新ブランド「PRO TREK Smart」の位置付け

――F10には「トレッキング」「サイクリング」「フィッシング」という3つの「アクティビティ」アプリがありました。先ほど、カヤックやスキー、スノーボードという例が出ましたが、これらも「アクティビティ」として加わるのでしょうか。

岡田氏: 「パドル」(カヤックやカヌー)と「スノー」(スキーやスノーボード)が加わります。F20のアクティビティはGPSとカラー地図に連携する機能を持っているので、カヤックで川を下った軌跡やスキーで滑った軌跡、また、移動速度の計測も可能です。これらの機能は「トレッキング」「サイクリング」「フィッシング」でも使えるようになりました。釣果のあったポイントに魚のアイコンを配置したりとかの楽しい機能もありますよ(笑)。また、任意のポイントなどを地図上に記録できる「ロケーションメモリー」というアプリが新たに加わりました。スポーツ中に限らず、いつでも地図をチェックしたりメモしたりできる機能です。

「ロケーションメモリー」アプリで現在地を確認。地図上の任意の場所に音声入力によるテキストメモやアイコンを貼り付けることもできる(写真は言語を「英語」に設定。製品版では日本語にも対応)

「アクティビティ」アプリに新たに加わった「スノー」

速度を計測して、トップスピードや距離、軌跡などを記録できる

――一方でGPS内蔵だと、バッテリー消費量が懸念されますが……。

岡田氏: 確かに、F10では電力消費の関係からGPS搭載を見送った経緯があります。しかし現在では技術が劇的に進化していて、F20で採用したGPSチップの電力消費量は、(以前搭載を検討したチップと比較して)わずか1/4なのです。

――なんと、1/4に!?

岡田氏: また、メーカーや品質がまちまちなスマホのGPSを使う場合と異なり、GPSチップが特定されているのでチューニングしやすくなったのも、GPSを内蔵した利点といえます。

――機能面が大きく進化したF20ですが、今回から「PRO TREK Smart」という新ブランドネームになったこともニュースですね。その意味するところを教えてください。

岡田氏: F10はカシオのスマートウオッチ最初の製品ということもあり、「カシオのスマートウオッチ」ということを強く打ち出す必要がありました。しかし、F10を発表してお客様の意見を伺ったり使用シーンを訴求していくなかで、PRO TREKのスマートウオッチ版とした方が伝わりやすいと判断したのです。そこで、F20を開発するにあたり、今回からPRO TREK Smartという新ブランドで、お客様とコミュニケートしようということになりました。

従来のPRO TREKユーザーとは異なる層にもアピールする、PRO TREKワールドの裾野を広げる新しいブランドと考えています。

――元祖PRO TREKの産みの親である時計事業部としては、PRO TREK Smartをどのように受け止めましたか?

牛山氏: F10の開発時から、私たち時計事業部もセンサー技術や外装デザインの面で協力しています。時計事業部は長くやっているぶん、山に関するリソースをたくさん持っていますから。開発組織としては別ですが、横の繋がりでアドバイスをしていました。

ですから元々、F10にはPRO TREKのDNAが込められてはいたのです。

ただそれとは別に、私たちには常々、PRO TREKユーザーの裾野を広げたいという思いがありました。山だけでなくフィッシングやカヤックなどを取り込めないかと考えていたなか、実にタイミング良くF20と新ブランドの話があったのです。伝統的な時計と最新技術のスマートウオッチ、これを両輪として、PRO TREKが次のステージを走り出す準備ができたと思います。