2017年7月21日、グランフロント大阪において、マイナビニュース主催のビジネスセミナー「マイナビニュースフォーラム2017 Summer ~あらゆるデータの収集・連携・活用を考える~」が開催された。当日は、ビジネスにおける喫緊の課題「データ活用」に関する7つの講演が行われた。本稿ではその中から、IoTやビッグデータの活用について先進的な事例紹介を行った、Cloudera 製造業界セールスマネージャーの瀧久 寛之氏による講演「先行活用事例から学ぶIoT/ビッグデータの始め方」を紹介する。

そもそも何のためにデータを活用するのか

Clouderaは、2008年に米・パロアルトで創業されたITベンチャー企業である。同社は、ビッグデータを扱うプラットフォームとソフトの提供および、その活用サポートなどのサービスを提供している。世界28カ国で事業を展開するグローバル企業であり、2017年5月にはニューヨーク証券取引所に上場した。

Cloudera 製造業界セールスマネージャー 瀧久 寛之氏

瀧久氏は、同社のミッション「お客様がデータから価値を生み出す支援をすること」の説明から話をはじめた。ここ数年、ビッグデータという言葉がひとり歩きし、とにかくデータを大量に集めれば自動的に「何か」ができる。そんな誤解があるのではないかと、瀧久氏は指摘する。

「データさえあれば、AIが勝手に何らかのソリューションを提供してくれる。これはおおいなる幻想です。大切なのは、まず目的を明確にすること。要するに、何のためにデータを活用するのか。この勘所を押さえていないために失敗するケースが多々あります」

よくある失敗例として挙げられたのが、次の3パターンだ。第1が、当初から動向調査に終始して、いつまで経ってもデータ活用がはじまらないケース。第2が、はじめてはみたものの、すぐに成果が出ないからとやめてしまうケース。第3が、社内に分析の知識・経験を持つ人材が少ないので、外部に依頼するケースである。

こうした失敗を防ぐには、まずデータ活用の目的を明らかにしたうえで、分析課題と分析に必要なデータを決めることだ。そのうえで分析手法やシステムを設計し、分析した結果をただちにビジネスの現場で行動に移す。一連のプロセスを進めるのに欠かせないのが、現場における業務知識であり、現場での実際の行動である。行動結果を検証し、次の課題を引き出すサイクルを回すことも忘れてはならない。

データをビジネスに活用する際は、まずビジネス課題の設定を行い、そのうえで必要なデータや分析方法の検討を行う必要がある

Clouderaは、データから価値を生み出すための4つのポイントを、常に顧客に訴求している。まずは、データを使って実現したいことや解決したい課題を洗い出すこと。次に、可能な限り今あるデータを活用すること。とにかく自分たちで手を動かしてみること。そしてその成果として小さな成功体験を積み重ねていくことだ。

データ民主化のススメ

データさえあれば何とかなる、あるいは何でもできる。そんな安易な考え方がはびこる背景には、データ量の爆発的な増加がある。IoTの普及がデータの増大をもたらし、クラウドの普及とハードウェアの低コスト化が相まって、大量のデータ処理を気軽に行えるようになった。そのため、とにかくデータさえあればなんとかなると考えてしまう。

そうしたデータにもとづき、なんとかしてくれる"スーパーマン"として注目を集めているのが、データサイエンティストである。統計学についての深い知識をベースに、コンピュータサイエンスとビジネスにも深い造詣を持つデータサイエンティストさえいれば、ビッグデータを縦横無尽に駆使し、ビジネス上の課題を解決するアイデアが立ちどころに出てくる……、などと期待されるが、それは非現実的な考えである。

確かにデータサイエンティストは注目され出しているが、スーパーマンのような能力を備えた人物はごくわずかで、激しい争奪戦が起こっている。そのため現実問題としては、社内の様々な部署のスタッフが役割分担しつつ、力を合わせて連携しなければならない。

そのためには、まずデータを一箇所に集める必要がある。各種データが社内に分散しているようでは、行動を起こすことができないからだ。データを一元化して初めて、全データを効率よく組み合わせて活用でき、またデータ管理も規律正しく行える。こういった作業を瀧久氏は「データの民主化」と表現する。

こうして民主化されたデータ、すなわちビッグデータのプラットフォームを提供するのが、Clouderaのサービスである。具体的には、データの蓄積、加工・成形処理、分散処理、機械学習などを行い、BI/BAツールやオープンデータサイエンスツールで使いやすいデータに加工するのだ。

Clouderaのソリューションは様々な外部サービスとも連携可能だ

あらゆる業界で進行するデータ活用

Clouderaのサービスは、金融・保険、政府機関、製造業からエネルギー関連、さらに医療・ヘルスケアなどあらゆる業界をカバーしている。

たとえば水力発電ステーションでは、タービンの予知保全に活用されている。タービン運転時のノイズ情報を収集・分析することで、タービンの異常を検知する。目的はダウンタイムとコストの削減だ。タービンの異常が音でわかるというのは、現場の知見を活かしたソリューションである。

メーカーでの予知保全として、工場内の数千台の製造機器のいたるところにセンサーを付け、問題発生前の予兆をつかみ、修正するシステムも稼働している。これは製造システムのパフォーマンスをリアルタイムに監視し、効率向上を図るのが目的だ。

こうしたBtoB分野での導入だけでなく、BtoCの現場でもあらゆる顧客データを用いた"360度顧客分析"などに活用されている。オムニチャネル・マーケティングを展開する小売業では、リアル店舗でのPOSデータからWebページでの閲覧遷移、オンライン注文、ソーシャルメディアなどの全データを一顧客ごとに横串で集約し、統合・分析している。オンラインでの行動把握においては、一度カートに入れながら最終的に除外した商品の理由分析にも取り組んでいる。オムニチャネル展開企業にとっては、チャネルごとの施策とそれに伴う売上・利益を分析することで、投資計画を最適化できるのだ。

様々な業界でのデータ活⽤事例

これらは海外企業での事例だが、国内企業でも精密機器メーカー工場での生産性向上のための取り組みや通信事業者でのサイバーセキュリティを高める取り組み、EC系企業においてレコメンデーション精緻化を行った取り組みなどが紹介された。

またClouderaならではのサービスとして紹介されたのが、世界中の顧客から定期的に診断データを受領・分析することで、障害発生を予測し、未然に防止する取り組みだ。データ活用のために必要なのは「第1に、データを使って解決したい課題を明確にすること、第2に、多くの人を巻き込んでデータ活用サイクルを回せる体制を作ること、第3が、眠っているデータの発掘とデータの民主化を進めること、第4が、実験と小さな成功体験を積み重ねること」と再度強調して、瀧久氏は講演を締めくくった。

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