住まいの快適性を評価する際に、"断熱性"はとても重要な指標となるのではないでしょうか。また、最近では"遮熱性"という言葉を耳にする機会も増えました。断熱性と遮熱性は漢字が違うだけで意味は同じでしょうか。改めて考えてみると、何がどう違うのかはわからない方が多いのが現状のようです。

マイナビニュースでは、戸建て住宅に住む読者273人を対象に「住宅に関するアンケート」を実施。家を建てたり選ぶ際に重要視するポイントとして、46.5%が「断熱性・遮熱性」を挙げました。また、これらに関係する建築素材として「断熱材」があることを知っている人は66.3%で、居住する住まいに断熱材が使われていると答えた人は61.0%にのぼりました。

これに対し、「遮熱材」に関しては知っていると答えた人は37%、住宅に使用されているという人は21.6%と、断熱材に比べて認知度も利用率も大きく下回る結果に。

また、住まいの断熱性についての満足度は、「満足している」「どちらかというと満足している」と答えた人は合わせて51.7%。遮熱性は双方合わせて37.4%で、「気にしたことはない」が28.6%と、断熱性に比べるとまだまだ意識も普及度も低いようです。

そこで今回は、東京都市大学 環境学部環境創生学科・同大学院教授で、建築環境学が専門の宿谷昌則先生に、住宅における断熱材と遮熱材の違いやそれぞれの役割と効果について伺いました。

東京都市大学 環境学部環境創生学科・同大学院教授 宿谷昌則氏

断熱材と遮熱材の違いとは


「断熱と遮熱というのはそもそもどのように違うのでしょうか?」


「人の場合に喩えていうと、断熱材というのは寒い時にセーターを1枚羽織るとかマフラーを巻くといった防寒対策と同じです。衣服を着ることで、身体から外へと流れる熱の量を減らして、体温を下がりにくくすると、温かいと感じるようになります。建物における断熱材の役割も性質としては同じです。

これに対して遮熱というのは、ツバのついた帽子や日傘に相当します。遮熱は実は遮光と関係しています。お日様に当たって熱くなるのは光が原因だからです。そこで熱の元になる光を遮ることで吸収されにくくするというのが遮熱ですね。例えば"遮熱塗料"と呼ばれるものは、建物の屋根などを白く塗ることで光を吸収しにくくしています」


「それでは、断熱材と遮熱材はどちらを選ぶほうが住宅の快適性に対する効果がより高いものなのでしょうか?」


「断熱材と遮熱材は比較の対象にはなりません。というのも、断熱材の役割は壁や屋根、床の中を熱が流れにくくすることですが、遮熱材には断熱材としての性質はありません。断熱材は冬の場合には室内からの熱損失を減らして壁の室内側表面温度を上昇させることがポイントです。断熱材は不透明の素材であれば遮熱材としての役割も果たします。


夏の場合は断熱材に加えて遮熱材を組み合わせる必要があります。したがって、断熱材と遮熱材のどちらか一方を選ぶという選択はありません。まず冬と夏の双方のために断熱があって夏のために遮熱材という関係です。なぜかというと、日傘をさして、まずは日差しを除けたらよいのに、それをせずにいきなり巨大な扇風機を回して涼を得ようとするのはおかしいですよね。これと同様のことが実際の建物の多くでは行われてしまっています 」


「今のお話だと、遮熱材は夏には確かに有効だと思いますが、冬の場合は逆に熱を発生する光を遮ってしまうことで逆効果にはならないのでしょうか?」


「断熱材と遮熱材が両方あることで快適になる一番の理由は、夏でも冬でも建物内部の表面の温度がコントロールされやすくなるからです。冬の場合には窓に当たった日射によって窓表面の温度は30℃以上に上がります。これは窓にパネルヒーターをぶらさげているのと同じことで、"放射熱"の効果で室温を高めてくれる効果もあります。冬にプライバシーの確保のために薄手のカーテンを閉めておいても日射を遮り過ぎ…ということにはならないと思います。カーテンは夏にはあまり効果がありません。夏には窓ガラスの外側での日除けが重要です」


