2016年に仮想化基盤を導入し、個人・法人向けFXシステムについて物理サーバの仮想化への移行を行った、セントラル短資FX。同社は導入後に、アップグレードに要する時間の長さやトラブルシューティングの難しさといった課題に直面したという。こうした課題を解決するために同社が選んだのが、Datrium DVXである。導入前の様子と、選定時のポイントおよび導入後の効果について伺った模様を紹介する。

導入前の課題 導入のメリット
全てのホストをアップグレードするために、丸1日費やすことが度々あった メンテナンスの際、パッチ適用やアップグレードを簡単にできるようになった
不具合が発生した場合に何が原因かの特定が行いづらくなっていた 障害特定・切り分けが迅速化された
特定の仮想マシンに負荷が掛かっていたとしても、どこにどんな影響が出ているかを把握することが難しかった キャッシュ、インライン圧縮、重複排除などの技術により、システムのパフォーマンスが向上した

導入の背景

FXサービスの本番環境を仮想化基盤へ移行

インターネットを活用した外国為替証拠金取引(FX)サービスを展開するセントラル短資FX。資金・為替の銀行間取引で100年以上の歴史を持つセントラル短資グループの一員として、個人投資家や法人顧客向けに質の高いFXサービスを提供している。

FXサービスを提供するために同社は大きくふたつのシステムを自社で構築・運用している。ひとつは、個人投資家や法人顧客が利用するFX取引のシステムで、口座数は16万8,074件、預り証拠金総額は約619億円(いずれも2017年9月現在)に達する。もうひとつは、カウンターパーティー(大手銀行や証券会社など金融機関)との接続用システムで、金融機関が作成するレートからハウスレートを作成して顧客に提示し、顧客の取引リスクをカバーしている。

これらはいずれもビジネスと一体となったミッションクリティカルなシステムだ。取引時間中の障害や停止は許されず、安定動作することが絶対条件となる。また、I/O要求も高く、特にカウンターパーティー向けシステムでは、1秒の間に1,000件を超えるトランザクションが発生するほどだ。同社 インフラ運営部 次長の清水 純氏は、システムに求められる要件と現在の取り組みについてこう話す。

「高い要求に応えるために、これまで15年近くオンプレミス環境のベアメタルサーバで構築、運用してきました。ただ、事業が拡大しシステムの入れ替えスパンが速くなる中で、よりスピーディーにシステムを改善していく必要が出てきました。そこで取り組んだのがシステムの仮想化です。サーバの調達やシステムの改修を速めることで、事業ニーズに素早く応えようとしました」(清水氏)

インフラ運営部 次長 清水 純氏

導入の経緯と選定理由

規模拡大でハイパーコンバージドの魅力が低下

2016年に仮想化基盤としてHCIを導入し、まず、個人・法人向けFXシステムについて、物理サーバの仮想化への移行を開始した。ストレージ環境にはサーバ内蔵ディスクをプール化して共有ストレージとして利用できるSDS(Software Defined Storage)を採用。ただ、いざ運用を開始してみると、様々な課題に直面することになったという。

まず、アップグレードに関する問題があった。採用したSDSはハイパーバイザーと一体化しているため、アップグレード作業は双方を更新する必要がある。ホストは当時8台構成だったが、ホスト1台をメンテナンスモードで停止してからサーバが再稼働するまでに2〜3時間掛かった。

「全てのホストをアップグレードすることに丸1日費やすことがほとんどでした。ホストや仮想マシンへのセキュリティパッチ適用なども大きな負担で、システム更新に伴うメンテナンス作業で毎週土日がつぶれてしまっていました。これからホストの数が増えていくと、事業にも影響が出かねない状況だったのです」(清水氏)

トラブルシューティングの難しさにも懸念があった。比較的小さな環境なら全く問題ないが、ホストの台数が増えていくと、不具合が発生した場合に何が原因かの特定が難しくなる。データを格納する場所もサーバの中にあるので、データだけ切り離して事業を継続するにはシステム的な工夫が必要だった。

そのほか、パフォーマンスや安定性の面でも将来への不安を抱えていた。内蔵ディスクとしてフラッシュを搭載していたが、スケールアウトとともにパフォーマンスが向上するわけではない。また、特定の仮想マシンに負荷が掛かっていたとしても、どこにどんな影響が出ているかを把握することが難しかった。

