MATLAB/Simulink「R2017a/R2017b」最新情報

MathWorks Japan宅島章夫氏

続いて登壇したのは、MathWorks Japanの宅島氏だ。同氏は、MATLAB/SimulinkのR2017aとR2017bについて、「プラットフォームの作業性や実行能力の向上(Platform Productivity)」「ワークフローの深さに関する進化(Workflow Depth)」「アプリケーションの幅の広がり」という3つのテーマのもと解説した。

1.プラットフォームの作業性、実行能力の向上

まず、プラットフォームでの機能向上という点では、スクリプトエディタ「MATLAB Live Editor」に、テーブルをスクリプトに編集する機能、関数利用時のヒント表示、グラフをインタラクティブに編集する機能が加わった。また、アプリ開発が容易にできる「App Designer」では、新しいドロップダウンリスト、ダイヤル、ゲージなどが加わった。2次元、3次元グラフの描画も可能になり、コードの記述が簡単で共有が容易にできることが他の開発ツールとの違いだという。

  • 様々な形でグラフを編集することが可能になった MATLAB Live Editor

  • App Designerの紹介スライド

アドオンアプリとの連携も強化されている。アドオンアプリには機械学習やデータ収集・表示、信号処理アプリなどがあり、今回の連携強化によって、複数の操作を一括して実行できるMATLABコードを自動的に吐き出すことが可能となった。

また、Simulinkについては、信号線をひっぱってブロックの入力付近に持っていくだけで入力ポートを自動作成できる機能や、複数の信号を選択してバス信号を自動作成する機能などが追加されている。

2.ワークフローの深さに関する進化

同氏は続けて、ワークフローの深さに関する進化を説明。まず、SimulinkのVerification & Validationを、Simulink Requirements、Simulink Coverage、Simulink Check、以上の3製品に分割したことを紹介した。

また、新製品として、MATLABコードからCUDAコードを自動生成するGPU Coderを紹介。GPU Codeで生成したコードはNVIDIA GPUへ実装でき、これにより演算能力を向上することが可能だ。宅島氏は「開きはありますが、およそ5倍〜700倍の高速化が可能です」と語る。さらに、ダイナミックメモリアロケーションやクローンディテクションと呼ばれる技術により、コード生成の効率化も図られている。

  • 新製品であるGPU Coder

3.アプリケーションの幅の広がり

R2017aおよびR2017bでは、IEEE802.11adのライブラリや5G関連のライブラリへの対応が進むなど、ワイヤレス対応が強化されている。機械学習については、「分類学習機」に加えて新たに「回帰学習機」を追加。これにより、回帰手法を選択して学習とその結果を検証することが可能となり、複数アルゴリズムを同時に実行してアルゴリズム間の差異を比較することができるようになった。また、ディープラーニングに関しては、学習済みのディープラーニングモデルへのアクセスやインポート、スクラッチからのディープラーニングモデルの構築、NVIDIA GPUを用いたモデルの学習などが行うことができるようになった。

  • 回帰学習機の追加などにより、MATLABが活躍するシーンはますます拡がりそうだ

さらに、ADASのアルゴリズム、開発環境、可視化ツール、テスト実行検証環境などを提供する「Automated Driving System Toolbox」を新製品に追加。同製品ではレーダーやビジョンなどのセンサからの出力をトラッキングし、自車の周りで何が起こっているのかを解析することが可能だ。

最後に宅島氏は「MATLAB/Simulinkの最新版では、企業のAutonomous Anythingを支えるさまざまな機能強化を行っています。うまく活用して取り組みを加速させてください」と述べ、講演を締めくくった。

基調講演後は、テーマごとに分かれた多数のセッションや展示が行われた。参加者は自由に会場を出入りしながら、自社の取り組みに生かそうと熱心に聴き入っていた。

  • MATLAB EXPO 2017 当日の講演資料を、こちらからダウンロードいただけます。本稿で紹介した講演以外にも、ユーザー企業の事例発表など、注目のプレゼンテーションが多く紹介されています。ぜひ 当日の講演資料をダウンロードください。

[PR]提供:MathWorks Japan