NASといえば「LANにつないで使う補助記憶装置」、記憶容量とファイル転送速度が製品として重要なポイントであることは確かである。しかし、スマートフォン/タブレットの使用時間がPCのそれを上回る現在、"大きさと速さ"だけでは足りない。場所を選ばず多様な機能を提供する"柔軟さ"も必要だ。

そのうえ個人ユーザ向けのNASとなると、より多くの要素を求められる。セットアップが容易でわかりやすいGUIを備え、PCはもちろんスマートフォン/タブレットでも使いやすく、外出先からファイルにアクセスできる……。家のどこに置いてもジャマにならないサイズ感と静粛性が求められる。また、価格と性能のバランス、つまり"コストパフォーマンス"も重要だ。

Synologyの「DiskStation DS216j」、これらのポイントをうまく押さえたNASだといえる。独自開発のNAS用OS「DiskStation Manager(DSM)」を採用し、PCやスマートフォンのWEBブラウザからわかりやすいGUIで操作できる。CPUには32bit デュアルコア/1GHzの「Marvell Armada 385」と512MBのメモリを搭載するから、動作は軽快。HDDを格納する領域(ベイ)は2基用意され、3.5インチまたは2.5インチのSATAドライブを最大2基、1基につき8TBまでの最大16TBを搭載可能というキャパシティーも人気の理由だ。

その後継機となるのが、先日発売したばかりの「DiskStation DS218j」。引き続き、DSMを採用することでユーザインタフェースの一貫性を維持しつつ、CPUのMarvell Armada 385をデュアルコア/1.3GHzへと14%のパワーアップ。シーケンシャル読み込みは113MB/秒、同書き込みは112MB/秒と、DS216j(読み込みは112MB/秒、書き込みは96MB/秒)から改善されている。最大24TB(※)に増えたストレージ容量は、NAS入門機としては必要にして十分な量だろう。※シングルボリュームは最大16TB。

SoCの高速化などパフォーマンスが向上したNAS入門機「DS218j」

CPUの性能向上は、RAID構築にもプラスに作用する。2基のストレージを独立して管理するシングルモードはもちろんのこと、2基以上のストレージを組み合わせ、アクセス速度を高める「RAID 0(ストライピング)」、同じデータを複数のストレージに書き込むことで一方のディスクが故障しても他方で処理を続行できる「RAID 1(ミラーリング)」をサポートするから、本格的なNASとしての利用も狙える。

背面に設置された92×92mmのファンは、最高速度/冷却/低ノイズ/低電源モードの4モード で動作し、よほど負荷をかけないかぎり静粛性は高い

「DiskStation Manager(DSM)」にWebブラウザからアクセスし、各種設定やアプリの追加を行う

「キットタイプのNAS」だからできること

「DS218j」は、「キットタイプ」に分類されるNASだ。市販のNASには、HDDやSSDといったストレージがあらかじめ組み込まれ、ネットワークに接続するだけで利用可能になる「完成品タイプ」も存在するが、用途に応じてストレージを選択でき、容量もユーザの裁量で決定できるキットタイプのほうが自分好みのNASに仕上げられる。当面はHDD1基で利用するが将来はRAIDに挑戦してみたい、余分なHDDを再利用することで安くあげたい、という場合にはキットタイプがいい。

ストレージ選びが不安なユーザには、試験済モデルのデータベース「Synology製品互換リスト」が用意されている(そのWebページはこちら) 。そこで製品モデル名に「DS218j」を、カテゴリに「HDD/SSD」を選択して「デバイスの発見」ボタンをクリックすればOKだ。試しに、ウェスタンデジタルのNAS向け3.5インチHDD「WD10EFRX」を検索してみたところ、掲載を確認できた。「DS218j」の場合、3.5/2.5インチSATA HDDと2.5インチSATA SSDに互換性を持つが、ドライブのモデル名まで確認できればより安心だ。

動作確認済のHDD/SSDは、SynologyのWebサイトで確認できる

HDD/SSDの装着はかんたんそのもの。3.5インチHDDの場合、ベイにスライドさせる形でコネクタ部を押し込み、両側面4箇所をプラスドライバでネジ止めすればOK。所用時間は2~3分といったところで、あっけないほどだ。

3.5インチHDDの場合、ベイにスライドさせる形でコネクタ部を押し込み、両側面4箇所をプラスドライバでネジ止めすればOK