年までに世界市場で年率約8%の高い成長率が見込まれています。こうした状況のなか、高品質で低価格なペプチド医薬品原薬の受託製造の実績を作っていくことが、この先1、2年のJITSUBOの目標です。「我々が売りにしている高品質なペプチド原薬を合成するには、的確な分析条件が必要です。アジレントの製品で品質試験を実施することで、クオリティの高さをアピールしていければと思っています」(金井氏)

こうして経営・技術基盤を確立したうえで、JITSUBOは最終的に新規ペプチド医薬品の創出を目指します。「それが5年先なのか10年先なのかはわかりませんが、将来的には新規ペプチド医薬品の開発でも勝負をしたいと考えています」と金井氏が語るように、将来に向かって大きく羽ばたくため、今はしっかりと足元を固めるフェーズにあるJITSUBO。これからの飛躍が大きく期待されます。

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