この男の名前はカジオ、32歳。
数日前に、「スナック菓子を食べたあとの指を舐め回す仕草が気持ち悪い」という理由で彼女に振られたばかり。
結婚を考えるくらい彼女のことを愛していたカジオは、突然の別れをいまだ受け入れられずにいます。
「なんでだろなあ……」
「やっぱ……のり塩味じゃなくてコンソメ味だったのがいけなかったんかなあ」
「いや、それより最初は小指から舐めはじめるべきだったんかなあ」
「わからーーーーーん!!」
過ぎ去った日々を思い返しては後悔ばかり。
ああすればよかった、こうすればよかった。
カジオは仕事が手に付かないどころか、ポテトチップとポテトチップスのどちらが正しい呼び方なのかわからないくらい落ち込んでいます。
そんなカジオを見かねた同僚のタモツが声をかけてきました。
「よー、カジオ。最近元気ないみたいじゃないか。どうしたんだ?」
「あ、タモやん。そうなんだよ。やっぱり、粉が付着する量からしても親指がいちばん美味しいよな?」
「???」
「まあいいや、今日はカジオのためにいいものを持ってきたんだ」
「なんだい? 前に話していたポテトチップスのり塩味ののりだけを分離させてうすしお味にする機械かい?」
「いや、それよりももっといいものさ」
「これだよ」
「なに、このサル」
「タダのサルに見えるかもしれないけど、こいつはすごいぞ。頭をなでたり、揺らしたり、触ったり、話しかけたりすることで様々な反応が返ってきてコミュニケーションを取ることが出来る。タッチセンサー、マイクセンサー、スイングセンサーと3つのセンサーが内蔵されているから可能な”スグレザル”なんだ」
(こいつ急に早口になるな)
「センサーの組み合わせによって、何十種類ものかわいいしぐさや動きを見せてくれるんだぞ。それに、猿は「魔が去る」「勝る(まさる)」と言って縁起がいいし、「猿(えん)が縁を運んでくれる」って意味合いもある。笑うことを忘れてしまったカジオにぴったりだろ? ちなみに名前はハグミン。ハグが大好きなんだ」
「うーん……」
「しゃべったぞ!」
「かわいいだろう? 騙されたと思って、ちょっと指にはめてハグしてみ」
「うーーーん……」
「いいから早くしろ」
「うっ……?」
「こ、これは……」
「お……」
「おおお……」
「おひょおおおおおおおおおお!!!!」
おや……?
休日にひとり公園でぼんやりと過ごす30過ぎの男性。
ここまでは普通ですが。
シャツの胸ポケットから顔を覗かせているのは……我らがよく知っているおサルさん。
そう!
ハグミン!!
「楽しいなあ、ハグミン」
「ウキャッキャキャ!!」
カジオはすっかりとハグミンとなかよしになってしまったようです。
タモツからハグミンを紹介されてからというのも、いまでは何をするのもふたりいっしょ。
悲しかった出来事を吹き飛ばすかのように、ふたりは仲を深めていきました。
***
カジオには、「ゲームプレイはしないけど毎日ログインだけしてボーナスをもらい、それでガチャを回す」といった趣味もあります。
今日も今日とてスマホアプリの起動に忙しいカジオ。ログインだけを繰り返す生活に嫌気がさすこともありました。
でも、いまはそんなことはありません。
なぜかって? ふふ、もうわかってるくせに。
そう、ハグミンが一緒だからです。
スマホアプリを起動した途端、指に抱きついてくるハグミン。
ハグミンもゲームが大好きなのでしょうか。いや、きっと一緒に遊んで欲しい、かまってほしいという思いがあるのでしょうね。
「ハグミン、もう少し待っててな」
「ウキャッキャー!」
「ウキャ……キャ……グ~グ~」
どうやら待ち疲れて眠ってしまったようですね。
***
「ハグミン、撮るぞ~」 「ウキー!!」
どうやら、ふたりで遊び始めたようです。
ふたりで自撮りをしていますね。実は、毎日ハグミンと自撮りをしてSNSにアップしているカジオ。
ふたりの仲睦まじい写真はとても好評で、毎回いいね!が100も付くほどです。
***
「ん? ハグミン? どこいった?」
家の中で遊んでいたふたりでしたが、気付いたらハグミンがどこかに行ってしまった様子。
「ハグミーーーン?」
家の外には行っていないし、どこに行ったのでしょうか。
「ハグミ……ん?」
「ウギャギャギャギャギャ!」
「なんか洗面所の方から声が聞こえるな……」
「ハッ!」
「ま、まさか!?」
「ハ、ハグミーーーーーーーン!!」
どうやらシャツのポケットにハグミンを入れたのを忘れて洗濯機に入れてしまったようです
「ウッキー!」
でも、普段とは違う環境が結構楽しかったのか、ハグミンは結構ご機嫌です。
