皆さんは「確定拠出年金」という制度をご存知でしょうか? この度、マイナビニュース編集部では働いている男女(300名)を対象に「確定拠出年金」に関する意識調査を実施しました。

その結果、「Q1/確定拠出年金に加入されていますか」という質問には、41.2%の方が「はい」と回答されています。しかしその一方で、「Q2/転職の時に、確定拠出年金資金の移換は、6ヶ月以内にしなければ、自動的に『国民年金基金連合会』へ移換されてしまうことを知っていますか」の質問には、72.8%の人が「いいえ」と答えました。そこで今回は、転職時に必要となる「確定拠出年金」の移換手続きなどについて、専門家の鈴木さや子さんに詳しくお話を伺います。

■これまでに「転職」を考えたことがある人は78.1%も!

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ファイナンシャル・プランナーの鈴木さや子さん

―――アンケートでは「Q3/これまでに『転職』を考えたことがありますか」の質問に対して「はい」と答えた割合が78.1%と高く、転職を考えている方はかなりいらっしゃるんだなと感じました。転職は人生において大きなライフイベントになると思うのですが、確定拠出年金に影響はあるのでしょうか。

鈴木氏:実は転職と共に企業型確定拠出年金の引越しをしなければならないので、確定拠出年金にも影響があります。また、企業型確定拠出年金の制度がある企業から、ない企業へ転職する場合は、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」へ移換する手続きが必要になります。(鈴木さや子さん)

―――確定拠出年金には、「企業型確定拠出年金」と「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があるのですか? 両者の違いがわからないのですが、わかりやすく教えていただけますか。

鈴木氏:企業型と個人型の大きな違いは2つ。1つ目は掛金の支払い元が異なります。企業型確定拠出年金は、会社が掛金を拠出し従業員が運用します。「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、掛金も運用も個人です。

そして2つ目は、企業型確定拠出年金の掛金は会社の経費ですが、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の掛金は加入者個人の拠出であるため全額が所得控除され、その分所得税と住民税が軽減されます。

表1.<確定拠出年金(DC)の企業型と個人型の違い>

  • ※作成:鈴木さや子さん

移換に必要な手続きとは

―――なるほど、違いがわかりました。では、転職先に「企業型確定拠出年金」がない場合は「個人型確定拠出年金(iDeCo)」へ移換が必要ということですが、どのような手続きが必要になりますか。

FP:その場合は、まず「個人型確定拠出年金(iDeCo)」用に新たな口座を開設してください。そして、これまでの年金資産を移換していただきます。

―――それでは、年金資産の移換について詳しく教えてください。

鈴木氏:制度がちょっと複雑なので整理してお伝えましょう。まず、企業型確定拠出年金の加入者資格は退職日の翌日に失効してしまいます。そのため、退職日の翌日(資格喪失日)の属する月の翌月から6ヶ月以内に、個人別管理資産の移換手続きをしなければなりません。

その際に、転職先に企業型確定拠出年金があれば、そのまま資産を移換できますが、ない場合は「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に移換していただくことになります。 この移換手続きは、つい放置しがちになってしまいますが、放置すると通算加入者等期間に算入されなくなり本来60歳からの年金の受給開始年齢が遅くなる可能性があるので注意が必要です。

「通算加入者等期間」については後ほど詳しくご説明しますね。

―――確かに6ヶ月はすぐに過ぎてしまいそうですね。仮に放置してしまうとこれまでの年金資産はどうなるのでしょうか。

「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に移換する場合は、個人型年金加入者として拠出を継続、または、運用指図者として運用を継続できます。一方、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」へ何らかの事情で放置してしまい移換ができない場合、つまり6ヶ月以内に移換手続きをしなかった場合ですが、この場合は6ヶ月目の月末を経過したあと、自動的に「国民年金基金連合会」へ移換されてしまいます。

「個人型確定拠出年金(iDeCo)」への移換手続きをせずに、「国民年金基金連合会」へ自動移換されると、資産は利息が付かない無利息の状態となります。また、この期間は、将来もらえる確定拠出年金からの老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間には算入されません。60歳から年金を受け取るには、確定拠出年金に加入していた通算加入者等期間が10年以上必要なのですが、10年に満たない場合は受給開始年齢が遅くなってしまいます。

  • 通算加入者等期間によって受給開始年齢が遅くなる可能性がある

「国民年金基金連合会」へ自動移換されてしまうと、無利息状態で、しかも通算加入者等期間に算入されないため、まさに、時間が止まってしまうと言ってもよいでしょう。

実は、自動移換されると、移換時だけでなく資産を預かってもらっている間も、手数料がかかり続けます。つまり、これまで運用していた資産が徐々に減ってしまうのです。

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