総合金融・決済事業者としての事業展開

  • 日本クレジット協会

渡名喜:次に、信販会社として貴社の事業への取組みについてお聞かせください。

齋藤:当社は昭和29年に広島でクーポン事業により創業した会社です。現在は個別クレジット、クレジットカード、融資のほか、金融機関の個人向け無担保ローンの保証、家賃や売掛金などの決済保証を主な事業としており、幅広い商品・サービスの提供により個人や個人事業主等のさまざまな分割・決済ニーズにお応えしています。
 現在、これらの事業を当社の成長エンジンと位置付ける「カード・融資事業」、「銀行保証事業」、「決済・保証事業」と安定成長を堅持する「個品割賦事業」の4つにセグメントし、平成28年3月期を初年度とする5カ年の中期経営計画に取り組んでおります。
 当社の「カード・融資事業」の中のクレジットカード・ショッピングの取扱高は、業界においてはチャレンジャーのポジションであると認識しており、マーケットの成長を上回る拡大を目指し重点的に強化を図っています。いくつか具体例をお話ししますと、取扱高拡大に効果が現れ始めた取組みとして、ポイント還元率を高めたプロパーカードのラインナップ充実、小額現金決済市場の攻略に向けた非接触ICカード等の推進、あるいは、ロイヤルカスタマー戦略の展開などです。これらに加え、みずほ銀行とのアライアンス強化によるシナジー効果の最大限の取り込みにも注力しています。
 銀行保証事業については、引き続き保証会社として適切な対応を図り、お客さまのニーズに応えていきたいと考えています。

 次に「決済・保証事業」ですが、家賃決済保証や売掛金決済保証を中心に足許では取扱額が大きく伸長しているところであり、特に家賃決済保証については、晩婚化等を背景とした単身世帯数の増加や民法改正による保証人保護の強化の動き等から、これまで以上に機関保証のニーズが高まりマーケットのさらなる拡大が期待できる状況にあります。
 そうした中、先般、株式会社リクルートホールディングスの100%子会社で家賃決済保証事業を営む株式会社リクルートフォレントインシュアを当社グループの一員として迎えました。これにより、当社は家賃保証事業の市場シェアトップを狙える事業規模になるとともに、事業に精通した多数の人材を受け入れることができました。さらには約30万人という顧客基盤が新たに得られたことによって、クレジットカードや個品割賦事業へのシナジーも期待できると考えています。

 最後に、「個品割賦事業」についてお話しいたします。
 この分野においては、これまで幾多の困難な場面に直面しつつも、それらを乗り越え今に至っています。この間、消費者保護の観点から加盟店管理の強化や与信の高度化などに真摯に取り組み、同時に、消費者の利便性や満足度の向上、さらに、加盟店の販売促進へも寄与する観点から、例えば、消費者の返済計画にあわせて自由な返済プランを可能とした商品、パソコンやスマートフォンから申し込みができるサービスなど、この分野をリードする企業として業界に先駆けたさまざまな商品・サービスの提案を行ってきたところです。また、ここ数年、個人向けオートリースの取扱高が大きく伸長しております。これは、「所有から使用へ」という消費者の価値観の多様化にうまく応えることができた結果だと思います。引き続き、「個品割賦事業」については、当社の基盤事業として安定成長を堅持してまいりたいと考えております。

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渡名喜:貴社の業務運営面等での新たな取組みなどについて、お聞かせください。

齋藤:この10月に、当社のビジネスプロセスの抜本的な見直し等によるさまざまなコスト最適化を目指して、「プロセス・イノベーションプロジェクトチーム」を発足させました。このプロジェクトでは急速に進む技術革新を背景に、例えば、大量処理業務を切り崩し、生産性を飛躍的に向上させるためのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の検討やAIの活用による与信のさらなる高度化と抜本的な効率化にチャレンジしていきたいと考えています。また、FinTech等の利活用による新商品・サービスの開発に向けては、シリコンバレーやサンフランシスコへ社員を派遣するなど、最先端で活動する企業の調査や情報収集も行い、他社との共同事業の検討などに取り組んでいます。

渡名喜:貴社では、最近の社会的関心事項については、どのような取組みをされていますか。

齋藤:当社は平成24年にCSRの専門部署であるCSR推進室を立上げ、これまで地域・環境活動や震災支援等の取組みを継続して行ってきました。2015年9月、国連においてSDGs(持続可能な開発のための目標)が合意され、近年、投資家が企業のCSR活動を投資判断に加えるESG投資の流れが加速していることも踏まえ、こうした社会の要請や課題に対し経営としてしっかり向き合い、これまで以上に取組みの姿勢を示していく必要性を感じています。当社にできること、当社が貢献すべきこと、また社会・環境により一層配慮すべきことなどを改めて整理しながら、さらに取組みを強化していきたいと考えています。
 一億総活躍社会の実現を目指し政府が取り組む「働き方改革」については、社員それぞれの生活スタイルにあった働き方を可能とし、社員満足度あるいは生産性向上にもつながる取組みとして、会議のペーパレス化の促進や一部営業店の週休3日制の導入、また本社を対象にテレワークの試行を開始、インフラや運用・管理の検証を行うなど、現在さまざまな取組みを並行して進めているところです。昨年10月には、ダイバーシティ推進室を新設し、女性活躍推進はもとより多様化する人材の活用やワーク・ライフ・バランスの実現に向けて取り組んでいます。
 また当社では、「健康宣言」等を策定するとともに、食生活の改善促進や受動喫煙防止策など健康増進に向けて具体的に取り組む事項を決めました。今後、社員の健康についての意識付けの強化を図るとともに、当社の「健康宣言」や健康経営に係る取組みについても社外へ発信する等、健康経営を進めていきます。