IoT化の動きが進む中、工場やビルなどで様々な機器のデータをリアルタイムに収集したいというニーズが高まっている。各機器に接続したセンサーや製造設備のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)から、設備の稼働データや温度/湿度といった情報を取り出し、サーバーなどに集めることで、生産性向上や改善、業務効率化につなげたいという発想だ。

とはいえ、データ収集のために新たな有線ネットワークを整備するのは手間もコストもかかってしまう。そこで注目されるのが、新たな無線通信技術と規格を採用した無線センサーネットワークだ。

長距離で安定した無線システムと導入の容易さが求められる

IoT化の実現に向け、すでに多数の機器や設備が稼働している現場にデータ収集のためのネットワークを有線で張り巡らせるには、機器が設置されている全ての場所へ配線工事が必要となる。当然、相応の時間とコストもかかってくるだろう。大規模な事業所の場合は敷地が広く、何棟もの工場で生産活動を行っており、道路を挟んで複数の建屋が設置されているケースもあるため、そもそも有線の配線自体が難しい場合もある。また、工場では生産計画に合わせたレイアウト変更が度々発生し、有線の配線だとレイアウト変更の度にコストがかかってしまう。

そこで無線の出番となるわけだが、大規模工場では電波を長距離飛ばさなければならないため、一筋縄にはいかない。免許不要な特定小電力無線の周波数として従来使われてきた2.4GHz帯や429MHz帯は、電波が届く距離に限界があったり、壁などの遮蔽物を挟むと電波自体が届かないケースも見られ、通信の安定性の面でも課題があった。タブレット機器などを活用するためすでに稼働している2.4GHz帯の無線システムがあれば、電波の干渉や混線の恐れもある。

大きなビルなどの建物も同様で、フロアをまたがった無線通信は従来規格では難しい。また、電気系やポンプといったビル管理設備は地下に設置されることが多いが、地下は携帯電話の電波が届かないことが多く、データ収集にハードルがあった。

このようなシーンにおいてデータ収集によるIoT化という課題を解決するための無線システムには、何が求められているのか。ひとつには、上に挙げたようにやはり距離である。長い距離で安定してデータを届けることができ、かつ壁などの遮蔽物やフロアの違いがあっても有効に機能する周波数及び無線技術が必要になる。そしてもうひとつは、導入の容易さだ。

まず1点目のニーズを解決するのが、マルチホップネットワークと920MHzという周波数帯だ。マルチホップは複数の無線機を中継することで長い距離を、しかも高い通信品質を保ちながらデータ伝送できる仕組みである。途中に障害物があり、無線が届かない場合でも、通信を行える場所に無線機を増設することで、障害物を迂回し、長距離のデータ伝送が可能になる。

一方の920MHz帯は免許不要の周波数として2012年に開放されたものだが、従来の2.4GHz帯よりも電波が回り込んで届く特性が高く、長い距離を安定的に通信できる特徴を持っている。マルチホップと920MHz帯の出会いによって、工場、ビルといった広いエリアでのセンサーネットワーク構築によるIoT化がより実現しやすくなった。

つながりやすい920MHz帯
※「見通し1km」はスリーブアンテナ利用時の例


そして2点目を解決する要素が、様々なベンダーの機器で利用できる汎用性と導入の手軽さ、コストの低さだ。工場には複数ベンダーの生産設備やセンサー機器が導入されているのが一般的。ベンダーの違いを意識せず後付けで手軽に配置でき、導入コストも低い無線システムが求められる。

マルチベンダー環境を実現する「SmartHop」

沖電気工業の「SmartHop」は、マルチホップと920MHz帯という要素を兼ね備えたソリューションだ。無線ユニットと組み込み型の無線モジュールをラインナップしており、無線モジュールは多数のベンダーのセンサーや設備監視機器、IoTゲートウェイなどにも採用されてる。

MHシリーズ 920MHz帯マルチホップ無線ユニット

MHシリーズ 920MHz帯無線通信モジュール

SRシリーズ 電池駆動対応920MHz無線モジュール

このSmartHopは親機と子機で構成される。導入イメージとしては、センサーなどの各種機器をSmartHopの子機にシリアル(RS-485またはRS-232C)接続。各子機から920MHz帯無線で送信されたセンサーデータは、複数の子機(中継機)をマルチホップで中継して親機に届けられる。そうして集められたセンサーデータは親機に接続したデータ収集装置やゲートウェイに蓄積され、見える化サーバーなどでデータを可視化する形だ。

各ベンダーの製品との組み合わせで利用できる「MHシリーズ」と電池駆動対応の「SRシリーズ」に分けられ、MHシリーズは無線ユニットタイプと機器に内蔵する無線モジュールの2タイプをラインアップ、SRシリーズは無線モジュールのみを用意している。

ユニットタイプのMHシリーズは工場やビルなどに後付けで簡単に導入することが可能。無線モジュールタイプは既存機器や各ベンダーの製品に内蔵して使用される。すでに無線モジュールタイプは国内ベンダーの70種類の製品に搭載されており、複数ベンダー製品が混在する現場でも同一の無線ネットワークに接続して利用できるマルチベンダー環境を実現してくれる。

マルチホップについては、MHシリーズは最大16段、SRシリーズは最大30段の中継が可能。SmartHopが使用する920MHz帯は見通し距離1kmで規格上100kbpsの速度による通信を実現し、遮蔽物に強いという特徴とも相まって、建屋間に距離のある大規模な工場やビル内の複数フロアをまたぐ環境でも円滑な無線通信が行える。また、電池駆動のSRシリーズは電源のない屋外や、工場などの建屋内でも電源を取りづらいところで有効に活用できる。

沖電気工業 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部 スマートコミュニケーションシステム部 SC第1チーム担当課長 島田貴光氏

沖電気工業 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部 スマートコミュニケーションシステム部 SC第1チーム 担当課長の島田貴光氏は、すでに導入実績のある事例も含め、SmartHopの活用シーンをこう解説する。

「MHシリーズは工場、ビルをはじめ、メガソーラーや病院、農業のビニールハウスなどですでに多数の導入事例があります。一方のSRシリーズは屋外にある社会インフラを主なターゲットとしており、橋や鉄塔の老朽監視、土砂崩れの監視などで実証実験が進んでいます。各ベンダー製品への展開も積極的に進め、今年度中に100製品での搭載を目標としています」


沖電気工業 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部 スマートコミュニケーションシステム部 部長 山本高広氏

また、同部の山本高広部長は、SmartHopの今後の展開について次のように語った。

「海外に拠点を持つ日系企業が増える中、日本で導入しているシステムを海外でもそのまま使いたいという声が多いため、今後は海外展開も積極的に図っていきます。まずは2017年、米国連邦通信委員会規格(米国FCC規格)に対応したモジュールの販売を開始しました。今年度以降、アジア各国の対応版もリリースしていく予定です」

SmartHopは各社のIoTクラウドサービスと連携した活用も進んでいる。無線であるため既存設備のレイアウト変更は基本的に不要で、有線の設置と比べてコストも圧倒的に低く済む。運用開始後に機器を追加したいときは、手軽に拡張できるのも利点だ。注目のIoTソリューションとして、SmartHopの可能性は今後も広がり続ける。

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[PR]提供:沖電気工業