今年でデビューから20年を迎えた、日本を代表する漫画家・浅野いにお氏。デジタルツールを駆使した作品制作を行うことで知られており、クリエイター向けPC「DAIV」を愛用している。

そこで今回は、現在連載中の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を軸に、浅野氏の漫画制作におけるこだわりをインタビュー。また、「デジタル」という側面にフォーカスし、制作の裏側など様々なお話を伺った。

  • 浅野いにお氏

    浅野いにお氏

浅野いにお(あさの・いにお)
1980年生まれ、茨城県出身。2002年『素晴らしい世界』(月刊サンデーGX/小学館)で連載デビュー、2005年に連載を開始し、若者の青春の葛藤を描いた『ソラニン』(週刊ヤングサンデー、小学館)は実写映画化もされる大ヒット作に。
その後も『おやすみプンプン』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)などのヒット作を発表し、『情熱大陸』(TBS系)でも取り上げられるなど、若者を中心にカリスマ的な人気を博す。
現在は『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)を連載中。

可愛い女の子を描く漫画家ではないです(笑)

――まずは現在連載中の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(通称・『デデデデ』)について、この長いタイトルの由来はいったい……?

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

『デデデデ』が連載を開始した4~5年前は、検索のしやすさを重視するとか、短いタイトルで覚えてもらいやすくする、みたいなブームがあって。あえて僕はその真逆にいってみたかったんです。 なので、最初はタイトルの意味というよりも、「いかに長いタイトルがつけられるか」ということに重点を置きましたね。しょうもない話なんですけど(笑)。

そしたら本当に検索に引っかからなくなっちゃって(笑)。読者もどう略したらいいのかわからない雰囲気だったので、結局自分から「略称は『デデデデ』で」と提案しましたね。

――キャラクターについても伺っていきたいと思います。
『ソラニン』の芽衣子、『おやすみプンプン』の愛子や南条は、いわゆる「美人」や「かわいい」キャラクターでした。対象的に、今回の『デデデデ』はどの子も個性的というか……正直に言って、微妙なラインの顔立ち(汗)なのは理由があるのでしょうか?

  • 井上 芽衣子 『ソラニン』(C)浅野いにお/小学館

    井上 芽衣子 『ソラニン』(C)浅野いにお/小学館

  • 田中 愛子 『おやすみプンプン』(C)浅野いにお/小学館

    田中 愛子 『おやすみプンプン』(C)浅野いにお/小学館

そもそも僕自身、整い過ぎている顔が好きではないというか、あまり可愛い女の子を描く漫画家ではないというか(笑)。変な言い方ですが、どこか足りていない人の方が、”自分が入り込む余地があるのでは”と思うんです。
なので、自分のキャラクターはたしかに個性的な仕上がりの子が多いですが、愛着や好感というのはそういうところから生まれてくるのかなと感じています。

『デデデデ』に関しては、登場するキャラクターも多く、みんな同じ「可愛い感じの子」だともう区別がつかなくなっちゃうんですよね。なので、「特徴のある顔にする」というのも大事なポイントでした。

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

僕は周りから「リアルな感じを描く作家」と捉えられていたので、揺り戻しをしたいとも思っていて。『デデデデ』では、あえて昔の漫画のようにキャラクターをデフォルメして、そのぶん周りの背景をリアルに見せる、という表現に挑戦しています。

このバランスはもしかしたらハマらないかな、と懸念していたのですが、意外とキャラクターが背景からぐっと浮き出て目立つので、それも良いかなと思っています。

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

――顔立ちもそうですが、門出(かどで)という名前も独特ですよね。

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

名前をつけるのがキライなんですよ(笑)。これまでは「山田」とか「田中」とか、苗字・名前ランキングの上から選んで名付けていったんですが、いよいよそれも使い切ったなあと。そこで、今回の門出に対しては、作品タイトルからのアナグラムを採用しました。

――アナグラムだったのですか!? 全然気が付かなかったです……。

『デデデデ』では、実は色々なところにアナグラムが組み込まれています。そんな部分も楽しんでもらえたら。

――『デデデデ』を読んでいると、キャラクターの誰にも感情移入させないような側面を感じます。

そうですね。僕の漫画は”わかる人にだけわかってもらえればいい”みたいなところもあって。
『デデデデ』の主人公は、”門出”と”おんたん”という2人の女の子です。ただ、実は一人ひとりの感情がどうこう、というよりも、もっと引いた視点での物語にしたくて。あくまで主人公も、”その環境のなかにいる1人”という距離感で描いていきたいなと思っています。
なので、描き方のバランスとしては、”個”よりも”全体”にフォーカスしていますね。

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館