フローサイエンスジャパン、独自開発のモジュール群

フローサイエンスジャパンは、汎用3次元熱流体解析ソフトウェアFLOW-3D及び鋳造解析専用ソフトウェア「FLOW-3D Cast」の日本総代理店である。FLOW-3Dは、アメリカで開発されたハイエンド3次元CFDソフトウェアとして知られ、流体問題を幅広く解析する。一方FLOW-3D Castは、直感的操作ができるGUIを搭載したソフトウェアである。フローサイエンスジャパンでは、日本ユーザーのニーズにきめ細かく対応するため、用途別にカスタマイズされた追加モジュールを開発、提供している。ここでは「FLOW Weld」、「FLOW DEM」、「FLOW Resin」、「F.SAI」の4つのモジュールと、その活用事例を紹介する。

溶接解析に必要なモデルを追加:FLOW Weld

FLOW Weldは、溶接解析に必要なモデルをFLOW-3Dに付加するモジュールである。FLOW-3Dの表面張力、自由表面解析、溶融・凝固・蒸発の相変化モデルなどの基本機能を応用して、各種溶接現象を解析する。主な機能としては、出力指定やガウス分布、デフォーカスなどの簡易熱源モデル、熱源の自由な移動などに加えて、深溶け込み型の溶接解析で欠かせない蒸発圧とそれに伴う反力、さらに多重反射を備えている。

「例えば蒸発圧に関しては、高いエネルギー密度が照射された場合、金属が部分的に蒸発し、それに伴う気流が発生することがあります。この蒸気の上昇流の影響を動圧やせん断力で評価します。また多重反射は、レーザー溶接時の溶け込み方に及ぼす影響を見るもので、深溶け込みの解析などでは、同じ条件でも多重反射を考慮すると明らかに影響の出ていることがわかります」と、フローサイエンスジャパン 代表取締役 丸湾ラエド氏は用途や結果を説明する。

もうひとつFLOW Weldの大きな特徴が、異種材を扱った場合の解析機能である。例えば鉄と銅を使ったレーザー溶接において、多重反射を考慮し深溶け込み型を想定した解析を行ったところ、熱伝導率の小さな鉄のほうが早く溶けるとの解析結果が得られた。FLOW Weldは、こうしたシミュレーションを通じて、温度変化と相変化を的確に可視化する。

流動解析に粒子の挙動解析をカップリング:FLOW DEM

FLOW DEMは、FLOW-3Dによる気体/液体の流動解析に、DEM(Discrete Element Method、すなわち個別要素法)による粒子の挙動解析をカップリングするモジュールである。フォークトモデルと呼ばれる、バネとダッシュポッドの組み合わせモデルにより衝突時の力を評価する。すなわち粒子が衝突した際の粒子間や粒子と壁間の接触/相互作用をモデル化し、より現実的な粒子挙動の解析を行う。

例えば、鋳造で中子を作成する際に、金型に高圧のガスで砂を吹き込み充填する工程(中子砂吹込み)がある。この場合、従来は砂と高圧ガスを平均化し連続体として扱っていたが、DEMを使えばガスの流れと粒子の動きを分けて解析できる。実際に左右対称な中子で左右のベント条件を変えた解析では、実験と同じ解析結果が得られた。

一般に多数の粒子を必要とする解析では、計算不可が高くなるため粒子数を減らして計算する必要がある。その場合、単に粒径を大きくすると実際の動きとは異なってしまう。

「そこで採用されたのが粗視化で、粒子の特性はそのままに数を減らして計算します。粗視化モデルを取り入れたDEMを使えば、元の挙動と概ね一致した結果が得られます」(丸湾氏)