「今述べられた、放射熱というのはどういったものなのでしょうか?」


「住宅に侵入してくる熱の伝わり方には実は4種類あります。


1つ目が先ほど述べた"放射"です。これは輻射と言う方がなじみ深いかもしれませんね。物体からその温度に応じて発せられる光で、人体からも太陽からも発せられ、周りの物体に吸収されて温度上昇に関与します。例えば、焼肉の鉄板が温まっているかを確認するのに手をかざすと、火照りを感じますよね。あの火照りが放射です。光には目が感じる光の他に、目には感じないですが皮膚に温かさや冷たさを感じさせる光があるのです。

2つ目が"対流"。空気や液体などの流れによって熱が伝わることで、私たちが暑い時にあおぐと涼しく感じるのは空気を動かしているからです。熱は温度が高いほうから低いほうへ伝わります。空気の温度は皮膚の温度よりも低いことが多いので、空気を動かすことで冷たいと感じるのです。高温のお湯が入ったお風呂に入る際にゆっくりと入るのは、高い温度の水が動くことで皮膚の方へと熱が伝わってくるのをできるだけ防ぐことを無意識のうちにしているのです。

3つ目は"伝導"です。固体の中を通して熱が伝わることを指します。椅子の足が金属製だと冷やしているわけではないのに触ると冷たく感じます。これは、手から金属の方へと熱が伝わりやすいからです。椅子の背や座面を触っても冷たく感じません。これは背もたれや座面に使われている材料は、熱が伝わりにくいからです。

そして最後は"蒸発"です。私たちの身体は多かれ少なかれ常に湿っています。夏になると外気温と体温との差が小さくなり熱を逃しにくくなるため、汗をかいて身体の表面で生じる蒸発によって熱を逃しているのです。風呂上りに扇風機の風に当たると涼しく感じるのは水の蒸発のためです。これと同じことです。

以上の4つは建物の壁や屋根でも起きます。断熱材や遮熱材は、これらの現象をコントロールして、室内の熱環境を快適に保つためのものなのです」


「熱を伝えにくい物質は何でしょうか?」


「熱が流れにくい物質の代表は、実は空気です。空気は動いてしまうと熱が流れるのですが、動かなかったらこんなに優れた断熱材はありません。冬にマフラーをすると温かく感じるのは、マフラーの生地のせいではなくて、繊維の間に空気の粒がたくさん入っていて空気が動かないからです。だから断熱材と呼ばれている物質は発泡ウレタン、セルロースファイバーとかみな軽いものです。中にたくさん気泡が入っているので断熱効果が高いのです。その逆に、重たい物質は一般的に断熱性がほとんどありません。コンクリートは密度が高くて頑丈ですが、断熱性はないに等しいです。空気の対流がまったくないとすると、空気の熱伝導率は0.025とか0.026W/(mK)という数値です。一方、コンクリートだと1.4 W/(mK)ほどです。コンクリートは空気よりも56倍も熱が伝わりやすいのです」


「木造住宅とコンクリート住宅では断熱性はどちらが高いのでしょうか?」


「木造住宅ですね。木材の熱伝導率は0.1W/(mK)ぐらいだからです。木造住宅が寒いという印象があるのは、断熱性というよりは気密性の問題であることが多いと思います。特に日本の古い木造建築では建て付けが悪くて、隙間風があり過ぎて寒く感じるのですが、断熱性そのものについて言えば木造住宅だから悪いということはないのです」


「遮熱に関しては、対策があるかないかでどれくらい違いがあるのでしょうか?数値的なものでわかりやすい例があれば教えてください」


「遮熱について考えなければならないのは、先ほども言ったように日除け材が窓や壁の外側と内側のどちらにあるかで効果は大きく異なるということです。例えば、窓の外側に当たっている日射を100とした場合に、窓ガラスの室内側で遮熱をすると室内に入ってくるのは70~80となりますが、外側にあると10~30にまで低減します。夏に遮熱対策を室内側でやっている住宅が多くあるのですが、日よけ自体の表面温度は35~40℃にまで上がってしまうので、それが室内にあると、夏なのに放射暖房をやっていることになってしまいます。ですから、屋根や壁は断熱材で覆って、遮熱材はその外側に設けることがとても重要なのです」


