"周産期医療"の現場を描いた、鈴ノ木ユウの医療マンガ『コウノドリ』。この秋からテレビドラマ化されている本作。毎回妊娠・出産のリスクや苦難など、社会性のあるテーマを設定してリアルに描き、原作とともに大きな反響を呼んでいる。

そこで、妊娠前に知っておきたいお産のリスクやトラブルとその対処法について、産婦人科医の疋田裕美先生に訊ねた。

高齢だけでなく若すぎる出産も危険

妊娠・出産に伴うトラブルやリスクには様々な要因が挙げられるが、そのひとつが妊婦の喫煙・飲酒。疋田先生によれば、特に「喫煙は流産や早産を引き起こしやすく、前置胎盤や常位胎盤早期剥離といった妊娠期の異常につながる確率が高くなります」と言い、喫煙や飲酒による胎児への影響は明らかで、低出産体重児・神経発達障がいの可能性を指摘する。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社 『コウノドリ』2巻 Track.7 喫煙夫婦(前編)
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次に挙げられるのが、年齢によるリスク。よく言われる高齢出産だ。

「初産で分娩時に35歳以上である場合を高齢出産と呼びます。高齢出産のリスクは染色体異常が増加するので、自然流産の割合が高くなることです。また、妊娠中に合併症を伴いやすく、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、子宮内胎児発育不全などの頻度が上昇します」と疋田先生。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社 『コウノドリ』5巻 Track.17 卵子提供
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一方、年齢に関しては若すぎても危険だ。疋田先生は次のように警告する。

「15歳未満の妊娠の場合、子宮が未発達であることが多く、難産になったり、低出産体重児になりやすく、周産期死亡率が上昇すると言われています。また、あまりに若くして妊娠すると、教育の機会が減少し、まだ精神的にも母親としての自覚が乏しく、経済的にも困窮する場合が多いので社会的支援が不可欠です」

(C)鈴ノ木ユウ/講談社 『コウノドリ』2巻 Track.4 未成年妊娠
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妊娠4~6週に風疹に感染すると100%障がいを及ぼす

また、妊娠中の感染病も胎児に影響を及ぼすことがある。中でも妊婦が特に注意しなければならないのが"風疹"。疋田先生によると、母親が風疹に感染したことにより、赤ちゃんが重い障がいを抱えてしまう確率は、妊娠週数が早いほど高く、妊娠4~6週では100%、7~12週では80%、13~16週では45~50%という高確率。17~20週では6%、20週以降では0%と中期以降は低くなっていく。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社 『コウノドリ』4巻 Track.14 風疹
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産婦人科の"闇"にスポットを当てた『透明なゆりかご』とは

そして、産婦人科を舞台にした医療マンガで最近もうひとつ話題となっているのが『透明なゆりかご』。中絶により、摘出された胎児が小瓶に入れられるまでをしっかり描いており、『コウノドリ』以上にシリアスな作品だ。作者・沖田×華が看護科の高校3年生の時、産婦人科医院の見習い看護師として働いた自らの体験をもとにマンガ化したもので、中絶された胎児の処置など、産婦人科の"闇"の部分にスポットを当てている。

(C)沖田×華/講談社 『透明なゆりかご』1巻 第4話 胎児の光
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疋田先生に堕胎によるリスクについて聞いてみると「妊娠初期での堕胎は、掻爬手術の時に子宮内膜が傷付くため、次回の妊娠に影響を及ぼす可能性があります」とコメント。また、妊娠12週以降での堕胎は、人工的に陣痛を起こし分娩させるのと同じように胎児を摘出することになり、子宮頚管が未熟のために傷つくなどのリスクがあると説明する。

(C)沖田×華/講談社 『透明なゆりかご』2巻 第13話 子供嫌いの看護師
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こうした理由以外にも、抗リン脂質症候群や膠原病などの患者である場合に、胎児発育ができずに流産しやすくなる傾向があるという。一方、死産や堕胎された新生児や胎児は、その後どのように扱われるのだろうか。疋田先生は次のように答えてくれた。

「妊娠12週以前は、産汚物等処理営業の許可を得た業者に病院が委託して火葬処理が行われています。それ以降は、自然死産、人工死産ともに手続きが必要です。まず病院から死産証書(死産届)を市区町村役場へ提出し、死胎火葬許可証をもらって各々火葬することになります」

このように、妊娠・出産には予期せぬトラブルというのは珍しいことではない。疋田先生は、それゆえに定期的な妊婦健診の受診が大切であると強調する。だが一方で、「健診を受けても異常を発見できないこともあります。だから、まずはお母さんが自分の体の声に耳を傾けること。そして、異常を感じたらすぐに医院で受診しましょう」と、妊娠中は予期せぬトラブルがつきものと心得、早期に対応することで大きな問題を回避するよう努めることを推奨する。

今回、疋田先生によって語られた妊娠・出産にまつわるリスクやトラブルについてのエピソードやシーンは、『コウノドリ』や『透明なゆりかご』でもストーリー性を伴ったかたちで度々登場する。これから妊娠・出産を考える女性はもちろん、この世に尊い命を受けたひとりとして、老若男女問わず、誰もがきっと生命や死の意味を考えさせられる作品となるであろう。

『コウノドリ』(左)、『透明なゆりかご』(右)

なお、これらの漫画の購読が可能な電子書籍サイト「ebookjapan」は、パソコン、タブレット、iPhone/iPod touchなどさまざまな端末に対応している。いつでもどこでも読むことが可能なため、年末年始の長期休暇にぜひ活用してみてほしい。


(マイナビニュース広告企画:提供 株式会社イーブックイニシアティブジャパン)

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