NTTデータでは、ITインフラ構築に関する国内での豊富な経験とノウハウを活かし、成長著しいアジア地域の新興国をはじめ、海外におけるITインフラ構築事業を展開している。中でも大きな実績の一つが、日本の通関システム「NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System:輸出入・港湾関連情報処理システム)」をベースとした、ベトナムとミャンマーでのシステム構築・導入事例だ。

日本の発展とともに
歩み続けるNACCS

日本における国際物流分野の基幹システムとして、重要な役割を果たしているのが、NTTデータが構築・サポートする通関システム「NACCS」だ。NACCSは1978年、成田空港にて通関手続きの処理システムとして稼働を開始し、その後、航空貨物だけでなく海上貨物にも対象を拡大。長い歴史の中で、日本の経済成長やそれに伴うユーザー・ニーズの変化に合わせて更改を行い、最新のIT技術を取り入れながら進化を続けてきた。今や全国の主要な空港や港湾で利用されており、通関手続きだけでなく、貿易にかかわる関係省庁の手続きも含め、24時間365日ワンストップで処理する世界的にも極めて優れたITシステムとなっている。

NACCS利用による大幅な業務の
迅速化・効率化が数字にも明確に

現在、日本の輸出入手続きの約99%がNACCSによって処理されている。そんなNACCSが日本の貿易関連業務に果たしてきた効果は、国が公表するデータからも見て取れる。例えば輸入許可件数(※1)を見ると、1989年は4,875千件なのに対し、2014年には23,521千件と大幅に増加している一方で、輸入通関にかかる所要時間(※2)は、1991年に航空貨物で52.6時間だったのが、2015年時点で12.8時間と大幅に短縮している。また、税関職員数がほとんど横ばいであることからも、NACCSによっていかに業務が効率化されたかがわかる。

(※1) 税関レポート
(※2)財務省 第11回輸入通関手続の所要時間調査

国内での成果と完成度、信頼性の高さから、NACCSは海外での評価も高く、とりわけ急速に発展を遂げる東南アジアをはじめとする新興国にとっては、数多くの課題を克服し日本の高度経済成長を支えてきたシステムであることも大きな魅力となっている。NTTデータでは、経済発展や国際競争力の強化につながる通関手続きのIT化を、NACCSをベースとした海外向け通関システムの構築等により積極的にサポートしている。

本稿では日本の政府開発援助(ODA)無償資金協力案件として、財務省関税局、国際協力機構(JICA)、輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター)と共同で開発・導入のサポートをした、ベトナムとミャンマーの事例を紹介する。

ベトナム当局が日本での実績を高く評価

NACCSをベースとした海外向け通関システムの構築の第一弾となったのが、ベトナムだ。

本プロジェクトの課題と導入効果

お客様の課題 導入効果
輸出入手続きのすべてに紙の書類による申告が必用 税関に来訪することなく、システム上で申告行為を行うことができる。
輸出入手続きは、税関や検査現場での審査を行う必要がある。 一定の条件を満たした申告はシステムで即時完了
各地方税関に通関システムが個別に存在しているため、企業は地元税関に赴いて申告書類を提出しなければならず大きな負担に 通関システムが統一され、一定の条件を満たした申告では各地方税関に足を運んでの書類提出が不要に

ベトナム税関では、2005年頃より国内で開発した通関システムを使用していたが、次第に課題が目立つようになった。特に、地方ごとにシステムが独立していたことや、機能に制約がありITによる自動化が進んでいなかったことである。これらが、中央への情報収集や、現場の税関職員の業務などを阻害する要因となっていた。 また、2007年のWTO加盟後に海外からの直接投資が急増し輸出入量も伸び続けていた。これらの背景からベトナム政府は、新しい通関システムを導入し、貿易手続き・通関の効率化を図ることとなった。 複数国の通関システムを検討し、選定したのがNACCSだった。ベトナム税関総局 IT・統計局副局長のLe Duc Thanh氏は次のように語る。「ODAの案件として支援が受けられることも理由の1つですが、これまで約40年にわたり日本の高度経済成長に伴うさまざまな変化や課題を経験し、それに対応できるよう開発され、大きなトラブルも無く運用されてきたという信頼性も大きなポイントとなりました」 これまでのNACCSの開発・保守に携わるNTTデータは、貿易・通関業務に関するシステム構築ノウハウ、また、大規模システムの構築や短期開発の能力が評価され、2012年8月にベトナム政府と契約を締結しプロジェクトがスタートする。システム名はVNACCS(Vietnam Automated Cargo Clearance System)とされ、NTTデータをはじめとした日本人スタッフとともにチーム一丸となった開発が進められた。

