TIHを支える「全能工」

TIHで生産されている企業向けモデルの仕様はとにかく細かい。多様なバリエーション数はおよそ2,000、小ロットでのオーダーも受け付けるからだ。そのため、同一ラインで1日に何度も製造機種を変更し、多様なニーズに対応する。受注組立生産の場合、約9時間で製品が完成する。注文を受けて半日で完成させ、飛行機で輸送すれば、日本には3日後に届く。これなら日本国内の地方都市で生産するのと遜色のない対応が可能だ。

さらに、生産ラインの途中では電子基板等の電気検査を行わない。本体に組み込んで性能試験をするプロセスで最終的に確認する。この方法を採る場合、基板の品質が悪ければかえって効率が悪くなってしまう。だが、基板そのものの品質が高いので最終性能試験だけで十分なのだ。

プリント基板生産ラインは自動化されている。最終段階で目視チェックして本体に組み込む

プリント基板生産ラインの様子。半田付けを行う炉の温度、半田付け位置のズレを予測して修正するなど自動化と正確性の両立を徹底的に追求している

その組立ラインを支える従業員だが、単能工、多能工、そして、指導・管理ができる全能工に分類される。その職能によって、ライン上で担当できる作業カテゴリが決まる。いつでも任意のライン位置に入り、すぐに十分な作業を担当できる臨機応変な能力と豊富な経験、知識が求められるのが全能工だ。そして、その最上位に君臨するのがスーパー全能工だ。

まさに東芝人中の東芝人で、全能工以上に認定されている従業員の離職率は0%に近いという。他社の工場では、いわゆる協力企業が各ラインを担当することが少なくないが、TIHでは自社で採用した人材が100%、すなわち東芝人がアサインされている。

TIH従業員にとって一つの目標でもある「全能工」。左腕にピンクの腕章を着けている