「住宅に断熱材や遮熱材を選んだり、施工する際に気をつけることはありますか?」


「両方を上手く組み合わせることで、冬も夏も住宅内の温度がコントロールしやすくなります。断熱材であれば、素材はもちろんですが、材料の厚さも重要です。また、吸放湿性があるか否かに応じての施工方法も考えたいところです。地域にもよりますが、最低50ミリ以上、100ミリぐらいは入れるのがよいと思います。初期投資は少しかかるでしょうが、一度備えてしまえば効果は長く持続するものなので、快適性の差を考えたら断熱や遮熱のための費用をケチるのは実はお金を有効活用していないことになります。私の家でも6年前に断熱・遮熱の大改修をやりましたが、冬も夏も快適になり電気代もガス代も安くなりました。しかも、以前よりもはるかに室内は快適なのです。電気の使い方に関していうと、日本ではハイテクな暖房便座なんていうものがありますが、その前に住宅そのものの断熱や遮熱の性能を上げることを考えるべきです。断熱をしっかりしておけば便座を暖める必要などないはずですからね。断熱と遮熱によって、涼しく温かい家は作れるということを知っていただくのがまず大事だと思います。それはガスや電気を浪費することのない人の身体にやさしい暖房や冷房を実現することになります」


「断熱材や遮熱材自体の寿命というのはあるのでしょうか? 効果はどれくらい持続できるものなのでしょうか?」


「冷蔵庫とかテレビとかの家電製品の法定耐用年数は15年ですが、それらと比べてはるかに長いです。性能の劣化は多少あるとは思いますが、ボロボロになってまったく使い物にならないといった状態にはまずなりません。住宅の法定耐用年数は、木造が20~25年、鉄筋コンクリート建てが40~50年ですが、その期間はまず問題ないでしょう。また、断熱や遮熱は建物を長持ちさせることにもなるでしょう。建物の屋根や壁、床といった部分は、人間の皮膚の延長と考えるべきものです。この部分の性能をしっかりしておくというのは快適な住環境づくりの基本として大事なことです。エアコンなどの空調家電はその上で利用の仕方を改めて考え直すのが、本質的に快適な生活をつくっていくことになるのだと思います」


長く住む家だからこそ大事な断熱遮熱の意識

快適な住環境に欠かせない断熱材と遮熱材。教授のお話のとおり、断熱材や遮熱材の利用は住環境の快適さを左右する以外にも、光熱費削減や、建物自体を延命できるなど多くのメリットを持ちます。マイホームの新築やリフォームの際はもちろん、賃貸住宅の際にも部屋選びの基準として重視してほしい性質です。そんな際に検討してほしいのが、住宅関連部材の開発・製造・販売を行うオズ・ワークの遮熱シート「ABSS(アビス)」。遮熱性はもちろん、透湿性と強度にもすぐれる同製品。新築、リフォームをご予定の方はチェックしてみてはいかがでしょうか。


宿谷昌則

東京都市大学 環境学部環境創生学科・同大学院教授
建築環境学を専門に、自然のポテンシャルを活かす照明・暖房・冷房・換気などの建築環境システムを研究。
人間生物学と建築環境システムの関係についての研究も行い、自然のポテンシャルを活かせる不自然でない環境技術、人の自然な暮らし方・住まい方とは何かを見出すことを目指し研究と教育を展開しています。

調査時期: 2016年12月14日~2016年12月15日
調査対象: マイナビニュース会員(一戸建て住宅にお住まいの方限定)
調査数: 273人
調査方法: インターネットログイン式アンケート

(マイナビニュース広告企画:提供 オズ・ワーク)