手続きの手間が大幅に減り
現地企業からも歓迎の声

ベトナム税関総局 IT・統計局副局長 Le Duc Thanh氏

「VNACCSの導入に合わせ、日本側の支援によりベトナムの税関業務を細部まで再設計しました。その結果、我々税関と民間企業との意思疎通がよりスムーズになったのです。また現場職員の仕事のやり方が大きく変わったことで、職員の組織や仕事に対する考え方まで変わり、より積極的かつ協力的になりました」と、Thanh氏は振り返る。VNACCSでは、日本のNACCSの機能をそのまま適用するのではなく、ベトナム独自の業務に対応した機能として、陸上国境における手続きの電子化や、電子商取引法に基づく電子署名対応・「再輸出免税のための一時輸入手続」といった機能など、ベトナム向けに柔軟な適用・開発が行われた。

2014年4月、VNACCSの運用がスタートすると、ベトナム国内の企業からも、輸出入手続きが大幅に効率化されたことを歓迎する声が数多く寄せられている。ベトナムの特徴として、企業が置かれている各地方の税関での書類申告が必要となる点が上げられ、通関業者は顧客企業が地方の場合、すべての申告書類を現地税関に持ち込む必要があった。「VNACCSのサービス開始以降、グリーンチャンネル(マニュアル審査[書類審査、現物検査]無し)に関してはシステム側で自動判定した結果を即時回答してくれるので、都度現地に赴く必要がなくなりました。グリーンチャンネルは私の体感で申告全体の7、8割を占めますから、時間だけでなく人的負荷も大幅に低減することができました」(国際物流企業関係者)

VNACCSは運用スタートから約3年、一度もオンラインサービスの停止などの大きなトラブルは無く・高い信頼性を誇っている。こうした運用実績を受けてThanh氏は、今後の展望についてこう語る。「5年後には我が国のすべての税関業務をグローバル標準レベルに引き上げることを目指しています。この目標の達成には、NTTデータからのサポートは欠かせないものだと考えています」

紙の業務と人員不足がもたらす
数々の課題の解決を目指したミャンマー

ベトナムでの成功により、さらに注目を集め、第二の導入国となったのが、同じ東南アジアのミャンマーだ。

本プロジェクトの課題と導入効果

お客様の課題 導入効果
輸出入手続きのすべてに紙の書類による申告が必用 税関に来訪することなく、システム上で申告行為を行うことができる。
輸出入手続きは、税関や検査現場での審査を行う必要がある。 一定の条件を満たした申告はシステムで即時完了
紙ベースの業務が輸出入手続きの効率を阻害 電子化により紙の書類が大幅に削減され税関現場の業務を大幅に効率化・省力化
紙ベースの集計により統計情報の信頼性に不安 正確な統計情報を得られるようになり、海外からの投資増に期待

以前まで、ミャンマーにおける通関業務は、すべて紙で行われていた。そのため輸出入の手続きは極めて非効率的であり、急速な経済成長により貿易量も増加を続けるなかで、国の成長を阻害しかねないと懸念されていた。それにもかかわらず、ミャンマー税関の職員は全国で800人程と、人口に比べ極めて少数であった。

