近年、多くの企業が「働き方改革」への取り組みを進めている。うまくいっている企業もあるが、大半の企業はまだ、どのような施策が必要か頭を悩ませている状況ではないだろうか? こうした悩みの解消に向けたヒントを提示すべく、ネオジャパンは7月、新しい時代の働き方を考え、提案するイベント「desknet's WORK SHIFT SESSION 2017」を開催。平日午後という時間帯にも関わらず、当日、会場にはおよそ700名もの多くのビジネスパーソンが来場し、注目度の高さが伺えた。「生きること」という大きなテーマを掲げた講演からスタートし、そこから働くこと、そして業務効率にまでブレイクダウンされた同イベントについて、本稿では当日の内容を紹介する。

desknet's WORK SHIFT SESSION 2017イベント会場入り口

冒険家はいかに困難を突破してきたのか、と題して2名の有名冒険家が語る

「生きることについて考える」が大テーマに掲げられた最初の講演。登壇したのは、海洋冒険家の白石康次郎氏(以降、白石氏)とアルピニストの野口健氏(以降、野口氏)だ。両氏とも日本を代表する冒険家であり、世界を舞台に多大な実績を重ねてきた経歴を持っている。

白石氏は太平洋単独横断を皮切りに、単独無寄港世界一周を成功させるなど、海を舞台としたチャレンジで多くの人々に夢と希望を与えてきた。野口氏は、学生時代に樹立した七大陸最高峰の最年少登頂に成功するという偉業を成し遂げたことをはじめ、世界中の山々と対峙。また2000年からは、富士山の清掃活動を始めるなど、環境保護の取り組みも積極的に進めてきたことで知られている。

二人は古くから顔見知りで、冒険における様々な局面について語り合う仲だったという。海と山。フィールドの違いこそあれ世界を舞台に冒険を繰り広げてきた両氏のトークに、会場は引き込まれる

冒険とビジネスの共通項から得られるもの

冒険というと、一見ビジネスとは関係のない話だと思われがちだが、両氏の話からは意外な共通項を見出すことができた。その1つが、「いかにして挑戦を生み出すか」だ。同セッションの中で繰り広げられた3つのテーマのトークから、この共通項を紐解いていきたい。

冒険家は、冒険にかかるお金を自分で稼いでいる

セッションの中ではまず「冒険にかかる費用をどう調達しているのか?」「昔と今とで資金調達の方法に変化があるのか?」というテーマが出されたが、そこから現在の社会問題に発展していったやり取りが、非常に興味深い。両氏ともに、若い頃はがむしゃらになって協賛企業への交渉を行って資金を調達して冒険に挑戦したという。こうしたがむしゃらさ、挑戦する意思が今の若い人材には少ないことに触れながら、両氏はその原因として、「失敗を許さず、"成功に結びつく挑戦"ばかりを求める大人」の存在があることを指摘。これが結果として「成功するもの以外取り組まない」という保守的な考えを生み出しているというのだ。

これは個人だけでなく、組織に置き換えても同様だろう。市況の変化がめまぐるしい今日、「既存の枠組みを変える」「新しいことをはじめる」といった挑戦を経営方針に掲げる企業は多い。こうした方針で本来とがめるべきは「挑戦しないこと」だが、企業の多くは「失敗」をとがめる傾向が強いといえよう。これを見守る姿勢がなければ、挑戦自体が生まれにくいのである。

冒険や挑戦は、どうすれば成功できる

また、続いてのテーマである「どうすれば成功できるか?」では、挑戦する側が持つべきスタンスに関するトークが繰り広げられた。自らの経験にもとづいた白石氏、野口氏の話からは、たとえ失敗が見守られる環境だったとしても、挑戦する側は「失敗してもいい」という考えで取り組みを進めるべきではない、全力で臨んだ上での失敗でないと何も学べないし成功にも結びつかないということが伺えた。

冒険家は、不屈の精神・折れない心を持っている?

