牛山氏が語るF20のアドバンテージ

――PRO TREKとPRO TREK Smartでは、想定ユーザーが異なるということでしょうか?

牛山氏: 一部は重なりますが、基本的には異なると考えています。PRO TREKは時計、PRO TREK Smartは情報機器という位置付けです。トラディショナルな登山用腕時計として使いたい、自然のなかではデジタルなものから距離を置きたいという方にはPRO TREK。一方、地図読みの煩雑さから解放されたい、もっと安全や写真撮影に集中したい、という方にはPRO TREK Smart。そんなふうに、お客様のスタイルや利用シーンで選んでいただけると考えています。

アウトドアウオッチの代名詞ともいえる元祖「PRO TREK」シリーズ

特に、地図読みの手間が省ける便利さは絶大です。私は最近、山にはPRO TREKと開発中のF20を両方着けて行くんです。でも、登り始めてから見るのは、8割方F20ですね。登山中に一番気になるのは、やはり現在地と山頂や山小屋までの距離なんですよ。

アウトドアと地図は、切っても切り離せない関係です。PRO TREKに高度計や方位計が付いている理由も、地図上で現在地を特定するため。その点、F20は地図読みの手間もなく、手首で現在地を確認できる。これ以上強力なアウトドアアプリはありませんよね。

視認性と機能性を高めたPRO TREKの最新アナログデザイン「PRW-8000T MANASLU」(左)と「PRW-7000FC」(右)

F20には、近年のアナログPRO TREKの主流であるコントラストの強いデザインを取り入れたウオッチフェイスも収録。レトログラードの小針には、計測などの機能が割り当てられ、タップで切り替えられる

GPS内蔵をアピールする地図背景のウオッチフェイス

F20をPRO TREK製品群のなかに置いてみた。まったく違和感がない

岡田氏: 初めて行く山では、あとどのくらいで着くの? と、ことあるごとに、つい同行者に聞いてしまいます。私も登山を始めた頃はそうでした。スマホを頻繁に取り出して、何度も何度も地図を見て。当時は、これをもっと手軽に見られればいいのに、と思っていました。

登山って、先が見えない時が一番辛い。目的地が見えれば、ペース配分やモチベーションの維持ができるのに。

――PRO TREKでも、山で一番見るのは標高ですよね。あぁ、100メートル登ったな、と思うと励みになりますし。

牛山氏: ただ、山にはアップダウンがあるので、現在地の標高だけでは、目的地までの距離や時間は判らないんです。行程に下り坂があるかもしれない。でも、F20の地図ならそういった情報も含めてわかります。

――しかも、スマホとの連携が不要。つまり、スマホは電源を落とせるので、バッテリーを温存できるというメリットもありますね。緊急時に電話をかけるためのバッテリーを確保しておけるのは安心です。

牛山氏:これも一種の省電力思想といえるでしょうね。警察や消防も、山では携帯電話の電源を切るよう指導しています。というのも、山では電波が弱くなるので、携帯電話が基地局を積極的に探そうとします。すると、バッテリーを余計に消費するんですよ。都会と同じ感覚で使っていると、山では取り返しの付かないことになる可能性もあるんです。

――ところで、スマホの電源は落としてしまっても本当に大丈夫なんですか?

岡田氏: F20は、Android Wear 2.0をベースに動作します。Android Wear 2.0はスタンドアロンで動作するウェアラブルデバイスとアプリに対応したOSで、アプリを"そういう作り"にしやすいんですよ。だから、カシオ製アプリはほとんどの機能をF20単体で使える予定です。ちなみに、このAndroid Wear 2.0のおかげで、iOSでの機能制限もF10に比べて少なくなる予定です。もっとも、このあたりはAndroid Wear 2.0の最終的な仕様次第なのですが。