スイスの半導体モジュールメーカー u-blox AG(ユーブロックス)は、ドローン/精密農業機械に最適なGNSSモジュール「NEO-M8P」の新ファームウエアのリリースを開始する。センチメートル級の高精度測位を実現する小型モジュールは今、高性能で高付加価値の産業用機械を生産する日本のメーカー各社に注目されているという。本稿では、製品の特徴、および日本市場への期待について、同社のプロダクト担当者に話を聞いたので紹介する。

業界が求める高精度の位置情報測位を実現

ここ数年、世界中で急速に普及しているのがドローン(無人飛行機)だ。日本では無線操縦のマルチコプターを指してドローンと呼ぶことが多いが、実際には軍事用無人飛行機も農業用無人ヘリコプターなど、用途、大きさ、形状を問わず、無人で飛ぶ航空機はすべてドローンである。その使い方は軍事用から個人の趣味に至るまで実に幅広く、産業用としても空撮などの映像分野をはじめ、災害現場、物流・配送などさまざまな業務で利用され始めている。

マーテン・ストロム(Marten Strom)
シニア・プリンシパル プロダクト・マネージメントチーム

最近では、高所作業が伴う点検・保守の現場や農業への応用も期待されるドローンだが、一方で課題もある。ドローンを無線で正確に操縦するには相当な熟練が必要であり、複雑な構造の建造物に近接して飛行したり、圃場や農作物の位置に合わせて肥料や農薬を散布したりすることが非常に難しいのだ。そこでGNSS(Global Navigation Satellite System=全球測位衛星システム)によって正確な位置情報を取得、計測できる半自動操縦のドローンが開発されるようになった。ところがここにも課題があった。数メートル級の精度のGNSSモジュールは安価で入手しやすいものの、点検・保守の現場や農業のような数センチメートル級の高精度を実現するGNSSモジュールは非常に高価、かつ大型であり、低コストが重視される産業用ドローンに実装することが難しいのだ。しかし、高精度の測位が可能でなければ点検・保守の現場や農業では使い物にならない。

このような課題の解決に立ち向かったのが、ユーブロックスである。同社は自動車をはじめとする産業・民生向けの無線・測位用半導体、およびシステムモジュールを製造するスイスの半導体リーダー企業だ。

「当社は約24年にわたり、GNSS製品を提供してきました。その経験とノウハウ、および業界におけるポジショニングを活かし、業界からの厳しい要求に応えるべく開発したのが、高精度GNSSモジュールのNEO-M8Pです」と、ユーブロックスのプロダクトマネージメントチーム シニアプリンシパルであるマーテン・ストロム氏は話す。

小型・軽量・低消費電力を実現

ストロム氏によると、NEO-M8Pはセンチメートル級のGNSSソリューションを手頃な価格で実現した世界初の製品だという。製品は1円玉より一回り大きい外形寸法12×16ミリメートル、重量1.6グラムという小型モジュールにパッケージングされており、小型・軽量・低消費電力を実現している。高精度測位の秘密は、モジュールに内蔵された独自のリアルタイムキネマティック(RTK)テクノロジーにある。RTKとは、GPSをはじめとするGNSS衛星からの搬送波を用いた相対測位法のことだ。ユーブロックスではそのRTKテクノロジーのアルゴリズムを独自に開発し、移動する物体の位置を瞬時かつ高精度で測位できるようにしたという。

図版はクリックで拡大します

「当社は最高精度のRTKテクノロジーをモジュールに組み込み、産業機器市場に受け入れられる低価格で提供することに成功しました。これによって、価格がネックで従来のRTKテクノロジーを採用できなかった分野においても、センチメートル級の測位を可能にしました」とストロム氏は説明する。

NEO-M8Pには、基地局用モジュールと移動体用モジュールの2種類がある。利用する現場に基地局を設置し、それをドローンのような移動体と最大0.5kbpsで通信リンクさせることで高精度の相対測位を行うという仕組みだ。基地局用モジュールも外形寸法や重量は変わらないので、基地局を恒常的な設備として建設する必要はなく、無線操縦のコントローラを基地局として利用することもできる。

「NEO-M8Pはドローンの安定した飛行を可能にし、高いレベルの自動操縦を実現します。操縦者はドローンに搭載されたカメラのコントロールに集中できるなど、作業効率を向上させ、結果的に時間とコストの削減を実現します」(ストロム氏)

