新色マットブラックの質感はいかに?

BIG BANG BLACKでは、G-SHOCKを象徴するカラーである黒を進化させた、新色のマットブラックを採用した。これは、粒子を塗料に混ぜ込む塗装技術により、光沢感を抑えた"吸い込まれるような"黒を出しているのだという。

その過程について泉氏に伺ったところ、「表面の粒子の凹凸により光が乱反射することで、色が落ち着いて見えるようになっています。そのため、粒子の濃度・量の違いによってマット感が出なくなるので、そのバランスをとるのが難しかったですね」と苦労を語った。

左が今作モデル。右の従来モデルの黒とは明らかに質感が異なるマットブラックとなっているのがわかるだろう。編集Hは、間近で眺めながら「ガトーショコラのようですね」と感想を漏らし、担当者を笑わせていた

この新たな塗装技術については、3年前から議論されてきたという。「黒を進化させるべく、まずは採算を度外視して、現行の技術で一番暗い"黒"をどうやったら表現できるか試行錯誤しました」と小島氏。そうして完成させたサンプルは、黒の深さ、質感が社内でも好評だった。

しかし、そこからさらに製品化をするには容易な話ではなかった。G-SHOCKとしての品質を保つために、耐衝撃性はもちろん、耐低温、耐湿、耐摩耗性など、非常に厳しい評価基準をクリアしなければならないからだ。

目標としていた"黒"を表現するため、数知れず制作したサンプルの中の一つ

化学工業メーカーと協力し、数知れないやりとりを重ね、塗料の粒子の大きさ、配分量などを調整していった。「カラー、マテリアル、フィニッシュ(仕上げ)というCMF調査を3年続けました」と小島氏は振り返る。

検収サンプル。常温折り曲げ、低温、耐湿、摩耗といった試験が幾度となく繰り返された

バンドの耐摩耗試験サンプル。この写真では漆黒塗装、艶有りブラック塗装、高輝度塗装で試したことが分かる

バンドサンプル。この段階ではまだ、折り曲げると白い線が残ってしまうなどの課題が克服できていなかった

黒を進化させるとどんな質感が実現できるのか、そんな発想から始まった新色の開発はトライ&エラーの繰り返しだった。まさに、各部署が連携したからこそ実現できたと言える。そんな苦労の末に完成させたマットブラックは、開発担当者のおふたりにとっても、我が子のようなものだと話す。