しかし、失敗が許される環境とはいっても、人や組織はどうしても失敗を恐れるものだ。トークセッションの終盤では、「失敗するのは怖くないのか?」をテーマに、両氏の考えが繰り広げられた。一般に冒険家というと不屈の精神・折れない心を持っている印象があるが、冒険という「死に至る可能性」を内包するものであるために冒険家も同様に失敗を恐れるという話を両氏は展開。その上で、いかにして失敗から即座に立ち直るかが重要であり、心に火を灯し続けることを意識せねばならないと語った。

自らの冒険の話を交えた白石氏(左)と野口氏(右)のトークでは、ビジネスの視点でも有用な情報が数多く繰り広げられた

以降も、失敗と成功を重ねてきたから両氏だからこそ出てくる冒険譚や人生論は尽きることなく、会場を大いに沸かせて最初のセッションは終幕した。両氏は、たとえ落ち込んだ際でも無理やりにでも笑顔を作ることを心がけているという。失敗しても自分を信じてくれる人に対して笑顔を作る。容易なことではないが、これこそが「全力で臨んだ」結果の失敗を糧に「成功に向けた挑戦」を行う姿勢の表れだといえるだろう。失敗を重ねても、白石氏と野口氏のチャレンジを応援する企業や人が絶えない理由の一つはここにあるのだ。「生きることについて考える」をテーマとしたセッションだったが、両氏の話からは、挑戦を生み出す、そしてその挑戦を成功に導くという、ビジネスにおいても重要となる考え方を学ぶことができた。

経済入門書作家と経営者が、「働くこと」について考える

続いて壇上に現れたのは経済入門書作家の木暮太一氏(以降、木暮氏)と、ライフネット生命保険でマーケティング業務、特に広告関連の業務に従事する肥田康宏氏(以降、肥田氏)だ。

「あの企業は、なぜ『働き方改革』を可能にしたのか?」をタイトルに、ワイドショーのコメンテーターも務める木暮氏のリードでトークがスタート。木暮氏は会社経営を続ける中、ネオジャパンが主導する「めんどくさい研究所」の運営もサポート。職場のめんどくさいを明らかにしてどう改善するかを議論するオフラインミーティングへの参加や、特別研究員としてアドバイスするといった活動もしている。

参考記事:
ひとりで始める働き方改革 - 「めんどくさい研究所」が日本を変える?

木暮氏は冒頭で「働き方改革でみなさん(従業員)が期待する事項について、3つに分類できると思っています」と語る。その3つとは、「給料を上げたい」「労働時間を減らしたい」「嫌な仕事をしたくない」だという。

様々な企業文化を経験してきた木暮氏ならでは視点で「働き方改革」を分析。氏の意見に思わずうなずく聴講者が多かった

「働き方改革によって生産性を上げることは、従業員にとっては残業が減ってその分の給料が減るということになります」と、木暮氏は統計結果を示しながら説明する。これは先の分類にあった「給料を上げたい」という従業員の期待と逆行しており、「働き方改革=仕事環境が良くなる」という従業員にとっての理想が必ずしも叶うわけではないことを示している。

これに対して、従業員として働き方改革を成功させた立場として登場した肥田氏は「しかし、たとえ給料が減ったとして、他の利点も理解した上で納得している従業員もいるのでは」と答える。同氏は続けて、「以前と比較して収入が減少したとしても、その分家族と接する時間が増えるのであればよいと考える従業員もいます」と、自身の例を挙げてこの点を説明する。

会社が目指す働き方改革のビジョンと働き方改革に対する従業員の期待には、往々にしてギャップが存在する。「ビジョンだけを追求するのではなく、トライアンドエラーを重ねてよりよくしていくことが大事」と肥田氏は語り、木暮氏もそこへ頷いた。

自社の話を交えながら働き方改革の現実について説明する肥田氏。自社における男性の育休取得について第一号に名乗りを上げるなど、同氏は一社員として自らも積極的に働き方改革に参加しているという

従業員の賛同を伴ったマインドセットの変革が必要

働き方改革のような新しい取り組みの場合、いかにしてそれを従業員に浸透させるかが課題となるだろう。「そこでは経営者・管理職などリーダーが重要な役割を担うこととなります。リーダーは浸透するまで、何度も従業員に向かって同じことを言い続けねばならないのです」と木暮氏は語る。

企業に新しい文化を根付かせるのは、地道でかつ大変な作業だ。従業員のマインドセットを変えなければいけないわけであり、木暮氏が語ったような継続性は欠かせない要素といえよう。

「リーダーが従業員に対して、失敗を織り込み済みで任せること。そしてゴールをきちんと示し続けることが必要です。働き方改革というと制度的な話に終始しがちですが、実は『マインドセットの変革』こそが本質なのです」(木暮氏)

