狙ったタイミングでシャープな写真を撮るには

「今だ!」と感じてシャッターを切っても、撮れた写真はワンテンポ遅れていた。ピントが追いつかず、ほとんどの写真がピンぼけになってしまった……。あなたは、そんな苦い失敗を経験したことはないだろうか?

シャッターチャンスを逃したり、ピンぼけ写真が多発するのは、撮影者の腕の問題もあるが、それ以上に大きいのはカメラのAF (オートフォーカス) 性能の限界だ。どんなに高画素であっても、AFスピードが遅いカメラでは狙いどおりの写真は撮れるはずがない。特に、子どもやペット、乗り物など動きの速い被写体を撮るには、何よりAF性能が大切になる。

そのAF性能にこだわり抜いたミラーレスカメラがキヤノンから登場した。「EOS M5」である。中にはミラーレスカメラと聞いただけで、AFに不安を覚える人がいるかもしれないが、心配は無用。EOS M5は、従来のミラーレスカメラを徹底分析し、キヤノン独自の技術によってさまざまな問題を克服したカメラだからだ。実写を交えながら、その画期的な性能を見ていこう。

EOS M5・EF-M18-150 IS STMレンズキット

ハイエンド一眼レフにも採用されているAF技術

新製品「EOS M5」の最大の注目ポイントは、キヤノンのミラーレスカメラでは初めて「デュアルピクセルCMOS AF」を搭載したこと。2つのフォトダイオードで1つの画素を構成するCMOSセンサーを備え、すべての画素を位相差AFセンサーとして使う仕組みだ。これまで「EOS 80D」や「EOS 5D Mark IV」など、中級・上級クラスの一眼レフカメラに用いられてきた技術である。

これによって、一般的なミラーレスカメラで使われている、コントラスト検出方式のAFや、コントラスト検出と像面位相差を併用するハイブリッドAFに勝るスピーディなAF駆動を実現。テスト撮影においても、使用するレンズを問わず、テキパキと気持ちよく作動するAF性能を体感できた。

既存モデルの「ハイブリッド CMOS AF III」(右)では、位相差AF用の画素の数が限られていた。しかし、EOS M5の「デュアルピクセルCMOS AF」(左)では全画素が位相差AFセンサーとして機能することで、合焦速度が格段に向上し、測距エリアも広がった

動体に対するAFの追従性も進化した。EOS M5では、一眼レフEOSの動体予測AFをモデルにして、前後奥行方向の予測能力が強化されている。今回の試用では、すばしっこく走り回る子どもを撮影したが、横方向の動きだけでなく、カメラに向かってくるという、一般的なミラーレスでは捉えきれない動きに対しても、正確に追従するAF性能を確認できた。

絞り:F4 シャッター速度:1/1000秒 感度:ISO160 WB:太陽光 レンズ:EF70-200mm F4L IS USM