佐賀県神埼市に本社を置く「トヨタ紡織九州」は、トヨタの高級車ブランドであるレクサスのシートやドアトリムといった内装品、エアクリーナーなどのエンジン周辺機器を製造している。同社では、製造のための設備を新たに工場へ導入する際に担当者が設備メーカーに出向き仕様と照らし合わせて設備のチェックを行う。2017年1月からそのチェック業務に、iPad上で動作するFileMakerのカスタム Appを使い始めた。FileMakerは、アプリの開発経験やITスキルがなくてもビジネスに最適なカスタム App(カスタムアプリケーション)を作成できる開発ツールで、実行環境も備わっているソフトウェアだ。

  • 佐賀県神埼市にあるトヨタ紡織九州

自社に適した規模で、使いながら拡張していけるFileMakerを採用

トヨタ紡織九州 技術部
部長 篠﨑敦嗣氏

紙の書類によるチェック業務をタブレットに移行しようと発案したのは、同社 技術部 部長の篠﨑敦嗣氏だった。「質の高い先進的な製品を作る、ブランド力のあるメーカーとして、業務に常に新しいことを取り入れていきたいと考えていました。インダストリー4.0など様々な変革がおとずれる中、自社に適した規模のIT活用を模索していたところ、iPadは現場の情報活用に最適な端末だと確信しました」と篠﨑氏は語る。

この発案を受け、同社 技術部 生産技術室 生技管理係の大石俊宏氏が情報を収集し、iPadに対応したテクノロジーやソリューションを比較検討した。FileMakerに決定した理由は、初期費用が安価であることと、使いながらシステムを成長させていける拡張性に優れていることだという。

話し合いながら短期間でカスタム Appをブラッシュアップ、半年で本稼働へ

2016年6月、大石氏は、ファイルメーカー社の開発パートナー企業(FileMaker Business Alliance)の一社であるグローブネットシステムに開発を委託し、カスタム App開発プロジェクトを共同でスタートさせた。そこからおよそ半年で本稼働に至ったことになる。

大石氏は「仕様や要望を相談すると開発会社が一度持ち帰って開発するのが一般的な流れだと思いますが、FileMakerを使った開発工程では、話をしながら目の前でどんどんプロトタイプを作ってくれるので、その場で動作やユーザインターフェースを確認でき、短期間で稼働に至りました」と語る。

トヨタ紡織九州 技術部生産技術室 生技管理係 大石俊宏氏

稼働直前の1か月間ほどは、チェック業務を担当する同社 技術部生産技術室 生技管理係の室野哲史氏が実際に使ってみてフィードバックし、ブラッシュアップしていった。

開発を担当したグローブネットシステムの浦川慧氏は「現場のユーザーは機械の前に立ったままiPadを操作するので、ポップオーバーや値一覧などの機能を活用し、○×をタップするだけ、写真を撮るだけ、といった単純な動作でチェック作業が完了するようレイアウトを設計しました。また、配色も工夫して、iPadのスクリーンでできるだけ見やすく使いやすいように作っていきました」と開発時に心がけたポイントを振り返った。大石氏は「FileMakerは、コンピュータ上で作った画面をそのままiPadで使えるのも優れた点だと思います」とFileMakerのレイアウトデザインの優位性も高く評価している。

業務の効率化、情報の可視化、チェック品質の均一化でチェック体制が強化

グローブネットシステム 浦川慧氏

以前は、最大で400ものチェック項目をすべてプリントした紙を持っていき、チェック結果やコメントを手書きで記録していた。文字で記録するだけでなく、必要に応じて図を描くこともあった。写真を撮影した場合は、自社に戻ってから写真をパソコンに取り込み、Excelのシートに貼り込んで整理する作業にも時間がかかっていたという。

これをFileMakerとiPadにリプレースすることで、多くの効果が得られた。

トヨタ紡織九州 技術部生産技術室 生技管理係 室野哲史氏

まず、業務の効率化が挙げられる。チェック前後の書類作成の手間が大幅に軽減された。室野氏は「現場では機械を操作しながらチェック作業を行うので、同時に書類やペンを持つことすら大変でした。今はiPadだけで記録できるので効率がとても良くなりました」と語る。

iPadのカメラで撮影するだけで写真をカスタム Appに記録できるのも大きなメリットだという。写真を残しておけば、後から社内で複数の社員が見て内容を検討できるためだ。さらに、チェックの拠り所となる膨大なページ数の標準仕様書をiPadで参照し、内容の検索もできるようにしている。文字や図を手書きする必要がない、写真を撮影しその場で保存できる、標準仕様書の内容を現場ですぐに検索できるという環境が整った結果、チェック業務の時間は半減したという。

  • 設備メーカーに出向き、設備を見たり動かしたりしながらiPadのカスタム Appにチェック内容を記録していく

  • チェック項目の画面は、現場で立ったままでも操作しやすいように作られている

写真を活用した情報共有や標準仕様書の参照により「審査の際に生じる、個人による認識の相違がなくなります」と篠﨑氏はチェック品質の均一化も効果のひとつとして挙げている。

  • 設備に不備があればiPadで写真を撮影し、写真上にコメントや図を追記。より視覚的に情報共有ができるようになった

チェック以外の業務や他部署にもカスタム Appを広げていきたい

FileMakerのカスタム Appを使い始めたことで、さまざまな展望やアイデアも出てきている。

まず、設備の納入前チェックのカスタム Appは操作性をさらに向上させ、レポート機能も追加したいという。これに加え、大石氏は「チェック内容が蓄積されていますから、それを仕様書に反映させれば今後の工数や費用が抑えられます。また、チェック業務以外に現状ではあちこちに分散しているデータをFileMakerに集約、もしくは連携させ、部署内の誰もが仕事の流れに応じて引き出せるようにしたいと思っています」と語る。

篠﨑氏の率いる技術部には、大石氏と室野氏が所属する生産技術室のほかに、設備管理室がある。生産技術室は主に設備の納入までを担当し、納入後の設備の維持・向上は設備管理室が受け持つ。篠﨑氏は、生産技術室で使い始めたFileMakerを設備管理室の業務にも広げていきたい考えだ。「納入時にチェックしたデータがFileMakerに記録されていますから、設備が稼働してからの点検や部品交換時期の管理などにもそのデータを活用していきたいですね」(篠﨑氏)

“かっこいい”仕事からより良い製品が作られ、ブランド力となる

このようにさまざまな活用のアイデアが生まれていることは、現場でタブレットを使う“かっこよさ”も影響しているという。「タブレットで仕事をしていると“かっこいい”ですよね。実はこれが仕事をする上で重要な要素のひとつになっています。美しく感動のある仕事からは、良い製品が作られ、それがブランド力となります。iPadとFileMakerの活用は、社員のモノづくりに対する意識も変えてくれました」(篠﨑氏)

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