――『龍騎』は劇場版の他に、世界観を1からリセットした独自のストーリーが放送された1時間スペシャル『13RIDERS』など、さまざまな「結末」のバリエーションを出してきた作品として記憶に残っています。『13RIDERS』ではスペシャルだけにしか登場しない仮面ライダーベルデ=高見沢逸郎の存在や、2種類のラストシーン「戦いを続ける」「戦いを止める」のどちらかを、放送中に電話投票(テレゴング)で決定するという試みでも、大いに注目されました。

須賀:電話投票でラストが決まるって、やっていましたね。

松田:今でいうところの「リモコンのdボタンでお選びください」ってやつの先がけ(笑)。

須賀:そういうの、今では当たり前にやっていますけど『龍騎』の放送中はすごく珍しかった。やることが早かったですよね。

松田:『13RIDERS』では蓮が死んで、蓮のカードデッキを受け継いだ真司がナイトに変身する……というストーリーでしょう。これもすごく思い入れが強い作品でした。

――『龍騎』は『クウガ』『アギト』と築いてきた平成ライダーの人気を、いっそう高いものにする役割を見事に果たしました。当時から現在にかけて、作品の人気を改めて実感された出来事などはありますか。

須賀:ファンの人たちの思い入れが、当時から現在まですごく強いというのが驚きですね。僕らも、真司や蓮という役に育てられていたところがありますから、そうやってファンの人が熱心に観てくれているのは、ありがたいです。

松田:作品の持つエネルギーってすごいですね。そんな力は、他の番組ではなかなかないと思います。僕自身、ドラマなどに出演しても、ファンの方が何か意見を伝えてくるとか、そんな風にはならないですから。最終回を迎えて寂しいと言われていても、新しいドラマが始まったらみんなそっちに行っちゃうし(笑)。

須賀:仮面ライダーというか、特撮ヒーロー作品についてくださるファンの方は、やっぱり特別なところがありますね。

松田:特別ですね! たとえば以前「いま仕事で大阪に来ています」とつぶやいたら、新大阪駅にナイトの玩具を持った人がいっぱい待っていたことがありました。

須賀:おお! じゃあみんなの持ち物にサインをしてあげたんだ。

松田:そう。タクシー乗り場の横でみんな待ってくれていたので、ひとつずつサインしました。時間があるときはできるのですが、一回、新幹線に乗り遅れそうなときがあって、そのときも玩具持った人が何人かいたんですけど「すみません!」と謝りながら走り去っていったんです。そうしたら、炎上しました(笑)。

須賀:乗り遅れるわけにはいかないから、それは仕方ないよね。

松田:熊本の「三井グリーンランド」のイベントに出たときも凄かったよね。

須賀:トークショーみたいなの、やったよね~。

松田:バッと2人でステージに上ったら、客席のほうは1万人もの人だかりが出来ていて、今までに見たことのない光景でしたね。そこで、こんな感じで普通の話をしたり、たまにしょうもないことをしゃべって笑かしたりしながらやってたんですけど、何せ1万人ですからね。あれは不思議な感覚でした。

須賀:不思議だったよね。いちばん、当事者たちが意外と冷静に状況を見ているって感じがあった。

松田:ワンボックスの車に乗って帰るとき、窓を開けて(お客さんに)手を振って、と言われたので窓を開けたら、ファンの女性がその窓に飛びついてきた、っていうこともあったよね。

須賀:あれも凄かった。危ないよね(笑)。

松田:そのままズルズル~って車に引っ張られて、警備員さんに捕らえられていたなあ。あのときに「これは凄いことが起きているのではないか」って思いましたから。

――当時の『龍騎』人気の高さは、いわゆる特撮専門誌以外のメディアでも多く取り上げられていて、須賀さん、松田さんのインタビューも各媒体で多く行われていたことでも証明されていますね。『龍騎』の出演者を全員集めた写真集というのも出たりしました。

須賀:写真集、よく覚えていますよ。

松田:うん、あったねえ。

須賀:この盛り上がり方はちょっと尋常じゃないな、という気がしました。やはり、これだけたくさんの人数(のライダー)が出てくることが前代未聞でしたね。

松田:昔の自分が載っている本とか見ると、あのころを思い出しますね。(ムックをめくって)あっ、ナイトサバイブだ。僕、ナイトはカッコいいと思っているんですけれど、ナイトサバイブはちょっとなあって思った。なんか、子どもっぽくなったイメージがあって。

須賀:でも、ファンの人からするとナイトサバイブもカッコいいって言ってるかもしれないよ。

松田:まあ、サバイブが乗るあのバイク(ダークレイダー・バイクモード)はカッコよかった(笑)。

須賀:当時はテレビを観ている子どもたちと一緒に、お母さん方も熱狂している空気が感じられました。とある女性向け雑誌にも取材を受けたことがありましたが、仮面ライダーの俳優たちがアイドル化しているというか、社会現象になっているなというのは、演じながら感じていましたね。

松田:この間、Twitterを見ていて面白かったコメントがあったんです。「仮面ライダーの俳優が魅力的だったから、以前の作品を見てみようかな」という人に対して、ライダーファンの人がアドバイスしてるんです。「『龍騎』は初めて仮面ライダーシリーズを観る人には薦めない」って。一番初めで『龍騎』は重過ぎるから、別の作品から入ったほうがいいって言うわけ(笑)。

須賀:思い入れが強すぎるからかな(笑)。

松田:ファンの方は、仮面ライダー初心者の人に『龍騎』から入れとは言わないんだなあ。すごく面白いと思いました。最初には見ないほうがいいよって。でも、ライダーにハマったら確実に見てほしいんだと。そういうファンの方たちの熱心な思いが、とても興味深かったです。