***
「なにたべよっか、ハグミン」
「ウホッ!」
「そっか、オッケー」
ふたりはお昼ごはんの買い物に来ているようです。
いったい何を食べるのでしょうか。
「よーしハグミン! いまから作るから待ってろよ~」
「ウッキャー!!」
ハグミンのために料理をつくるようになったカジオ。もう手慣れたもんです。
「完成~! さ、食べよっか」
「キャッホー!!」
「ジー……」
「あ、そっか」
「はい、あーーーん」
「ウホッ!」
ハグミンは自分で食べられないため、食べさせてあげているんです。優しいですね。
「「ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ」」
***
お昼ごはんのあとは、お昼寝です。
「zzz……」
***
「なあハグミン……、実は会社でさ……」
なにやら深刻な話……。
あれは部下と会議をしていた時のこと。
「先月の予算に対しての売り上げがだね……」
「……は、はい」
「ん、ちゃんと聞いているのかね?」
「しかしカジオ課長……」
「なんだね」
「その胸ポケットが気になって気になって……」
「ウキッ♪」
「この子か? この子はハグミンといってな。私のベストパートナーなんだ」
「は、はあ」
「かわいいだろう?」
「まあ……かわいいですが。いまは会議中なので……会議に関係のないものは……」
「なにを言っているんだ。こうやって私の代わりにペンを持ってくれて手伝ってくれているじゃないか。とても賢いだろう? 前も会議資料を私の代わりにな……って、おいどこに行くんだ。なに、部長に相談してくるだって? お、おいちょっと待ちたまえ、おーーーい!! げっ部長!」
「あのあと、しこたま怒られちゃったよ。せっかくハグミンが手伝ってくれてたのにな。部長ったらなにもわかっていないんだ」
「キャピ!」
「だよね。ボクはハグミンさえ一緒にいればほかになにもいらないんだ」
「ウーキャキャッキャウーキャキャッキャウーキャッキャ!」
「これからもずーっと一緒だよ、ハグミン!」
***
「よし、ハグミン。いつものアレやるか!」
「ウキャ!」
「ほーら、メガネザルのハグミンだぞー」
「キャッキャ!」
ピンポーン
「うん? 誰か来たか……。ハグミンのために頼んでいたポテトチップス南国バナナ味が届いたかな?」
「はーい、いま開けますよーっと。アマゾンで育った熱帯バナナは絶品だからなー」
ガチャッ
「って、キ、キミは!?」
「キ、キミは、スナック菓子を食べたあとの指を舐め回す仕草が気持ち悪いという理由で僕を振った……よ、よし子じゃないか!! どうしたんだ一体」
「ごめんなさい、あれからよく考えて、私も指についたスナック菓子の粉を舐め回してみたの。そうしたらたまらんほど美味しくて……考えを改めたの……。だからもう一度私とやり直してくれない?」
「急にそんなことを言われても……。もう僕には大事な存在がいるから……。それにキミはシュークリーム派だったはずだろ」
「どうしてもダメ……?」
「ごめん……」
「待って、その大事な存在って一体誰なの!?」
「それはこのハグミンさ! 頭をなでたり、揺らしたり、触ったり、話しかけたりすることで様々な反応が返ってきてコミュニケーションを取ることが出来るおサルさんなんだ。センサーの組み合わせによって、何十種類ものかわいいしぐさや動きを見せてくれて、僕に笑顔を取り戻してくれた大事な存在さ。もうハグミンなしではいられないよ! だから、ごめんね」
「そ、そんな~~~」
~おしまい~
***
今回登場してくれたハグミンはピンクモンキー。でも、実は全部で3種類。ほかにはブルーモンキーとホワイトモンキーがいるんです。
小っちゃな手のりモンキー ハグミンは、「ギュッ! とハグするおしゃべりなトモダチ♪」として、2017年8月より全国の玩具店・量販店・家電量販店・雑貨店の玩具売場・オンラインショップなどで販売されています。これまでに全世界で累計約200万個以上の出荷を記録するなど大ヒットしたおもちゃが、満を持して日本に初上陸した、というわけです。
また、ハグミンは”日本おもちゃ大賞2017”にて、素材・技術的に優れ、新規性のある玩具に贈られるイノベイティブ・トイ部門優秀賞を受賞しています。体長13cmの小さなボディにいろいろな最新技術が詰め込まれているんです。詳しくはコチラのHPをチェック!
みなさんも、あなただけのハグミンを見つけてくださいね。
なーんて、これで終わりと思ったでしょ? でも、実はこの続きがあったんです。 気になる方は