2017年の6月に公表された「未来投資戦略2017」では、キャッシュレス決済比率の10年間での倍増が盛り込まれました。また改正割賦販売法が今年の6月に施行されることになり、クレジット業界には、さらなる安全・安心なクレジットカード取引環境の整備が求められています。このような状況の中、今後のクレジット業界の展望などについて経済産業省商務・サービス審議官の藤木俊光氏にお話を伺いました。

  • 日本クレジット協会

    経済産業省 商務・サービス審議官・藤木 俊光、キャスター・小林 史子

藤木 俊光(ふじき・としみつ)
昭和63年 4月 通商産業省入省(中小企業庁長官官房総務課)
平成17年 5月 富山県商工労働部長
平成19年 4月 富山県知事政策室室長
平成20年 4月 中小企業庁長官官房政策企画官
平成20年 7月 中小企業庁事業環境部金融課長
平成21年 9月 大臣秘書官事務取扱 平成22年 9月 製造産業局産業機械課長
平成24年 7月 経済産業政策局企業行動課長
平成25年 6月 経済産業政策局経済産業政策課長
平成26年 6月 大臣官房総務課長
平成27年 7月 資源エネルギー庁
省エネルギー・新エネルギー部長
平成29年 7月 商務・サービスグループ
商務・サービス審議官(現職)

小林 史子(こばやし・ふみこ) 昭和60年3月3日生
神奈川県出身。中央大学文学部卒業。石川テレビ株式会社入社。制作部アナウンサーを経た後、株式会社テレビ山梨に入社。報道制作局アナウンス部で数々の番組のキャスターやリポーターを担当。その後フリーアナウンサーとなる。テレビ朝日『スーパーJチャンネル』リポーター、J:com『テレビ広報ちょうふ』キャスター、テレビ埼玉『ビッグスギステップアップゴルフ』等に出演。その他、FMラジオやイベントの司会等で活躍中。

『未来投資戦略2017』等を踏まえて

小林:最近、決済のキャッシュレス化が進んでいます。クレジットカードなどのキャッシュレス化の推進によって今後どのようになっていくのでしょうか。

藤木:クレジットカードをはじめとしたキャッシュレス決済が広がることによって、まず使う人にとっての便利さ、利便性が上がります。特に最近日本でも外国人の旅行者が増えていますが、彼らにしても、買物のためにいちいち両替しなくていい、日本の小銭を持たなくてもいいという利点があります。これは日本人が海外に行っても同じことです。また事業者もレジで現金を管理するというのはかなり事務コストがかかり、レジ作業をなるべく効率化していくという意味でも大変意味があるものと思います。さらに現金と違い、誰がどこで、どういう買い物をしたかという履歴が電子データで残っていくということで、そのデータを利用したいろいろなサービスを展開するきっかけになる。これらがキャッシュレス化の推進による効果であると思います。

小林:昨年6月に閣議決定した「未来投資戦略2017」にもキャッシュレス化の推進が盛り込まれているとのことですが。

藤木:日本のキャッシュレス決済の比率は残念ながら20%くらいで、これを10年間で倍の40%まで持っていくというようなことが決められております。足元の話としては、2020年のオリンピック、パラリンピックでは、外国のお客様がたくさんいらっしゃる。外国人の方が立ち寄られる主要な施設については、基本的に決済をIC化していくというような方向性が決められておりまして、この目標に向かってしっかりやっていかなければいけないと思っております。

  • 日本クレジット協会

小林:海外ではキャッシュレス決済が進んでいるのですか。

藤木:ヨーロッパ諸国では、かなりのペースで進んでいます。アメリカはやや遅れていたのですが、ここに来て急速に進んでいます。日本は諸外国に比べて治安が良く、逆に安全であるが故に現金を持ち歩く社会なのですが、いろいろな情報技術の進歩の中でキャッシュレス化を進めていくことにメリットが出てきたのかなと思っています。

小林:あらためて最近の国内のキャッシュレス取引の現状については、どのようにご覧になっていますか。

藤木:いろいろなものが登場してきていると思っています。すでに電車に乗るのにICカード(電子マネー)で乗るというのは、極めて自然になっています。また、それらの電子マネーに、クレジット機能をセットしたカードも発行されています。もちろんクレジットカードが主流ではありますが、プリペイド、あるいはデビット機能を持ったカード、さらに最近出てきているスマホを使って決済するというお財布アプリのようなものを含めて、多様なメニューが登場し、それを使う消費者もそういうものにだんだん慣れてきたのかなという感じがありますね。

小林:私自身もコンビニエンスストアで現金を出さないことが増えた気がします。

藤木:そうだと思います。使ってみると便利だし、買物の記録も残ります。現金にはない魅力があると思っております。

小林:経済産業省としてキャッシュレス化の推進に向けてどのような取り組みをされていますか。

藤木:キャッシュレス決済の比率を10年間で4割にしていくという目標がありますが、キャッシュレス化を推進していく中で、消費者にとって何が便利になるのだろう。あるいは事業者としてどういう商品を提案していったらいいのだろう。そのようなビジョンを描き、それに向けてみんなで努力していくということが大切だと思っています。「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」という会議で、世界的な動向を踏まえ、消費者、事業者双方にとって望ましいキャッシュレスのあり方について議論を進めていきます。総合的に議論してしっかりとした未来像をお示ししたいと考えています。

小林:キャッシュレス化の比率40%というのは達成できそうですか。

藤木:私個人の希望とすれば、4割を越えてどんどん進めばいいと思いますし、最近の技術の進歩を見ても、あるきっかけが得られればそんなに難しい目標ではなくて、さらにその先が望めるのではないかと思いますね。