ルータ事業に参入して20周年を迎えたヤマハ。もともと同社はどんな思いをもってルータ事業に取り組んできたのだろうか? 販売チームとして事業立ち上げに携わった住友商事の福田徹也氏(メディア・生活関連総括部 部長代理)と、ティーガイアの福井信之氏(執行役員 ソリューション事業本部 副本部長)に当時を振り返ってもらった。

──福田さんと福井さんは、事業立ち上げ当初からマーケティングと販売を進めてきました。そもそも始まりはどんなところにあったのでしょうか?

住友商事 メディア・生活関連総括部 部長代理福田徹也氏

福田氏:私はもともと住友商事の名古屋支社で、製造業の工場向け電気設備や住友電工と組んでLAN敷設といった事業を担当していました。90年末から在籍していましたが、ヤマハとは、材料を供給したり、ピアノ線や鋼材をいれさせてもらったりする関係です。電子デバイス事業部のハードディスク用薄膜磁気ヘッドの輸出をお手伝いしたこともあります。

そんなときに、IIJが東海支社を設立することになり、設立記念パーティーが開かれました。パーティーの場で、出席していた吉村さん、ヤマハの方々、上司の吉井さん(当時住友商事名古屋支店次長)と輪を作って議論を始めました。「これからのインターネットの世界に向けて新事業を立ち上げる」「ルータはどうだ」「住商は何をしてくれる」といった話です。話は大きく盛り上がり、その場で「やるぞ」ということになりました。

福井氏:当時は、インターネットという言葉が新聞に載らない日はないという時代です。時代の変わり目の中で、何か新しいことができるんじゃないか感じたのだと思います。パーティーが終わってから、あらためて吉井さんと提案に赴いて、具体的に動き始めました。

──すぐに始めるほどの勢いがあったのですね。

福田氏:ワクワクする半面、ちょっと怖い部分もありました。住友電工と組んでLANを手がけていてわかっていたのは、ネットワークのトラブルというのは本当に頻繁に起こるということです。住商グルーブにも住商エレクトロニクスや住商データコムなど、当時からネットワーク機器を扱っているベンダーがあって、彼ら自身も海外ベンダー製品を扱うなかでネットワークの苦労を知っていました。そんなとき、ヤマハがルータを出して、それを我々が扱うということに対して、見えない不安のようなものがありました。プロのベンダーですら手こずっているのに、ある意味素人が、体制が不十分なままで手掛けていいものかと。

ティーガイア 執行役員 ソリューション事業本部 副本部長 福井信之氏

福井氏:実際、上層部ではトラブル対応を懸念する声があったそうです。それでもあえて「チャンスだからやろう」となったのは、当時の上司の吉井さんの熱意が大きかったためだと思います。体制づくりのために、住商データコムのメンバーからもアドバイスをもらいました。

福田氏:ただ、初めは不安がありましたが、実際の製品を見たら「すごいな」となりましたね。機能を絞ってこの価格で出すなら、インパクトは大きいだろうと。IIJや東京の情報通信事業部の事前のマーケティングやアドバイスもあり、次第に「これはイケる」という確信が持てるようになっていきました。

──サポート体制やトラブルへの対応はどうされたのですか?

福田氏:技術サポートは急務でしたから、専門スタッフを確保するについては、住商グループのいろんな部署に協力を仰いだり、社外の人材紹介会社にコンタクトをとったりしました。検証のシステムづくりではグループ企業のネットワークの運用をしていた住商テレコムにお世話になりました。

福井氏:新製品の発売は3月でしたが、同社からは積極的に人を出して発売前から着任していただき当初からの技術問合せ等に備えました。

福田氏:当時の販売窓口は住商マシネックス中部(SMC)でしたが、SIer経由でトラブル報告はありました。4月に着任したSMC技術責任者の谷山さん(現:匠技術研究所社長)と一緒に対応したり、ヤマハの方に来ていただいたりして、私もトラブル対応で地方出張にも行きました。

福井氏:結果としては、長期に技術トラブルを抱え込むことはなかったと思います。いろいろな情報をオープンに開示していましたし、互いの連携が良くヤマハの対応も迅速でしたから。