日本とほぼ同じ面積を持つ国がアフリカ大陸にある。中部アフリカに位置する、コンゴ共和国。その首都、ブラザビル郊外にある「バコンゴ地区」のメインストリートには、週末になると色鮮やかなハイブランドのスーツに身を包んだ紳士たちをよくみかけるのだという。

その人たちこそ、“SAPEUR(サプール)”だ。

「SAPEUR(サプール)」とは、SAPE(サップ)=「エレガントな人々」(Société des Ambianceurs et des Personnes Élégantes)のこと。コンゴがフランス占領下にあった約90年前、仏軍に従軍したコンゴの兵士がそのファッションに感化されて自国で取り入れたのが起源とされている。収入の大半をファッションに費やし、高いファッションセンスを誇る彼らのスタイルは今、世界中のデザイナーが注目している。今回はこの秋、大丸・松坂屋でサプールの写真展が開催されることを機に来日された、サプール歴46年、サプールの代表的な存在でもあるムイエンゴ・ダニエル(セヴラン)さんにお話しを伺った。

会議室だったはずの会場はセヴランさんにカメラを向けると、あっという間にステージに

コンゴ共和国は世界最貧国のひとつだ。バコンゴ地区の人々の多くは農業や木材などで生計を立てており、サプールの彼らはそのほとんどの時間を「服を買うため」の労働に費やしているというから驚きだ。セヴランさんはコンゴではサプール達から圧倒的な支持を受け慕われている大サプールのひとり。

――サプールのスタイルというものついて、教えてください。

ファッションに取り入れるのは3つの色まで、というのがサプールのスタイルの基本中の基本だけれどもっとざっくり簡単にいうと「いいかっこする」ということだね(笑)。人と違うこと、教養のあること、暴力を使わず目立つこと。そのためにも周りの人に興味を持つ、ということかな。

――今日のファッションのポイントは?

今日は「おもてなし」の気持ちを表現したかったので、日本人が和装で着るような花柄でチャーミングなピンクのスーツを選んだんだ。日本に来て、この国のフラワーテキスタイルに非常に感銘を受けた。着物自体もすごく素敵だなと思ったしね。

そもそもサプールのコーディネートというと、色はカラフルで無地のものが基本。だけど、そういったルールを超えて、世界中から新しいものを吸収してクリエイションしていく。そう、柔軟に取り入れていくのもこれからは重要になってくるスタイルのひとつだと思うんだ。

――SAPEUR(サプール)になるための条件はどういったものなのでしょうか。

穏やかな物腰と、紳士的な笑顔はまさにサプールの流儀そのもの。服は主にフランスやイタリアから仕入れているそう

一番大事なのはファッションやアートを愛する心かな。周りにファッションのコツを教えてくれる人さえいれば、訓練を積むことで誰でもサプールになれる。僕の場合、色合わせの基本的なポイントなどは父が教えてくれて、僕自身も自分の息子にそれを伝えているよ。

サプールは化学技術みたいに発展していくもの。ファッションアドバイザーとして一つの職業でもあるので、自分だけでなく周りにも教え伝えることがサプールを普及していくにあたっても重要なんだ。大統領のファッションコーディネートをしているサプールもいるし、皆さんもそういうところからファッションを学んでいくのもいいんじゃないかな。


――日本に来て、何か気に入ったアイテムはありましたか?

昨日、大丸で見たステッキがすごく良かったよ。これを母国で使ったらすごく目立ってカッコイイと思う。中にパラソルが入っていて傘にもなるデザインは初めてみたのであれが欲しいね。

だってみんなと一緒じゃつまらないだろ?特別なものがいつだってサプールには魅力的なんだ。もちろん今回、大丸東京店で仕立ててもらったプライベートブランドの「トロージャン」は身体にきちんとフィットした洗練されたデザインで素晴らしかったね。帰ったらサプールのみんなにも宣伝しておくよ(笑)!そのほかだとTAKEO KIKUCHI(タケオ・キクチ)やYohji Yamamoto(ヨウジ・ヤマモト)もカットが美しくトレビアン。このふたつはコンゴでもとても人気のあるブランドで、着ているとみんな褒めてくれるよ。

