半導体や組込み分野などで広く事業を展開する技術商社大手のアヴネットは、産業用機器、医療用機器、プリンタなどの製品開発、情報通信機器の組込みソフトウェアの受託開発などを行うソフトウェア開発企業であるOKIアイディエスと共同で、SAEレベル4~5を実現する次世代の高度自動運転技術の開発に最適な新型開発プラットフォームを開発した。

現在、自動運転のレベルは、米国の非営利団体SAE(Society of Automotive Engineers)の制定するレベル0~5の6段階が一般的に広く使われており、レベル0が完全手動、レベル5が全域完全自動で、その間に4つの段階がある。

・レベル0:運転者が全ての運転タスクを実施
・レベル1:システムが前後・左右いずれかの車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施
・レベル2:システムが前後・左右の両方の制御に係る運転タスクのサブタスクを実施
・レベル3:システムがすべての運転タスクを実施(※限界領域内)、作動継続が困難な場合の運転者は、システムの介入要求等に対して、適切に応答することが期待される
・レベル4:システムがすべての運転タスクを実施(※限界領域内)、作動継続が困難な場合、利用者が応答することは期待されない
・レベル5:システムがすべての運転タスクを実施(※限界領域内ではない)、作動継続が困難な場合、利用者が応答することは期待されない

※ここでの「領域」は必ずしも地理的な領域に限らず、環境、交通状況、速度、時間的な条件なども含む
(出所)官民ITS構想・ロードマップ2017

新型プラットフォームは、FPGAとARMコアから構成されるザイリンクス社製最新デバイス「Zynq(R) UltraScale+(TM) MPSoC」(以下"MPSoC")を2個搭載し、自動車メーカーやサプライヤーが独自でAI(人工知能)などの機能を搭載したり、次世代ITS(高度道路交通システム)との連携を可能とするオープンプラットフォーム設計となっている。

特筆すべき機能は?

従来のADAS(Advanced Driver Assistant System:先進運転支援システム)開発プラットフォームでは、汎用的なインターフェースが多いために、別途拡張ボードを用意するなどの対応が必要であった。 一方、今回両社が開発した新型プラットフォームは、ターゲットを高度自動運転技術開発に絞り、必要な機能をコンパクトなA4サイズにまとめ、車載バッテリーの規格電圧と同様の12ボルト稼働にしたことにより、実車への搭載による評価・検証が可能となり、自動運転技術開発にかかる時間を大幅に削減できる。

また、SAE Level4-5の自動運転に必要な大容量データを、高性能GPUと同等の処理速度を保ちながらも、約5分の1の消費電力(ザイリンクス調べ)での稼働が可能だ。
開発コンセプトは、『AD(自動運転)はADAS(先進運転支援システム)の単純延長ではない』、かつ「コンパクト設計」。グローバルで約210万社のカスタマー数を誇るアヴネットがコンセプト作成を行い、実際の設計製造をOKIアイディエスが担当した。

  • 新型プラットフォーム概念図

車載電子システムの機能安全要求レベルASIL-C(*1)に対応したMPSoCを2個搭載し、図のように、1つ目で多数のセンサー情報を処理して人物、車両、障害物の検出を行い、2つ目で地図データ、地形情報、風景情報を高速に処理する。2つのMPSoC で自動運転に必要な大容量データを瞬時に処理し、最適な走行ルート選択やエンジンコントロールを行う。 カスタマーの技術資産やAI、ディープラーニング技術、オープン化されているセンサー・地図情報、そしてザイリンクス社が保有する技術資産を容易に組み合わせることが可能であり、現在の自動運転車の先のレベルSAE Level4-5の自動運転車の早期開発に寄与する。

周辺産業への応用も

本開発プラットフォームのターゲットセグメントである自動運転分野に目を転じると、内閣官房は2014年以降、「世界一のITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)を構築・維持し、日本・世界に貢献する」ことを目標に、「官民ITS構想・ロードマップ」を三度にわたって策定、改定している。 最新の2017年版の副題には「多様な高度自動運転システムの社会実装に向けて」とあり、自動車関連産業については、周辺産業を含め産業規模が大きく、波及性が高い汎用性に富む技術をベースにしているため、広範な産業への影響も考えられる、と、言及している。(*2)

本開発プラットフォームは、コンパクトなサイズと省電力での稼働が可能なため、自動運転アプリケーションのほか、ロボット等の自律制御、機械学習実装を目指す産業・医療アプリケーションなど、幅広いターゲットに、2018年2月より国内先行販売の予定。次いで、アジアでも販売を広げる見込みだ。

*1 ASIL(Automotive Safety Integrity Level:安全性要求レベル) 各車載電子システムで起こり得るさまざまな障害(ハザード)を避けるのに達成しなければならない安全性のレベルを、A~Dの4段階で表現したもの。Aがいちばん低く、Dがいちばん高い。

*2「官民ITS構想・ロードマップ2017」

※本記事は「アヴネット」から提供を受けております。著作権は同社に帰属します。

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