かつて群馬県や栃木県は、県内の豊富な地下水のおかげで河川の水資源を欲していませんでした。しかし、その後の人口増加と企業誘致によって大規模工場が増加したことで、地下水のくみ上げが限界を迎え、河川の水資源へのニーズが急速に高まりました。ところが、利根川などの水利権は財政の潤沢な東京都に抑えられ、県内を利根川が流れていても勝手に取水することができないという問題に直面。同じようなことは愛知県と岐阜県の長良川でも以前発生しました。「うちの県は関係ないよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、水資源問題は意外と根深いのです。

地球の資源問題シリーズ 水資源

歴史を振り返ると、20世紀は主に石油資源を巡る戦争でした。そして今世紀は水資源と食糧を巡る戦争になると言われています。普段何気なく飲んでいる水、日本では「水とサービスはタダ」みたいな感覚が強いですよね。今日はその水資源についてのお話です。

地球上の水の多くは塩分を含む海水で、その割合は97%で残りの淡水も、多くは氷雪や氷河の形態で存在しており、すぐには利用はできません。また残りの水のうち、ほとんどは地下水として地中深くに浸透しており、人間が利用可能な淡水はわずか0.01%しかありません(右図参照)。この0.01%しかない貴重な水資源も、汚染されると利用ができなくなります。

このような地球上の水資源の基本的構造に加え、水不足を招く最大の要因として人口増加が挙げられます。人口増加と人間の水利用量の間には高い相関関係があり、2025年までに人口と水利用量はともに急増する見込みと予測されています。これが今世紀の人類が抱える水資源問題です。

世界の人口の約40%を占める中国とインドは、更に人口が増えると予想されます。特に中国は急速な工業化を推し進めた結果、河川(大気もですが)の汚染が深刻で、黄河と揚子江という大きな川があっても水は慢性的に不足しています。海外メディアが伝えるところによると、揚子江上流から人工運河で黄河を立体交差して北京まで水を運ぶ計画を立てたようですが、結局頓挫しました(揚子江の水質も汚染が進み意味がないためか??)。最近、長野県や北海道の山奥の土地を中国人が買い占める事案が増加しているようですが、このような背景があるのではないでしょうか。

またインドへの出張の際に海外出張慣れした日本のビジネスマンは、大量のペットボトルの天然水(荷物預けのスーツケースに入れる必要あり)を、日本から持参すると聞いたことがあります。国民のほとんどが洗濯、行水、飲料、下水、ごみの廃棄を全て河で行うにもかかわらず、適切な殺菌処理をしないのですから、日本人の感覚では現地の水は飲む気にはなりません。水道の水を飲める国は、確か世界で日本を含む15カ国程度だったかと思います。

水資源の枯渇化を示す代表的な尺度に「水ストレス」があります。水ストレスとは「人口一人当たりの利用可能水資源量」のことで、日本も水ストレスが高い地域と認識されています。日本は一見、水が豊富だと思いがちですが、総合的には水不足と判断されています。そのカラクリは、日本が他国から水資源を目に見えない形で大量に輸入していることにあります。日本が大量に輸入している水資源は、飲料水ではありません。私たちが潤沢だと感じている飲料水を含む生活用水(トイレ、風呂、洗濯、料理など)は、全体の8%でしかないのです。その他は70%の農業用水と22%の工業用水です。

それらを更に正しく理解するためには、私たちは水資源の分野における「仮想水(バーチャル・ウォーター)」の概念を知っておく必要があります。食糧や工業製品の生産には、食糧を栽培するのに必要な水、家畜の飼育に必要な水、さらにその家畜の肥料を育てるのに必要な水、工業生産の加工や洗浄に必要な水など、大量の水資源を必要とします。仮想水とは、その食糧や工業製品を輸入している国において、もしその輸入食糧や輸入工業製品を全て自国で生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものです。

日本の仮想水輸入量は2005年時点で約804億トン。世界最大の仮想水輸入国です。つまり、日本は水そのものの輸入はそれほど多くはありませんが、食糧や工業製品の輸入国として、本来国内で生産したら必要であったはずの水資源を他国に支給してもらっているのです。これが、日本は水ストレスが高い国であるにもかかわらず、水不足に苦しんでいないカラクリなのです。一見、豊かに見える日本の水資源、仮想水の観点から見ると決して潤沢ではないという感じですね。

ただ平野面積や河川の流量など如何ともしがたい部分もありますので、限られた資源の中で日本人の知恵と勤勉さで克服していくというのが、現実的な対処法ではないかと思います。将来的には、日本が海に囲まれた島国という環境であることから、日本が開発した世界最先端の塩水ろ過技術で、海水を淡水に変えて工業用水や農業用水を確保していくことになるかもしれませんね。

本記事は、アイ・ユー・ケイが運営するブログ「つぶやきの部屋」を転載したものになります。

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