最近は着物の生地を使ったスーツもあるという話をしたところ「知らなかった!それはすごくいいね!とぱあっと笑顔になった

――日本でファッションを楽しんでいる人に、何かアドバイスをお願いします。

サプール同士でも互いのファッションチェックは欠かさないそうで、「これはイケてない、すぐに着替えろ」なんてダメ出しすることも

取り入れやすいコーディネートとしてはスーツが黒でシャツが白なら、ネクタイは赤系が基本。そこに付け加えて帽子、ハンカチなどの小物を合わせるんだけど、2つずつ同じ色にするといい。

たとえば白いシャツに合わせて帽子も白にするとか、ネクタイの赤にあわせて靴下を赤にするとか。そういうルールが一番簡単で、取り入れやすいかと思うよ。

日本人のスタイルは綺麗なんだけど、みんなどれも似ている印象があるね。たとえばアクセサリーを取りいれたり、色合わせに人と違うひと工夫を加えた方がよりかっこよくなるし、目立った方が自分らしさを表現できるじゃない(笑)。

僕にとって服というのは麻薬のようなもので、着ると気持ちがグッと盛り上がるのを感じるよ!サプールの格好をしていると空を飛んでいるような気持ちになってみんなが小さく見えるんだ。日本の人も僕みたいに服を選ぶことでワクワクできるようになってほしいね(笑)。

――ありがとうございました。

実は靴下も花柄!大人の可愛らしさを感じさせるテク満載だ

セヴランさんによれば日本人は黒とか紺とか濃い色の2色でコーディネートしている人が多いとのこと。濃い色に合わせて鮮やかなもう1色を足すことから始めればグッと華やかになるそうだ。ビジネスでスーツを着こなす際も、それが頑張りすぎない色味であってもサプールのテクニックを取り入れてお洒落を楽しめるということが分かった。

インタビュー後半で伺ったが、セヴランさんは寝る時以外はずっと、スーツで過ごしているそう。朝ごはんを食べたらすぐにスーツに着替え、もちろん飛行機での長距離移動中もスーツだ。

「僕の本名は「ムイエンゴ・ダニエル」というんだけど「ムイエンゴ」とは「いつも綺麗でいる奴」という意味なんだよ。僕自身も清潔感を大切にしているし、それを褒められるととっても嬉しいよ」という。

今回は1週間の短い滞在だそうだが、セヴランさんが来日のために持って着たジャケットは全部で9着。もちろんそれぞれに合わせてコーディネートされたシャツや小物なども9着分ということになる。

「同じものを2日続けて着るのは嫌だし、1日のうちでも着替えたりするし、ほら、何かあった時のためにも多めにね!」といたずらっぽく微笑む様子からは 大人の遊びゴコロが感じられた。

サプールの着こなしテク、ご理解いただけただろうか。とはいえ、すぐに実践するとなると………。というのがファッションの難しいところ。9月13日~26日の間、大丸・松坂屋の各店でサプールの着こなしをヒントにした「MENS FASHON WEEKS」が開催される。同イベントでは、SAPEUR(サプール)の着こなしを踏襲したファッションをそれぞれの店舗で紹介するキャンペーンを実施中。是非、この機会に足を運んでサプールのエスプリを実際に感じてみてほしい。

サプール写真展~平和をまとった紳士たち~
■9月7日(木)~18日(月・祝)大丸 心斎橋店
■9月13日(水)~25日(月)松坂屋 名古屋店
■9月28日(木)~10月10日(火)大丸 東京店
■10月18日(水)~30日(月)大丸 札幌店
マイナビニュースでは、同写真展のチケットが当たる読者プレゼント企画を展開中。是非、応募してほしい
サプールが大丸・松坂屋にやって来た! MENS FASHON WEEKS
9月13日(水)~26日(火)※東京店のみ、9月27日(水)~10月10日(火)
大丸・松坂屋各店、紳士服売場にて開催(※松坂屋上野店、静岡店は除く)

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