『ミュージカル・テニスの王子様』でデビュー。現在はTVアニメや吹き替え、舞台などで活躍中の増田俊樹さん。プライベートではゴルフやボルダリング、サバゲーなどを楽しむ一方、アニメやゲーム、漫画などインドアな趣味も持っている。その中でも特に増田さんの核となっているのが漫画だ。

■プロフィール

増田俊樹(ますだとしき)
1990年3月8日生まれ。広島県出身。スペースクラフト・エンタテインメント所属。主な出演は『刀剣乱舞-花丸-』加州清光役、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』仁科カヅキ役、『美男高校地球防衛部LOVE!LOVE!LOVE!』蔵王立役、『アイドリッシュセブン』和泉一織役など
公式Twitter:@Masuda_Toshiki

撮影:大塚素久(SYASYA)

今回は、電子コミック配信サービスの「めちゃコミック(めちゃコミ) 」にある漫画の中から、「増田俊樹がこれまで出演してきたTVアニメの原作」をピックアップ。それぞれの作品を振り返ってもらうと同時に、増田さんの漫画愛と、それに通じる芝居への並々ならぬ想いや覚悟について語ってもらった。記事の最後には増田さんのサイン入りチェキが当たるキャンペーンを開催中。


僕が能力を持ったら絶対にヴィランですね

◆『僕のヒーローアカデミア』

『僕のヒーローアカデミア』(C)堀越耕平/集英社

総人口の約8割が何らかの特殊能力”個性”を持つ世界。その”個性”を悪用しする犯罪者の敵(ヴィラン)から人々を守る職業のヒーローを目指し、ヒーロー輩出の名門校・雄英高校に通う少年・緑谷出久が主人公。まったくの”無個性”で、ヒーローへの道を絶望的かと思われていた出久はある日、ずっと憧れていたヒーローのオールマイトと出会う。とある出来事がきっかけで、出久はオールマイトに認められ、”個性”の「ワン・フォー・オール」を受け継ぎ、ヒーローへの道を歩み出すことになる。

――今回は、増田さんが出演したTVアニメの原作についてお聞きしていきます。まず『僕のヒーローアカデミア』では、「硬化」という体を硬くする個性を持ったヒーロー・切島鋭児郎を演じています。

切島って最近の連載ではフィーチャーされていますけど、役が決まった当時は、まだそんな目立ったキャラクターではなかったんですよ。僕も原作を読んでいましたけど、「切島がいなかったら切り抜けられなかったよね」みたいな場面もなく、実際に決まった当初は「誰だっけ……?」という印象でした(笑)。


  • 『僕のヒーローアカデミア』(C)堀越耕平/集英社

――切島本人も自分の能力について地味と言っていましたけど、当初はキャラクターとしても目立っていなかったですね。

だからこそ、「じゃあ切島を演じるのは自由だな」と思いました。「こういうことをしなくてはいけない」がないから、演じる幅が自由なんです。そこでどんなキャラクターかを自分で考えていって、そこで切島は「まだ折られていない少年」かなと。


――折られていないとは?

『グラップラー刃牙』でもあるように、男って誰しも地上最強の男を目指すけど、どこかで自分の限界を知って諦めるじゃないですか。それをまだ諦めていない少年なのかなと。なので、役が決まった当初は、男が憧れるような「ザ・男」を目指していたんですよ。「漫画好きな男の子が好きな男キャラクター」っているじゃないですか。『ヒロアカ』だと轟焦凍のような炎と氷の能力を持っていて、派手で格好良いみたいな。そうではなく、もう「性別:雄」が憧れるようなキャラクターにしたかったんです。


  • 『僕のヒーローアカデミア』(C)堀越耕平/集英社

――したかったってことはダメだった?

連載が進んでいくにつれて切島の過去編も描かれるようになって、「いや折れてるやん」って(笑)。


――実は高校デビューだったぞと。

そうなんです。でも、自分の中で折り合いをつけて生活しているということを知ることもできたので、そこでまた芝居の質は変わりましたね。やっぱり子どものころってヒーローに憧れるじゃないですか。だけど、特別な能力を持っていないとヒーローになれないとかそういうことではなく、大事なのは目指す覚悟とか夢とかなんだなと気付かされました。


  • 『僕のヒーローアカデミア』(C)堀越耕平/集英社

――増田さんもヒーローや何かの能力者に憧れることはありました?

