21万5000kWという大きな出力の御母衣発電所。発電所で働く人々の仕事とはどのようなものなのか。J-POWERのグループ会社であるJPハイテック御母衣事業所の方々に、実際に話を伺ってみた。

ほかの仕事では得られないやりがいとは

――御母衣発電所ではどのような仕事をされているのですか?

杉本氏:「一般的な言い方をすると発電所の保守業務ですね。それに加えて更新工事や緊急時の障害対応もあります。また、御母衣電力所では、御母衣ダム・発電所はもちろん、近隣にある大白川ダム・御母衣第二発電所、大黒谷ダム・尾上郷発電所などもあり、同じように見守り続けています」

――若い人たちにとって、この仕事のやりがいとはどういったところにありますか?

鶴巻氏:「まだこちらに配属になって間もないのですが、巡視点検や資料作成を担当しています。更新工事では古くなった設備を新しい設備に取り換えていくのですが、計画は1年以上も前から取り掛かることもあります。長い期間をかけて準備をして、工事が終わり、無事に稼働したことが確認できたときはとてもうれしいですね」

岩男氏:「20年、30年前に先輩方が手掛けた更新工事の記録が共有されているので、当時の資料を見るのも興味深いです。当時の技術を最大限に活かして綿密な計画を立てていたことが分かるので、とても参考になりますね。自分の世代でも負けないように後世に自慢できる設備を作りたいと強く思います」

  • 左からJPハイテック御母衣事業所鶴巻颯氏、岩男吉晴氏、杉本吉史所長代理。ベテランは若手の成長を見守り、若手はノウハウをしっかり受け継いでゆく

――例えばどのような工事をされましたか?

岩男氏:「2017年9月に実施した大白川ダムの『予備ディーゼル発電機更新工事』が思い出深いですね。大白川ダムはアクセスが難しい場所にあるのが難点なのですが、加えて工事を行った年は台風の当たり年で、運が悪いことに工事の最終日も大雨に見舞われました。

機器を設置し終える頃には雨脚が強くなり、雨量規制で道路の通行ができなくなる直前でした。現場ではいつ通行止めになるのかを気にしながら、時間との戦いでもありましたね。結果的に工事は成功したのですが、ヒヤヒヤしました」

――厳しい条件の中でも仕事は続けないといけないのですね。

杉本氏:「大切な電気をつくるための仕事ですから、悪条件でも定期点検などは必ずやらなければなりません。ですが、そこは安全確保を第一にやっています。万が一、現地に残ることになっても食料を備蓄しておくなど、不測の事態にも十分備えています。実際に大白川ダムのようにアクセスが限られ、冬季はヘリコプターでないと行けない場所も多いので、各所で万全の体制を敷いています」

  • 冬季には1m近い積雪があるが、最低でも月2回の点検は必須となる。定期的な雪かきも大切な仕事となる

最優先すべきは安全

――今後の目標などをお聞かせください。

鶴巻氏:「今後、水力発電はますますその価値が見直され、需要が高まってくることが予想されます。それに対応できるよう、十分に仕事をこなしていけるようにがんばっていきたいですね」

岩男氏:「大きな工事を担当しても慌てたりしないように、しっかり計画作りをしていきたいですね。先輩たちのノウハウも情報共有されているので、その知識も借りながら、万全の体制で仕事を進めていきたいです」

杉本氏:「安全を最優先に、しっかり設備をメンテナンスしていくと同時に、トラブルが起こっても迅速に対応できる体制を保ち続けたいですね。また、業務効率化も進めていき、各工程や手順においても最善の方法を模索していきたいです」

――ありがとうございました。

現場で働く社員や監督する社員も、実際の作業では一丸となって課題に取り組んでいることがよくわかるインタビューだった。御母衣発電所で働く人々の手によって、多くの人々の暮らしが支えられているのだ

  • 事務所から発電所へ移動するためのインクライン

  • 御母衣発電所の地下約200mに設置されている発電機。発電機2基によって電気を生み出している

  • 施設の計器類を巡視点検する。早期発見がトラブルを未然に防ぐカギとなるだけに、担当者たちの視線は真剣そのもの

  • リラックスした雰囲気の中で仲間との食事。緊張感のある仕事中とは違うゆったりとした時間が流れる