私たちは普段の生活において、あまり意識することなく水を使っていますが、水は飲料水や生活用水としてはもちろん、農業や工業分野などにおいても重要な存在です。産業を推進しつつも、環境を保全し、私たちの安全を守りつづけるためには、水の評価・分析は欠かせません。

プラントにおける水処理装置の製造・開発などを手掛ける栗田工業の出資により2003年に設立されたクリタ分析センターは、水質分析、土壌・産廃分析、大気分析や、各種品質試験などを手がける分析専門会社です。環境水分析だけで、月におよそ4,000~5,000検体もの分析を行っています。本稿では、クリタ分析センターで環境水分析を担当する試験一部分析二課の佐藤 佳孝氏に、工場排水や、河川といった環境水の分析の仕方、および大量の検体に対応している方法について、お話をうかがいます。

  • クリタ分析センター試験一部分析二課  佐藤 佳孝氏

    クリタ分析センター試験一部分析二課 佐藤 佳孝氏

環境中にあるさまざまな「水」を分析する

佐藤氏バストアップ

クリタ分析センターでは、各種法令や基準で定められた水に関するほぼすべての分析項目を網羅できるような体制が整っており、佐藤氏が所属する分析2課は、水処理装置の保守点検や導入のためのモニタリング調査をはじめ、工場排水や下水の分析、河川や海域の水質調査、土壌関連の分析などを担当しています。

たとえば、工場排水の定期的なモニタリング調査では、現地で採取された試料が月1回程度クリタ分析センターに送られてきます。何かトラブルがあった場合や新規で工場を立ち上げる際には、さらに採水の頻度が増えたり、分析の至急対応が求められたりすることもあるといいます。こうしてさまざまな企業や施設から送られてくる検体に対して、クリタ分析センターは各種法令や基準に則った分析を行い、計量証明書や試験結果報告書を発行しているのです。現在、分析2課には月に4,000~5,000もの検体が送られてくるような状況で、1日に300〜400の検体を分析することもあるそうです。

新たなICP-OES導入により、検体に含まれる重金属測定のリードタイムが1/3程度に

クリタ分析センターでは、幅広い分野からの依頼やニーズに対応するため、さまざまな分析装置を取り揃えています。なかでも佐藤氏はICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を利用し、試料中に含まれる六価クロムや鉛、カドミウムなど重金属の分析を主に担当しています。六価クロムや鉛、カドミウムなど公害の原因物質となる有害金属は、人の健康の保護に関わる項目として基準が制定されています。佐藤氏は、分析を依頼された試料がこの基準を満たしているかどうか、チェックしているのです。佐藤氏は普段の業務について「依頼された試料に対して、計量証明書を発行するために定められた工程で行う分析はもちろん、試料にどういった金属が含まれているかわからない場合は定性分析で、設定しておいた23項目の金属がそれぞれどれだけ含まれているのかを測定することもあります」と説明します。

現在、分析2課では4台のICP-OESを稼働させ、日々送られてくる数々の検体に対応しています。そのうち1台は、アジレント・テクノロジー(以下、アジレント)が提供する最新機種である5110 ICP-OESです。昨年3月に導入されたこの装置は、高性能なCCDが搭載されていることによる測定スピードの速さが特長です。また、オプション機能であるAVS(アドバンストバルブシステム)を導入したことで、試料の取り込みや洗浄時間の短縮も実現しています。非常に多くの検体を取り扱わなければならない分析2課において、この装置は、導入直後でありながらとても重宝されており、佐藤氏も「洗浄時間、測定時間とも短時間で済むため、とても使い勝手がよい」と高く評価しています。

  • クリタ分析センターは5110 ICP-OESのオプション機能であるAVS(アドバンストバルブシステム)を導入したことで、試料の取り込みや洗浄にかかる時間が大きく短縮されたという
  • クリタ分析センターは5110 ICP-OESのオプション機能であるAVS(アドバンストバルブシステム)を導入したことで、試料の取り込みや洗浄にかかる時間が大きく短縮されたという
  • クリタ分析センターは5110 ICP-OESのオプション機能であるAVS(アドバンストバルブシステム)を導入したことで、試料の取り込みや洗浄にかかる時間が大きく短縮されたという

従来の装置では10 ml以上の試料量が必要とされていた状況だったのに対し、5110 ICP-OESではその半分程度の試料量で測定できるという点も、分析時間の短縮に貢献しています。試料の投入量が少ないほど、装置内の汚染が少なくて済むので、そのぶん洗浄時間の短縮につながり、リードタイムを確保できるためです。佐藤氏によると、1検体あたりの測定時間、および洗浄時間も含めたリードタイムは、それぞれ従来の1/3程度になったとのことです。

  • 佐藤氏が分析の準備を行う様子。5110 ICP-OESでは従来の半分程度の試料量で測定できるようになり、分析にかかるスピードも大きく向上したという

    佐藤氏が分析の準備を行う様子。5110 ICP-OESでは従来の半分程度の試料量で測定できるようになり、分析にかかるスピードも大きく向上したという

生産性向上に貢献する5110 ICP-OES

もともと今回のICP-OES選定にあたっては、生産性向上がいちばんの目的とされました。佐藤氏は、「いかに人手が掛からないよう日々の測定業務を効率化するか検討していくなかで、まずは、夜間業務に着目しました。人手がなくとも夜間に装置が自動で測定してくれるような状況を作っていこうと考えたのです。オート機能のない従来の装置では、人が付きっきりで作業しなければなりませんでしたが、5110 ICP-OESではオート機能が搭載されており、人のいない夜間対応も可能になります」と導入の経緯について説明します。

本来の性能の高さに加え、オート機能による夜間対応が可能になったことで、従来では休日出勤をして対応しなければならなかったようなケースも、導入後は、平日の業務時間内で行えるようになったそうです。生産性を向上し業務の健全化にもつながっているといえるでしょう。さらに、「搭載されているソフトウェアでは、妨害する金属の波長が分かりやすく表示される」と感じており、操作性の面でも生産性向上につながっているようです。

また、導入後には、至急納期対応がしやすくなったという効果もあったそうです。従来の装置では、測定の合間に至急測定したい別の検体を割り込ませる作業が難しかったのですが、5110 ICP-OESは短時間で試料の取り込みや洗浄が可能なため、そうした対応が行えるようになったのです。「これまでは引き受けられなかったような依頼に応えられるようになったという点も、導入の大きなメリットです。ある程度多くの検体がまとまって届いた場合でも対応できるという自信につながっています」(佐藤氏)

新しく装置を導入するにあたっては、業務フローの見直しが発生するため、ICP-OESを利用している職員の抵抗感は多少あったようです。しかし、これだけの効果が現れたことにより、職員の満足度は非常に高いものとなっています。

さらに厳しくなる環境基準に対応していくために

佐藤氏が日々測定しているカドミウムや鉛などの環境基準は、今後さらに厳しくなっていくと推測されています。ICP-OESでは測定できないような濃度が基準となった場合には、質量分析など別の分析手法を検討していかなければならない状況になることも考えられます。こういった課題にも、多様な分析装置を扱っており、なおかつサポート体制が充実しているアジレントの力を借りながら取り組んでいくことで、クリタ分析センターは、今後も分析事業を通じて、日本の産業を支えるとともに、私たちの身のまわりの安全な水環境を守ってくれることでしょう。

  • ICP-OES

[PR]提供: アジレント・テクノロジー