ミャンマー税関MACCS Division課長のWin Thant氏は次のように振り返る。「以前の紙による手続きは大きな負担となっており、例えば少し前のファイルを探すにも非常に苦労していました。加えて、管理する際も紙を使用していたため、統計データの信頼性が低く、世界基準に倣ったAEO(Authorized Economic Operator)制度などの導入ができなかったことで、海外からの投資を抑制する要因ともなっていました」

ミャンマー人と日本人の
相互理解により完成したシステム

ミャンマー税関MACCS Division課長 Win Thant氏

危機感を抱いたミャンマー政府は、日本、そしてベトナムでも成果を上げるNACCSの導入を決定し、2014年10月、NTTデータに通関システムの開発を正式に発注した。

Win Thant氏は、「NACCSであれば、当時抱えていた数々の課題を解決してくれると判断しました。また、人材育成から世界標準システムへの対応まで、包括的な支援を得られることも大きな魅力でした」と話す。新しいシステムの名称は、MACCS(Myanmar Automated Cargo Clearance System)とされ、プロジェクトは着実に進められた。

ミャンマーをはじめ多くの発展途上国にとっては、日本と同じように信頼性の高いベンダー製品でシステムを構成してしまうと、開発後にその保守費用の負担が難しいという現実がある。そこで、NTTデータは社内ノウハウを最大限活用したミャンマーに合わせた基盤部分の設計を行い、ハードウエアとその保守費用の低減を実現した。またODAの意義として、システム導入後の保守運用をミャンマー国内で行っていくための人材育成が求められる。NTTデータは海外グループ会社NTT DATA Myanmarと連携し、開発プロセス全体をミャンマーに合わせて見直すなど、ミャンマー国内で長く運用していくための工夫がなされた。

日本とは、インフラ整備や考え方などさまざまな違いがあり、システム開発と並行して、システム導入に向けた課題解決のためのワーキングが続けられた。通訳を交えた議論にはなるものの、継続的に接していくことで信頼関係が構築され、そのことが円滑なプロジェクトの進捗につながったという。Win Thant氏はこう力説する。「現場での相互理解は、言葉を交わすだけではうまくいきません。実践での理解も必要です。2つの国の人間同士が最終的に分かり合えたからこそ、このプロジェクトは成功できたのです。それができたのは、我々に対する理解を深めながら、具体的な実践を繰り返し、紙で行っていた手続きをシステムへと落とし込んでいってくれたNTTデータはじめ日本サイドのおかげだと考えています」

通関手続きの効率化・省力化で
さらなる国の発展に期待

2016年11月MACCSは運用を開始し、第一弾として、ヤンゴン国際空港など主要4拠点で導入された。これらの拠点で通関手続きを行う貨物については、原則MACCSが使われるようになった。

MACCSの稼働により、輸出入の一連の通関手続きが電子化され、さらには商業省が発給する輸出入ライセンスとも連結されたことで、ミャンマーの通関手続きは一気に効率化・省力化されることとなった。JETROの発表によると自動的にグリーンチャンネルに振り分けられる貨物では、システム導入前には数時間かかっていた申告から認可までのプロセスが、最短でわずか3秒にまで短縮されたという。

「かつての課題がすべて解消されたことには我々自身も驚かされました。正しい統計が即時にとれるようになり、過去の書類もすぐに見つけ出せるようになりました。さらに世界基準に倣ったAEO制度の導入や、関税評価方式の切り替えなどにより、今後、輸出入業者にとって効率性・予見性・透明性が大幅に向上し、海外からの投資や企業の進出も急速に進むと期待しています」と、Win Thant氏は満面の笑顔で話す。

MACCSは、これからのミャンマーのさらなる経済発展に貢献するシステムとして大きく期待されている。 「今後も、NTTデータの提案やアドバイスに期待しています。我々はMACCSプロジェクトを通じ、親身に相談に応じてもらえ、経験とスキルのある頼もしいパートナーの存在こそが、業務改善における最大のポイントだと学ぶことができたのですから」と、Win Thant氏は力強く語った。

NACCSの機能と役割

(マイナビニュース広告企画:提供 NTTデータ)

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