クラウドは新たなビジネスを展開する際のインフラとして、大きな可能性を秘めているが、既存サービスの品質向上にも有用だ。刻々と変化する市場データ、顧客データをクラウドで共有・連携させることで、ニーズをリアルタイムに捉えた、迅速なサービスを展開できるようになる。新車・中古車の販売や整備を手掛ける神奈川トヨタ自動車が、2018年4月にリニューアルオープンさせた小田原店では、まさにそうした取り組みが行われている。顧客管理システム、車両ナンバー認識システムなどを連携させた「おもてなし支援システム」と「購買意思決定支援システム」を構築・運用し、顧客から高評価を得ているという。

最新技術による「おもてなし」で、来店客のストレスを解消

神奈川トヨタ自動車 常務取締役 営業本部長 大坊 裕氏

4月21日にオープンした神奈川トヨタ自動車・小田原店は、旧来の小田原店に加え、小田原中央店、小田原U-Carセンターの3拠点を統合させた大型店だ。敷地面積は東京ドームの約半分、新車・中古車あわせ最大25台の展示販売を行うほか、ウェルキャブと呼ばれる福祉車両の常設展示も行っている。さらに11台を同時に整備できるサービス工場、120台分の来店者用駐車場、地域住民向けのコミュニケーションスポットなども設えられている。神奈川トヨタ自動車 常務取締役 営業本部長 大坊 裕氏は、新店舗について次のように説明する。

「当社では『お客様のクルマ生活を豊かにする』ことを目指しています。これを実現するためのひとつの手段として、おもてなしに最新技術を採り入れた次世代店舗の構想が生まれました」

神奈川トヨタ自動車 マーケティング開発部 担当室長 中島 智広氏

そこで企画されたのが「おもてなし支援システム」の導入だ。同社マーケティング開発部 担当室長 中島 智広氏は言う。

「お車の整備を予約してご来店されたお客様に、そのことを全く知らないスタッフがお出迎えすれば、お客様に予約時と同じ説明を繰り返していただかなければなりません。また店舗が広いと担当者を探すのにも時間がかかり、その間、お客様をお待たせすることになってしまいます。こうしたお客様のストレスをなくしたかったというのが、企画理由のひとつです」

リアルタイムな情報共有で、来店から退店まで、適切な心配りが可能に

「おもてなし支援システム」は、18.5万件の顧客情報を管理する同社のSalesforceと車両ナンバー認識システムを、テラスカイのクラウド型データ連携基盤DataSpider Cloudで連携させることによって機能している。Salesforceの予約者情報リストをマスタとし、DataSpider Cloud経由で車両ナンバー認識システムがキャッチした来店者の車両ナンバーとマスタデータのナンバーが一致したら、リアルタイムでSalesforceと連携し、画面開発サービスである「SkyVisualEditor」で作成した店舗内の管理画面に顧客名や来店理由などを表示する仕組みだ。それをフロアマネージャーが確認し、インカムでスタッフに告げることで、来店した顧客の情報を現場スタッフがリアルタイムに共有できる。また各スタッフが携帯しているスマートフォンやタブレットでも、同様の情報を確認できるようになっている。

  • 来店や接客の情報が確認できる「おもてなし支援システム」

このシステムによって専任スタッフではなくても、あるいは来店歴が浅い顧客に対しても店舗スタッフは全員が「いらっしゃいませ、○○様」と顧客の名前を呼びかけながら出迎えられるようになった。

「実際に、お名前を呼ばれて出迎えを受けたお客様には大変好評です。また来店理由に応じた適切な対応が、迅速に取れるようになりました。たとえば予約受付の際に、エンジンがかかりづらいということを伺っていたお客様の場合です。車両ナンバーから、ご来店になったのがそのお客様だと認識できたので、エンジンをかけたままの状態でクルマをお預かりしました。もし一般的な手順通り、受付段階でキーを抜いてしまっていたら、そこから工場まで人力で押していかなければならないところでした」(中島氏)

顧客のライフスタイルまで反映させた提案を、迅速に作成

「購買意思決定支援システム」は、神奈川トヨタが2014年にforce.com(現Salesforce Platform)上に構築した「万脳手帳(顧客情報や商品情報等、営業活動に必要な情報を包括的に活用する為の情報支援ツール)」にアドインしたシステムで、下取査定、車検・板金予約管理、新車・中古車見積などの個別システムを連携させたものだ。これまでの付き合いの履歴として「万脳手帳」に蓄積した、顧客の家族構成やクルマ生活の嗜好、保有している車両の使用状況、下取り額などのデータをもとに、顧客が選択可能な3タイプの見積(車検や修理改修・新車購入・中古車購入)を、短時間のうちに作成・提案。顧客の課題解決のリードタイム短縮を可能にしている。

  • 「万脳手帳」に「購買意思決定支援システム」をアドインした構成 ※クリックで拡大

  • 顧客のライフスタイルに応じた案内や提案を可能にする「万脳手帳」画面

さらに見積作成には、高精細で遅延の少ない映像・音声伝達システムも利用されている。板金修理スタッフが遠隔地にいても、車両の状態をつぶさに確認することができるようになり、通常なら工場への車両移動を要するために数日かかっていた修理見積期間が30分程度に短縮されている。

「今後はこのコミュニケーションシステムを利用して、他所にある新車・中古車の在庫をお見せするなど、お客様のクルマ選びの選択肢を広げていく予定です」(中島氏)

  • 音声伝達システムで整備工場と打ち合わせルームを繋いだ接客イメージ ※クリックで拡大

DataSpider Cloudの高い開発効率と拡張性を活かし、全店展開も視野に

これらシステム連携の構成提案やその具体的な開発には、テラスカイがあたった。

「『おもてなし支援システム』は、テスト運用の開始まで実質4ヶ月ほどしかありませんでしたが、開発効率が高いテラスカイのDataSpider CloudとSkyVisualEditorを採用することで、この短期開発を実現させることができました」(中島氏)

DataSpider Cloudはアイコンを配置していけばデータ連携が行えるため、複雑なスクリプトをひとつひとつ書く必要がなく、短期開発にはメリットが大きい。またビジネス環境に変化があって改修が必要になった際にも、素早く対応できる。連携用のアダプタも多数用意されており、大手パブリッククラウド間やDB間の連携はもちろん、今回、Salesforceとナンバー認識システムの連携に使われたようなファイル連携機能も簡単に実装でき、用途の拡張性が高いことも特長だ。

神奈川トヨタ自動車 渉外広報部 部長/広報室 室長 黒澤 宏康氏

また、SkyVisualEditorは使い勝手のよい入力画面や閲覧画面を、コーディングせずに開発できる。このような開発生産性の高いクラウドサービスの活用によって、短期間での実装を実現した。

「リニューアルオープン後、小田原店にご来店いただくお客様は約200組にも上ります」(同社 渉外広報部 部長/広報室 室長 黒澤 宏康氏)とのことだが、「おもてなし支援システム」「購買意思決定支援システム」の活用で、スムースな接客・営業が実現できているという。

最後に今後の展開について、大坊、中島両氏に聞いた。

「現在、小田原店と淵野辺店で使用している両システムですが、将来的には当社の全店へ導入を進めたいと思っています。クラウドでデータ連携ができるDataSpider Cloudを利用すれば、それも簡単でしょう」(中島氏)

「最新技術を活用したおもてなしを通して、今後も地域に寄り添い、愛される店を目指してまいります」(大坊氏)

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