HCIはシンプルに管理できることが特長的だが、規模が大きくなるとその魅力が減少してしまう。そこで、こうした課題を解消する製品として採用したのが、ノックスが提供するコンバージェンスプラットフォーム「Datrium DVX」だった。

導入の効果とメリット

高いパフォーマンスと管理性を両立させるアーキテクチャー

Datrium DVXは、米Datrium社が2016年から提供している次世代型ハイパーコンバージドインフラを構成するためのストレージソフトウェアだ。清水氏は、Datrium DVXの特長を「内蔵SSDを有効活用してパフォーマンスを上げながら、管理をシンプルにすることができるソフトウェアです」と説明する。

Datrium DVXは、追加モジュール(VIB)としてインストールするソフトウェアだ。Datrium DVXを組み込んだホストでは、内蔵ディスクへのリード/ライト処理がDatriumドライバにオフロードされ、キャッシュ、インライン圧縮、重複排除などの技術を使ってシステムのパフォーマンスを向上させることが可能。また、データ永続保管のために外部ストレージを活用し、データ管理の効率を高められる。

ノックスからDatriumを紹介された清水氏は、米国での製品出荷前から製品評価に参加、そのメリットを確認してきた。清水氏は、Datriumの優れた点として、まず開発コンセプトの良さを挙げる。

「サーバの内蔵SSDだけで、ハイエンドのオールフラッシュ製品のようなパフォーマンスを出すことができます。『データが内蔵SSDにだけ格納される』『トラブルシューティングが難しい』という課題も、永続化のためだけに利用される外部ストレージで解消しています。非常にすっきりしたコンセプトを持った製品だと感じています」(清水氏)

また、既存の設計情報や構成情報をそのまま活用できる点もメリットだ。清水氏はDatriumを導入する際、既存の8台のホストとほとんど同じ構成でもう8台を追加した。一方はこれまで通りHCIで管理し、新規に追加した8台はDatriumで管理するという構成だ。

  • セントラル短資FXのシステム構成 ※クリックで拡大

「新しい管理体系が追加されるわけではないので、これまで通りの運用手順を守ることができます。メンテナンスの際も、HCIでは難しかったパッチ適用やアップグレードを簡単にできるように設計されています。作業工数は劇的に改善し、日常業務のなかでこなせるようになったことで、土日の作業もほとんどなくなりました」(清水氏)

清水氏は、運用管理面での導入効果として「障害特定・切り分けの迅速化」「メンテナンス作業の効率化」「仮想統合によるコスト削減」などを挙げる。また、ビジネス面からも「サーバ調達が速くなった」「開発のニーズに応えやすくなった」と強調する。

現在は、計16台のホスト上で個人・法人向けサービスが提供されている。これまでトラブルなく安定稼働を続けており、ノードを追加することでパフォーマンスを向上させていくことも可能だ。

今後の展開と製品への期待

仮想化基盤の活用に欠かせないツールに

導入や運用では、ノックスやDatrium社のアドバイスも大いに役立ったという。Datrium社の担当者が来日した際に、清水氏も抱えている課題や必要な機能を丁寧にヒアリングされたことで、「自分たちの製品をよくしようとしていることがわかりとても信頼できました」と振り返る。

また、ノックスはエンジニアも含めて熱心に対応してくれたという。清水氏は「ノックスは技術をわかっている方が多く、不明点や疑問点をユーザー目線に立ち自発的に確認してくれました。運用に際して様々な相談に乗ってくれたので、大変助かりました」と高く評価する。

今後は、仮想化への取り組みをさらに加速させる予定だ。ベアメタルサーバが必要なI/O要求の高いシステムを除き、基本的に仮想化環境に集約していく計画だという。

「現在は、ログ分析システムなどの移行を進めています。仮想サーバを並列分散処理させたり、重複排除を行うことで少ない容量で済ませたりと、仮想化のメリットを享受しているところです。Datriumはこうした仮想化基盤をうまく使うための欠かせないツールです」(清水氏)

Datrium DVXを使って、仮想化基盤やHCIの課題を解消したセントラル短資FX。清水氏はノックスの協力をあおぎながら、今後もDatrium活用の場を広げていくことを考えているという。高いパフォーマンスと管理性を両立させる同製品は、同社の今後のビジネス拡大に欠かせない基盤になろうとしている。

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