12月8日、東京都新宿区にて開催された「マイナビニュースフォーラム2017 Winter for データ活用 ~企業間競争に勝ち残るビッグデータ活用術~」。同イベントは流通・小売業、製造業の2トラックに分かれて開催し、流通・小売業のキーノートとしてファミリーマート、エムアイカードの両社が登壇した。ともにこの業界でトップを走る企業としてどのようにデータ活用をしているのか。本稿ではそのセッションの模様をお伝えしていこう。

  • マイナビニュースフォーラム2017 Winter for データ活用 ~企業間競争に勝ち残るビッグデータ活用術~

    マイナビニュースフォーラム2017 Winter for データ活用 ~企業間競争に勝ち残るビッグデータ活用術~

会員購買データを活用したOne to One Marketing

ファミリーマート マーケティング室 CRMグループマネージャー 井上博之氏

ファミリーマート マーケティング室 CRMグループマネージャー 井上博之氏

ファミリーマートではTポイントが使えることでも知られているが、ここで集められたデータをどのように活用しているか気になるところだ。ファミリーマート マーケティング室 CRMグループマネージャー 井上博之氏は、次のように同社のデータ活用法について説明する。

「データベース活用の目的は大きく分けて二つあります。一つはポイントカードそのものを集客施策のためのツールとして使う場合。二つ目はご利用いただいた結果として集積されるデータの分析・活用です」

ファミリーマートでは、毎月、一定の回数以上を利用している顧客を「お得意様」と定義している。

「ファミリーマートをご利用いただいているすべてのお客様のうち約3割のお得意様の売上が全体の総売上の7割を占めています。すなわち、ファミリーマートにとっては、いかに「お得意様」を増やすかで、売り上げが変わってくることになります」(井上氏)

ファミリーマートでもTカードを利用する顧客は多く、顧客の消費購買履歴を活用することで、その個人の特性に合わせたサービスを展開できるのだという。また、個々の特性に合わせたクーポンなどを発行すると、来店への歩留まりがよいという結果も出ており、従来の広告に比べて6~7倍だという。これをもっと向上させていくことが同社の狙いだ。

「たとえば、ファミリーマートには来ないが他のTポイント加盟店によく来るお客様には、そのお店のレシートにファミリーマートで使えるクーポンを付けていただく。同じようにファミリーマート側でも他のTポイント加盟店にあまり行かないお客様がいればそのお店で使えるクーポンを発行しています」と井上氏は語る。ファミリーマートではこうした企業間連携を「相互送客」と呼び。高い効果をもたらす施策として推進しているのだという。

「データ活用によって進めている施策には地域による嗜好性の違いや、店舗スケール、立地条件、地域などに合わせた品揃えという形でも生かされています」(井上氏)

こうしたデータ活用および分析は、アンケートと購買データでペルソナを意識しながらの商品開発にも活用されており、同社ではこれを「定量、定性データのミックス分析」と呼んでいるのだ。データを有効活用しながら、マーケティング、営業、商品が一体となって戦略立案をして発信していくことに力を入れているというファミリーマート。店舗と本部が一体となって課題に取り組んでいくことにより、これからも顧客満足度の高いサービスや商品を届けてくれるはずだ。

三越伊勢丹グループ・エムアイカードのカードデータ利活用

もう一方のキーノートに登壇したのは、三越伊勢丹グループ エムアイカード 提携開発室 室長の肥後龍治氏だ。同社は伊勢丹、三越、丸井今井、岩田屋などで会員を獲得して展開しているクレジットカード会社だ。三越・伊勢丹百貨店の顧客をカード会員化してきた経緯があり、275万口座の会員を保有してきた実績がある。三越・伊勢丹顧客向けに開発してきたため、高感度・富裕層向けのカードサービスが充実しているのが特長だ。

エムアイカードでは、各事業者には様々なサービスだけでなく、データ活用のサービスも提供している。

「カードデータで顧客分析ができます。お客様の属性情報のほか、決済データなどを使ってペルソナを捉えることが可能です」と肥後氏は説明する。

このほか、DMやEメール、プッシュ通知といったアプローチが可能なスマホアプリの提供をはじめ、提携先独自のポイント制度が可能な機能、カード会員化の促進のためのノウハウなども提供される。

分析環境で使うクレジットカードのデータには、誰が、いつ、どこで、何回払いで、いくらの買い物をしたかといった情報が格納される「決済データ」と、居住地や性別・生年月日、職業業種などの社会属性が含まれる「属性データ」がある。

ここでは、クレジットカード番号は使わず、この二つのデータを結合する『会員番号』でデータを取得している。そのため、クレジットカード番号の保持をする必要がなく、特別なセキュリティ対策をせずとも、安全にデータ活用ができる仕組みを提供しているというわけだ。

「弊社の特長はマーケティングの分析に使える顧客分析基盤を持っているところです。クレジットカードの金融システムや与信のための基盤とは別になっており、使いやすい形でインターフェイスを作成してあります」(肥後氏)

これには主に、百貨店事業の分析ツール、SC事業の分析ツール、会員組織運営の分析ツール、クレジットカード事業の営業向け分析ツール、GISツールなどがあるのだという。

同氏は続いて、カードデータ活用による施策の結果、エムアイカード導入後に売り上げが数十億円単位で大きく伸びている商業施設の事例などを発表。もちろん、エムアイカードを導入したから売り上げが伸びたのではなく、分析と施策を繰り返して成長した例になると肥後氏は補足する。

  • エムアイカード導入商業施設によるカードデータ活用効果

    エムアイカード導入商業施設によるカードデータ活用効果

「カードデータは様々な分析に使えます。しかし、有効に使えるかは、分析環境の構築者や分析メニューの設計者、実際に分析をおこなう担当者が、企業や部署の取り組み方針や業種の事業構造などを理解しているかがポイントになると思います」(肥後氏)

環境構築は取り組み方針に合わせる必要があり、確認したいデータや見たい切り口や業種によって変わることから、分析メニューの設計には深く理解する必要があるというわけだ。エムアイカードの豊富なノウハウによって構築された洗練されたデータ活用術は多くの企業の参考となったはずだ。

[PR]提供:マイナビニュース