そりゃあねえ。やっぱり僕も轟が好きなんですよ(笑)。『ダイの大冒険』が好きだったので、炎と氷で半分ずつ戦うというのにも憧れていたんですよ。夢を詰め込んだ宝石箱のような能力です。


――「こういう能力が欲しい」みたいに考えることも。

もちろん想像します。『バジリスク ~甲賀忍法帖~』みたいに見ただけで相手を倒せるような瞳の能力が欲しいとか。あと、知り合いと「一番強い能力なんだと思う?」みたいな話をよくするんですけど、やっぱり『ジョジョの奇妙な冒険』のボスキャラクターのように時間を操れる能力が強いんですよね。なので、僕は時間操作をしたいんですよ。


――『ジョジョ』では時間を止めたり、吹き飛ばしたり、巻き戻したりといろいろありますけど。

うーん、時を戻したいですね。そうしたら(ピーーー)して(ピーーー)もできるし。あ、あと瞬間移動をしたいです。人に(ピーーー)とか。そういう妄想をよくしています。


――それはかなりやばいやつですよ!

僕は能力を持ってしまったら絶対にヴィランですね(笑)。



今後、パクりたいですね

――ひとつの作品の話をしていたのに、どんどんほかの漫画のタイトルが出てきますね。

漫画は大好きで子どものころから読んでいますからね。小学生のときに『コロコロコミック』や『週刊少年ジャンプ』を読みはじめて、少年誌だとそこから『週刊少年マガジン』や『週刊少年サンデー』とか。コミックスも買っていましたけど、お小遣いをそんなにもらっていたわけではないので、雑誌連載だけで追っている作品も多かったですね。


――記憶の中で一番古い漫画は?

なんだろう、やっぱり『スーパーマリオくん』かな。あと、『ポケットモンスター』ですね、ピッピが下品なほうの。


――ギエピーのほう。

そうそう。どちらも家に1巻があったのを覚えています。ほかには『金色のガッシュ!!』や『鋼の錬金術師』も好きでしたね。


――以前インタビューで一番好きな漫画は『からくりサーカス』と言っていましたね。

大好きです!『からくりサーカス』を塗り替えるのは難しいですね。でも、僕が役者じゃなかったら、もしかしたら一番じゃなかったかもしれないです。


■増田俊樹の"心に響いた"作品その1

◆『からくりサーカス』

『からくりサーカス』(C)藤田和日郎/小学館

小学5年生の才賀勝は、父の死により莫大な遺産を相続することに。すると、腹違いの兄弟や叔父に命を狙われることになってしまった。そんな彼の危機を偶然救ったのは、人を笑わせないと呼吸ができなくなる”ゾナハ病”にかかった男・加藤鳴海。また、マリオネット”あるるかん”を操る美女・才賀エレオノール(通称しろがね)も、勝を守るため戦いを繰り広げることに。鳴海やしろがねとの出会いによって、勝は徐々に成長していく。

――どういったところがそんなに刺さったんでしょうか。

いろいろありますけど、最終回のカーテンコールのシーンですね。漫画にカーテンコールがあるなんて想像が付かなかったんです。


  • 『からくりサーカス』(C)藤田和日郎/小学館

――たしかにあれは漫画界に残る名シーンですね。

敵味方関係なく全員が笑顔で手を振っている、ほんとに涙が出そうになりました。藤田和日郎先生はすごいですね。『月光条例』でも真っ白のページがありましたけど、すごいなと。想像の域を超えていました。


――世界中の物語が消滅するという演出での見開き真っ白ですね。

どれだけ読み手を驚かせるかという点もすごいんですけど、その演出を許してくれる出版社などの協力があってできることじゃないですか。それに挑戦できるバイタリティにも憧れます。なんというか、同じ表現者として、負けたと思うと同時にパクりたくなりました。自分が今後、朗読劇や舞台などの演出や構成をするかもしれない。そんなときにパクりたいですね。



入れ替わりたいのはアラブの石油王

◆『ひとりじめマイヒーロー』

『ひとりじめマイヒーロー』(C)ありいめめこ/一迅社

自分の居場所を求めていたヘタレヤンキーの勢多川正広は、熊殺しと呼ばれている不良高校教師の大柴康介と出会う。正広は康介に憧れを抱きながら付き従うが、だんだんと憧れ以上の気持ちに気付いていく。ある日、康介は正広をパシリにしていた不良たちと喧嘩になる。抗争後、康介に想いを告げ、無事両想いになる正広。ようやく自分のヒーローに出会うことで、物語は紡ぎ出されていく。