ただし、そこでは前述したギャップの存在を意識することが求められる。肥田氏は木暮氏の意見に賛同しながら、「働き方改革を考えたときに経営側は全ての課題を一斉に解決しようと動くかと思いますが、課題全てを同時に追わないことが大事です。働き方改革を進める上でどのポイントを大事にしたいか、まず優先順位を定めてそれを上から一つずつ進める。言い続けても浸透しない、従業員側の意向と合致しないという場合には適宜調整してコンセンサスを得る、というプロセスを踏まないと、取り組み全体が失敗に終わる可能性が高いです」と、注意すべき事項を提示した。

その他にも、ライフネット生命保険の様々な施策や木暮氏の経験談を交えて、「働くこと」をテーマとしたセッションは進行した

マインドセットの変革には、トップダウンも然ることながら従業員からの理解も求められる。従業員の「働くこと」に対する挑戦を生み出すためには、継続した働きかけとトライアンドエラーを重ねるという姿勢、そしてトップ、ボトム双方による取り組みが欠かせないといえるだろう。

働き方改革の1つの課題である「業務効率化」を考える – ネオジャパン 山田氏

最後に登壇したのは、主催社でもあるネオジャパンの山田志貴氏(以降、山田氏)だ。同氏は、多くの企業が働き方改革で重視する課題である「業務効率化」をテーマに掲げ、ITによる効率化を提案した。

山田氏は講演の冒頭、企業の多くが基幹業務の効率化に悩んでいると、現状を分析。その上で「こうした基幹業務の大半は、Excelや紙ベースでの情報のやり取りが、非効率を生み出している原因となっています」と語った。

ITを活用した業務効率化をテーマに講演する、山田氏。製造業を例に、メールやExcelで業務を回す問題点を説明した

山田氏はある製造業の一般的な業務の流れを例に挙げて、業務情報の処理や管理、あるいは「見える化」、「見せる化」に多くの手間が発生している状況を解説し、「こうした作業のための労力が、一人ひとりの時間を奪うことになるのです」と説明。一般的にこれを解決するには、専門のシステムを設計・開発するためのIT人材やコストが必要となるが、同氏は「グループウェアを活用することで、IT人材やコストを最適化しながら基幹業務の効率化にもアプローチすることが可能です」と語る。

グループウェアで基幹業務をシステム化

様々なドキュメントや情報が共有できるグループウェア。情報共有の水準や業務効率の向上を目的に広く利用されている。中でもネオジャパンが提供している「desknet's NEO」は、利便性が高いグループウェアとして高い評価を得る製品だ。

「2017年秋には、カスタムメイド型の社内システムが簡単に構築できる『AppSuite』を追加します。これによって、基幹業務の効率化へも貢献できるようになりました」と、山田氏は語る。「AppSuite」は、これまでExcelのマクロを組んで作成してきた、台帳をはじめとするドキュメントを、パーツの組み合わせだけでブラウザ上で作成できるツールだ。工程管理、見積発行など、業務別に100程度のテンプレートが用意され、それを活用することで、ユーザーは容易に社内システムを構築することができる。

参考記事:
ネオジャパン、「desknet's NEO」を機能強化できる「AppSuite」

「作成した社内システムはdesknet's NEOと容易に連携できるため、ポータル上に設置することで誰でもこれを利用することができます。もちろん、利用権限の設定も可能です」と山田氏は語る。従来Excelや手作業で進めていた基幹業務をシステム化してグループウェア上に集約することで、IT人材やコストの増加なしに、業務効率を向上するが可能というわけだ。

2017年秋に追加を予定するAppSuiteの概要

desknet's NEO単体でも情報共有や業務改善は大幅に望める。そこに「AppSuite」が追加されることで、基幹業務をもカバーする部門横断的なITシステムとなることが期待される。現状で基幹業務のIT化が進んでいない、あるいは業務効率化にITを活用したいと考えている企業にとっては大きな朗報といえるだろう。

グループウェアに基幹システムを集約することにより、情報の見える化、見せる化も容易になる

山田氏のプレゼンテーションを最後に「desknet's WORK SHIFT SESSION 2017」は閉幕となった。多くの企業が課題としているテーマ「働き方改革」を掲げ、多彩なゲストも登場した本イベントは、従業員のマインドセットの変革、業務効率化など、多くのヒントを来場者に与えたのではないだろうか。

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