Coccoは、黒木華演じる主人公・皆川七海に影響を与える破天荒な女性・里中真白を演じた。「この作品に出演できたことは神様がくれたご褒美」と話す彼女に、"演じること"についてたっぷり聞いた。

初めて台本を読んだとき「私がやるものだ」と思った

――真白役はCoccoさんしかいないと、岩井監督から熱烈なラブコールを受けたと伺いました。初めて台本を読んだときの感想は?

Cocco : 「あ、この役は私がやるものだ」と思いました。読んでいて疑問に思うことがなくて、分かることばっかりだったから。「おー! これは運命だ!」って。でも、撮影終わってから聞いたら、監督が私にあてて書いてくれていたことが判明して(笑)。

――Coccoさんをイメージした役だからこそ違和感がなかった、と。

Cocco : そう。監督がCoccoのライブ見て、MCを全部書きおこして。私を理解した上で、真白のせりふを書いてくれたらしくて。それを聞いて、あ、だからか! って。実は、運命とかじゃなくて、監督がちゃんとお膳立てしてくれたんだっていう(笑)。

――それはすごいパッションですね。

Cocco : ね! でも、監督があて書きしてくれたからか、自分と真白の境界線はなかった。たぶん、華ちゃんもそれは同じだったと思う。2人共、スイッチを「さぁ、いれるぞ!」っていう感覚がなかった。カメラが回っているのに、私が「ね、華ちゃん」って言っちゃったり(笑)。華ちゃんも「Coccoさん」って言って呼んじゃって、「私たち間違えてるね?」ってことが何回もあったくらい(笑)。

こんなに楽しくていいの? と、思うほど楽しいことしかなかった

――黒木さんは「Coccoさんを愛しく感じた」とおっしゃっていました。

Cocco : 私も! すごく華ちゃんが愛おしく感じた! でも、華ちゃんは年下だけど、土台が大きい。母なる海みたいな、包容力がある。そんな華ちゃんに、私はぽよよーんって包まれていた。華ちゃん遊ぼう! ぽよよーんって(笑)。

――すごく楽しい撮影だったんですね。

Cocco : 楽しいことしかなかったです。こんなに楽しいことしていいのか、っていうくらい。歌うことはつらいことが多かったから。ライブとかはずっとピーラーで自分を剥いているみたいだし。私にとって歌ってすごくつらくて残酷だった。だけど、それを20年近く頑張ってきたから、こんな楽しいことをご褒美でもらっているんだ! っていうくらい。この作品を演じるのはものすごく楽しかった。

歌はコントロールできないけど お芝居はコントロールができる

――Coccoさんにとって"演じること""歌うこと"はどう違うのですか?

Cocco : 歌はコントロールができなくて、演技はコントロールができる。例えばお芝居って「ここは青い洋服がいいですね」って言ったら、タンスから青い服を出せばいい。ナイロン? シルク? いやここはコットン? って考えて「はい、青ありますよ!」って、持っていく感じ。自分で選べる。でも、歌ってそれができないから。自分が赤い服を着たいときでも青い服の歌が降って湧いちゃうと、青い服を着ないといけないから。どうしようもない。歌に振り回されちゃう。でも、お芝居に振り回されるっていうことはない。だから、すごい楽しい!

――特に印象的だったシーンは?

Cocco : 華ちゃんと2人で、ベッドの上で話をするシーン。あれは、実はリハーサルだと思っていたの。監督が「じゃあ、ちょっとやってみよう」って、やってみたらOKになっちゃった。重要なシーンだし、時間がかかるだろうってみんな覚悟していたのに本当に1回だけの撮影。「カット! OK!」って言う監督に「本当に!?」って(笑)。でも、映像を見たら、本当に素晴らしくて! カメラさんも音声さんも、みんなのピークがそのファーストテイクに見事にのってた。

13歳から思い続けて25年! 岩井作品に出演は念願だった

――これまで岩井監督の作品は見ていたんですか?

Cocco : 13歳くらいのときに沖縄でテレビで見たことがあって。それまでそういうことを考えたことなかったのに、そのときなぜかこれを作った人に会う! って決めた。初めてエンドロールを確認して。"岩井俊二"ってメモをして、それをずっと宝箱に入れていたの。でも、その後の作品はあえて見なかった。だって、自分は13歳でこの人だ! って決めているのに、監督は他の人と楽しい新婚生活をしてて。そんなセッション見れるか! みたいな。

――ジェラシー?

Cocco : そう。だから、意地で一つも見なかった。でも、25年くらいたっても会えないから(苦笑)、正直もう会えないないかもって諦めそうでした。監督の映画で音楽を使ってもらったことはあったんですけど……。それも、私からしたら、音楽だけ? っていう話だから(笑)。で、今回やっと会えた! 25年待ってよかった!

――25年分の思い、監督には伝えたんですか?

Cocco : オールアップのときに、「そういうことで一回も作品は見ていません」とは言いました(笑)。でも、その後、やっと私も見つけてもらえたことだし、他の結婚生活も見ようと思って。今、監督の作品を見始めたところです(笑)。ただ、私が最初に見た作品がまだ分からない! みんなから「それ、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』だよ」って言われて見てみたんだけど……違う! 今、探しているところです。

諦めなければ夢はかなう そう、自分自身で証明できた

――最後に、Coccoさんにとってこの映画はどんな作品ですか?

Cocco : 夢がかなうっていうことを証明できた作品、かな。私にはバレリーナになりたかったけど、なれなかったっていう挫折感が今もまだあって。だから「頑張ればかなう」って言われても素直に受け取れない。頑張ってもかなわない人のほうが多いことも知っているから。でも、25年間待って、会える人がいた。人生で初めて願ったことがかなった。頑張ってなんとかやってきて、ここまで生きてきてよかったって思えた。私にとってすごく大切な作品です。

■プロフィール
Cocco(こっこ)
沖縄県出身。シンガーソングライター。1997年「カウントダウン」でCDデビュー。2011年『KOTOKO』で映画初主演。2014年には「ジルゼの事情」で舞台初主演を果たす。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
第39回日本アカデミー賞にて2年連続で最優秀助演女優賞に輝いた黒木華を主演に迎えた岩井俊二監督最新作。黒木扮する派遣教員の皆川七海が、なんでも屋の安室に奇妙なアルバイトを斡旋される過程で起こる出来事を描いたヒューマンドラマ。共演者には綾野剛、Coccoらが名を連ねる。2016年3月26日から全国劇場公開され、さらにひかりTVはじめ  各オンデマンドでも「リップヴァンウィンクルの花嫁」配信限定版を同時配信。詳細は『リップヴァンウィンクルの花嫁』公式ページでご確認ください。
日本映画専門チャンネル『岩井俊二劇場』
スカパー!や全国ケーブルテレビで放送している日本映画専門チャンネルにて、映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』公開を記念し、岩井俊二監督のフィルモグラフィーを辿る特集『岩井俊二劇場』を放送中!長編映画デビュー作『Love Letter』から、『四月物語』、『リリイ・シュシュのすべて』、『花とアリス』など最新作に繋がる岩井ワールドをまとめて堪能できる。放送スケジュール、ご視聴方法詳細はチャンネル公式ページでご確認ください。

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