岩井俊二監督の約12年ぶりとなる実写長編作『リップヴァンウィンクルの花嫁』がついに完成した。本インタビューでは、主人公・皆川七海を演じる黒木華と、破天荒な女性・里中真白を演じたCoccoに、岩井作品へ出演した感想や演技などについて話を聞いた。

黒木は、素直だがどこか危うい雰囲気を持った主人公・皆川七海を演じ、本作が映画単独初主演となる。岩井監督の作品のファンだという彼女に、出演することになった時の心境や、Coccoと共演した感想などを語ってもらった。

「岩井ワールドに自分がいる」うれしいけど不思議な感覚

――映画単独初主演。まずは、岩井監督の作品に出ることが決まったときの気持ちから教えてください。

黒木 : すごくうれしかったです。「マイリトル映画祭」のときに初めて監督とお会いして、「いつか(一緒に)映画を撮ろうね」って言ってくださったんですが、まさか本当に実現するとは思っていなくて。もしご一緒できるとしても、私がもう少し経験を積んでからかなと思っていたので、このタイミングで岩井さんの長編に出演させていただけると聞いたときは本当にうれしかったです。

――黒木さんは岩井監督の作品のファンだと伺いました。

黒木 : はい。『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)を高校生のときに見て、すごく刺激を受けたんです。岩井監督の作品はきれいなだけじゃなく、きれいな中にも汚さがあって、すごく人間味がある気がするんですよね。そこが好きです。うまく言えないんですけど、衝撃的で"この大人は私たちのことを分かってる"と思ったりしました。いろんな感情を覚えた作品なので、今でも好きですし、影響を受けている作品の一つだと思います。

――そんな監督の作品に主演するというのは、あらためてすごいことですね。

黒木 : 本当にそうですよね。すごいことだなって自分でも思います。実は完成した作品を初めて見たときは、どこを見たらいいか分からなかったんです(笑)。岩井ワールドに自分がいるというのは、すごく不思議な感覚で。まず、一番にうれしい気持ち。だけど自分のお芝居なので「ここ大丈夫かな?」とか、いろいろ気になるところもあるし……。複雑な気持ちで見ていました。

――黒木さん演じる七海とCoccoさん演じる里中真白との絆も、物語の核となっていますが、Coccoさんとの共演はいかがでした?

黒木 : もともとCoccoさんのファンではあったんですが、とてもすてきな方でさらに大好きになりました。Coccoさんとのクライマックスシーンは、友情とか愛情とか、いろいろなものを感じて、全身があったかくなりました。七海ちゃんが真白さんを愛しいと思うように、私もCoccoさんのことを本当に愛しいと思いました。七海ちゃんと真白さんの、お互いを支え合える関係がうらやましかったです。

何かあったら絶対駆けつける 大切な友達が私にもいます

――すごくすてきな関係ですよね。黒木さんにも真白のように思える友達はいますか?

黒木 : そうですね。私は、高校のとき同じ演劇部だった親友が大阪にいて、その子はすごく大事です。普段はあまり連絡を取らないんですけど、連絡を取らなくてもいられる関係性で、高校のときから喧嘩したりしながらずっと一緒にいました。今、私は東京で、その子は大阪で、自分の道を頑張っている。もし、彼女に何かあったら絶対に駆けつけたいし、絶対駆けつけてくれると思います。

――大切な友達なんですね。

黒木 : とても大切な存在です。これを言ったら負担になるかな? とか、こういうことしたらどう思うかな? とか。そういうことを考えずに、自然体でいられる唯一の友達です。

――劇中では、メイド服姿も披露されていますよね。

黒木 : はい(照)。大丈夫でした? "昭和感"漂ってなかったですか?

――とんでもない! とてもかわいらしかったです!

黒木 : ありがとうございます。でも、やっぱり恥ずかしかったです(笑)。さんざん"昭和"って言われているので。どうしよう、"洋"だぞ? って(笑)。もし似合ってないって言われたらどうしよう、ってちょっと不安だったんです。

――山田洋次監督は"割烹着が似合う"と絶賛されていましたが、メイド服も負けず劣らず似合っていたと思います!

黒木 : うれしいです。ありがとうございます。これからは、頑張って洋風にも挑戦していきます(笑)!

■プロフィール
黒木華(くろき はる)
1990年3月14日生まれ、大阪府出身。B型。映画『東京オアシス』(2011年)で本格映画デビュー。『エミアビのはじまりとはじまり』が2016年公開予定。4月より主演ドラマ「重版出来!」(TBS系)が放送。

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