全世界を熱狂させたテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』。制作を手掛けたHBOによる、次なる超大作ドラマ - それが『ウエストワールド』

  • 『ウエストワールド』

人間の欲望を実現させる体験型アトラクション「ウエストワールド」で、精巧なAI技術によって作られたアンドロイド(通称・ホスト)が、来場者である人間たち(通称・ゲスト)をもてなす。プログラムにより、絶対に人を傷つけることのないはずのアンドロイドだったが――。アトラクション内で巻き起こる"アンドロイドの自我の目覚め"を描いていく物語である。

  • 『ウエストワールド』より

AIが人間と遜色なく存在するなんてことは、現実世界でも起こりうるのか。

そこで、今回はゲームAI開発会社「モリカトロン」の代表取締役で、ゲームAI界の第一人者である森川幸人さんに、最新のAI技術について解説してもらった。

また、海外ドラマ好きとして知られるタレント・ファッションモデルの大石絵理さんとの対談より、海外ドラマ『ウエストワールド』の魅力をお届けする。

  • (左)大石絵理さん (右)森川幸人さん

人間はAIに支配される!?

――森川さんは、ゲーム上でAI(人工知能)を活用する研究開発をされています。現在、AIではどのようなことができるのですか?

森川さん 将棋や囲碁ではAIがプロに勝ちました。医療の現場では、AIがレントゲンを分析して病巣を見つけますし、薬の処方においてもアドバイスできるようになっています。その他にも自動運転など、広範囲でAIが活用されていますね。

  • 森川幸人さん

大石さん えーすごい! 私は自動運転とか、本当にすごいことだなと感じていて。あと何十年か経つと、AIが人間を超えるなんて話も聞きました。そうなったら、人間がAIに支配されちゃうんですかね……ちょっと怖い気がします。

  • 大石絵理さん

――人間の知能を超えていくとなると、脅威に感じますよね。逆に、AIにはできないことはありますか?

森川さん 知能を大雑把に分けると、“知性”と”感性"。知性は正解がはっきりしているようなものです。それに対して感性は、詩をつくったり、音楽をつくったり、絵を描いたりする部分で、AIはそこが弱いんですよ。人間と会話や雑談をするには、知性だけでなく感性も必要になるので、まだ上手くいってはいません。

  • 『ウエストワールド』より

――『ウエストワールド』の世界では、人間とAIが冗談を言い合うなど会話でやり取りをしています。現実的にはまだ難しいのですね。

森川さん 最近ではスマートスピーカーなども発売され、声でのやり取りが可能になっています。たとえば「いま何時?」といったように、テーマを絞った問いかけには答えられるんです。しかし、雑談は難しいですね。「囲碁や将棋で勝てるなら、雑談くらいできるだろう」なんて思いがちですが(笑)。

――AI技術が発達し、感性も獲得していったとすると、人間はAIとどう向き合っていくべきでしょうか?

森川さん おそらく、人間は「自分たちに並ぶ存在」に初めて対面するのではないでしょうか。潜在的な恐怖心は必ずあるでしょうね。ただ、”大丈夫だろう”というのが大方の見解です。

――その”大丈夫”というのは、”AIが人間に反抗することはない”ということでしょうか?

森川さん AIは、自主的に何かをすることができない構造になっているんですよ。それは、「なぜ人間に探求心や好奇心があるのか」というのを、人間自身も解明できていないためです。なので、AIに組み込みようがない。ただ、AIを使う人間側に悪い意図があれば……そこは、包丁と一緒ですね。

AIが体重を管理する時代に!?

大石さん そもそも、AIっていつからあるんですか? 気がついたら、すでに身近にある感じでした。

森川さん 1956年に行われた研究発表会「ダートマス会議」で初めて人工知能という言葉が使われたため、AIの誕生年とすることが多いですね。

大石さん そんなに前からあるんだ……ここ2~3年くらいの感覚じゃないですか?」

森川さん 実は、AIブームは現在で3回目くらいなんです。1回目・2回目は研究者の間で起こりましたが、一般の人にまで広まってきたのはここ数年のこと。それは、Googleの参入が大きいと思いますね。

森川さん IoT(Internet of Things) - 様々なモノはインターネットを通じて、相互に情報交換をして制御することができる - という仕組みがあります。近年、AIoTという一歩進んだ考え方も生まれており、今後は全てのものがAIに繋がっていくとされているんですよ。

――「いろいろなものがAIに繋がる」とは、具体的には?

  • 『ウエストワールド』より

森川さん たとえば、枕にAIが入っている。「今日はあまり寝返りを打たないから、疲れているのでは?」と判断して、冷蔵庫のAIに相談。すると、冷蔵庫のAIが疲労回復レシピを作成して、レンジのAIに準備しておくように伝える、といった感じですかね。人工知能同士がコミュニケーションを取るようになるんです。

大石さん そうなったら、AIに体重を管理してほしい! お風呂から上がって鏡の前に立ったら、ピピピ……って分析してくれて、昨日より〇kg増えてますよ~みたいな(笑)。

森川さん 大石さんは勘がいいですね。鏡は、その人の体調を分析するには非常に重要になりますし、顔認識はAIの中でも特に進んでいる分野なので。すでに体脂肪などのデータは体重計で取れていますし、AIの対応は早いと思います。

大石さん でも、そこまでチェックされたらウソとかもバレちゃいそう(笑)。

森川さん (笑)。人間がウソをつくときは、声がうわずるとか、視線を外すとか一定のクセがあるので、AIは見抜けるかもしれませんね。

大石さん あとは、株とか仮想通貨とかをやってもらいたいです。仕事に行っている間に、AIが取引して「今日めっちゃ儲かったよ!」みたいな(笑)。

森川さん 株取引では、すでにAIに対して制限が設けられているんです。人間だと”購入”のボタンを押すだけでも1秒程度かかりますが、AIであればその間にすさまじい量の取引を行えてしまいますからね。

大石さん そうなんですね……それができたら最高なのにな。でも、そのAIを手に入れるのにめっちゃお金がかかりそうですね(笑)。