ドローンや精密農業が主なターゲット

カリン・スタインハウザー(Karin Steinhauser)
プロダクトコミュニケーションマネージャー、測位製品部門

NEO-M8Pの主なターゲットとなるドローンは、日本も極めて有望な市場だとユーブロックスは見ている。

ユーブロックスの測位製品部門 プロダクトコミュニケーションマネージャー カリン・スタインハウザー氏は、「日本は肥料・農薬散布用無人ヘリコプターなどの商業用ドローン市場において長い歴史があります。それに加え日本政府は、ドローン飛行エリアを拡大したり、郊外で宅配用ドローンの飛行を許可したりするなど、ドローンの本格運用に動き出しています。NEO-M8Pは高精度測位、コスト、サイズ、消費電力の面から見て、小型・軽量で付加価値の高いドローンへの組み込みに最適だと言えます」と日本市場に期待を寄せる。 さらに、ユーブロックスの狙いはドローンに留まらない。特に引き合いが多く、有望な市場が精密農業の分野だ。精密農業とは、農地・農作物の状態を観察、かつきめ細かく制御し、結果に基づいた次年度の計画を立てる農業管理手法のこと。すでに多くの農業機械メーカーが自社のトラクター、耕うん機、田植機、コンバインなどにセンサーを組み込んでIoTを取り入れた精密農業の実現に取り組んでいる。これらの農業機械に高精度測位を実現するNEO-M8Pを組み込めば、自動運転や施肥・農薬散布の自動化も容易に実現できるのだ。

「日本市場からはドローンに限らず、トラクターなどの農業機械のガイダンスや自動化のニーズが多く寄せられます。NEO-M8Pは、あらゆる機械制御に適応できるフレキシビリティが盛り込まれており、精密農業における農業機械のユーザーエクスペリエンス向上、生産性向上を図るためにも有効だと考えています」(スタインハウザー氏)

さらにダムや橋梁、高圧鉄塔などインフラ設備の点検・保守用途、自動芝刈り機のような屋外ロボティクス用途、ウェアラブル機器と組み合わせたスポーツ用途など、あらゆる分野に応用することが可能だ。

NEO-M8Pを使用しセンチメートル級精度のフライト軌道を実現させた実験の様子

量産出荷は2017年1月を予定

NEO-M8Pは2016年3月に最初のサンプル出荷を開始。2016年10月にファームウェアの大規模アップデートが決まっており、米国のGPSだけでなくロシアのGLONASS、中国の北斗(BeiDou)などのGNSS衛星に対応するのに加え、固定基地局機能など複数の新機能が実装される。また12月のアップデートでは移動基地局機能が実装されるとともに、機能の改善や速度・進路のチューニングなどを予定している。これらのアップデートをエンジニアリングサンプルとして提供したのち、2017年1月より量産出荷を開始する計画だ。

サンプル出荷されているNEO-M8Pのモジュールは、ユーブロックスのオンラインストアから直接入手することができる。NEO-M8P単体(サンプル価格・199ドル)のほか、NEO-M8Pを搭載した開発・評価用のアプリケーションボードC94-M8P(サンプル価格・399ドル)も用意されている。アプリケーションボードには、基地局モジュールを搭載した2枚の基板、無線通信用コネクタなどを同梱。また日本市場向けに920MHz UHF帯対応(技適取得済み)製品も提供する。

「NEO-M8Pは最終的に、センチメートル級の測位を必要とするあらゆる用途をターゲットにしています。基地局の設置と、周囲に遮蔽物のない上空が開けたオープンスカイ環境での使用が条件になるものの、マスマーケットを十分に狙える製品です。日本の産業機械メーカー各社には、NEO-M8Pを活用したさまざまなアプリケーションを開発してくれるものと期待しています」(ストロム氏)


高精度GNSSレシーバーセミナー実践編 -NEO-M8P評価レポートと事例-

会期:平成28年12月16日(金)
開催時間:13:00~17:00
会場:東京海洋大学 越中島キャンパス 越中島会館講堂
〒135-8533 東京都江東区越中島2-1-6

(マイナビニュース広告企画:提供 ユーブロックス)