――続いては『ひとりじめマイヒーロー』。増田さんは主人公のひとり、勢多川正広役として出演しています。

2014年からスタートしたドラマCDのときから勢多川役をやらせてもらっているので、もう3年以上の付き合いになりますね。ドラマCD、TVアニメとずっと携わらせてもらっているので、作品を広める手伝いをしてきたという自負があります。TVアニメ化は集大成のようでもあり、ひとつの通過点でもありますね。


  • 『ひとりじめマイヒーロー』(C)ありいめめこ/一迅社

――『ひとりじめマイヒーロー』は原作とTVアニメでは雰囲気が少し違う作品ですね。

原作のテンション感とは逆を向いている作品ですね。原作やドラマCDはハチャメチャなドタバタ系コメディBLでした。でもTVアニメは、ひいろゆきな監督のこだわりがすごく現れていて、男同士の気持ちをしっとりと描いている作品になっています。


――もともとドラマCDで演じていただけに、そこに手こずることも?

勢多川は「自信がないヘタレヤンキー母さん」だけど人に対しておせっかいでツッコミも多いキャラクター。その立ち位置は変わらないんですけど、TVアニメだとモノローグで進行するシーンが多くて、ひとり語りで内にこもり気味な演出が多かったんですね。なので、あまり人に対してズケズケ言うような会話はしないように気をつけました。カップリングになっている大柴康介との掛け合いでは特に意識をしましたね。


  • 『ひとりじめマイヒーロー』(C)ありいめめこ/一迅社

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――次は宮村虎之介役として出演している『山田くんと7人の魔女』。

まず、僕がこの作品に対する想いとしては「続編をはやく!」です。原作は今年大団円を迎えまして、TVアニメではまだそこまで進んでいないんですけど、二転三転といろいろな出来事が起きて、こんな面白い展開が待っているのか、と次のアニメ化を待ち望んでいます。


◆『山田くんと7人の魔女』

『山田くんと7人の魔女』(C)吉河美希/講談社

朱雀高校に通う山田竜は、学園に馴染むことができない不良少年で問題ばかり起こしていた。ある日、階段から落ちたことをきっかけに、優等生・白石うららとキスをしてしまった山田竜は、うららと身体が入れ替わってしまう。検証を進めるうち、山田は「キスをすることで魔女の力をコピーする」、うららは「キスをした相手を身体が入れ替わる」という能力を持っていることが判明する。そして、朱雀高校には魔女と呼ばれる7人の女子生徒が居て、それぞれが異なる能力を持っていることを突き止めた彼らは、魔女探しの日々を送ることに。

――『山田くんと7人の魔女』はもともと読んでいたんですよね。

はい。大好きです。そこで宮村役が決まったわけですけど、宮村は格好良い中にトリッキーさもあるというキャラクターで、こういった役には憧れがありました。決まったときはうれしかったと同時に大きなプレッシャーも襲ってきて……、自分が好きなキャラクターを演じるのは怖いですね。


  • 『山田くんと7人の魔女』(C)吉河美希/講談社

――演じる上で大変だったポイントなどは?

男女の中身が入れ替わるという作品なので、宮村の中にほかの女性キャラクターが入ってくるという展開もあるんですよ。そうなると、僕がそのキャラクターの芝居をしなくてはいけない。そこが大変でもあり、楽しくもある部分でしたね。


――演じる上ではどういったディレクションを受けました?

音響監督の鶴岡陽太さんの方向性として、「キャラクターの輪郭を際立たせたい」ということは言われました。五十嵐潮役の小野大輔さんと僕はわりと声質が近いので、「できるだけ芝居を変えて欲しい」と。そういった意味で声質が近い人とバランスを取りながら芝居をするのははじめてだったので、苦戦しましたね。


  • 『山田くんと7人の魔女』(C)吉河美希/講談社

――結構ぽんぽんと入れ替わる作品ですけど、増田さんが入れ替わってみたい人っていますか?

うーん、アラブの石油王かな。


――まさか……?

僕の口座にお金を入れてしまうと足がついてしまうので、いろんなところに一気にお金をバラまいて、元の体に戻ったあとにちゃんと僕が受け取れるようにしたいですね。


――増田さん、やっぱりヴィランですね。

でしょ(笑)。