去る11月12日、日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)主催による「CDOカンファレンス 2015~デジタルビジネス時代を切り開く~」が開催された。今回はその中から、リアライズによる「全社横断的にデータマネジメントを推進するためのC△Oに期待する役割」セッションを紹介する。

CDOはまずマスタデータの品質にこだわりを

去る11月12日、日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)主催による「CDOカンファレンス 2015~デジタルビジネス時代を切り開く~」が開催された。本イベントは、CDO(Chief Data Officer:最高データ責任者)の戦略的位置づけや役割を考える日本初のイベントだ。本稿ではその中から、リアライズ ソリューション開発部 部長 兼 マーケティング・営業部 部長櫻井崇氏が登壇したセッション「全社横断的にデータマネジメントを推進するためのC△Oに期待する役割」の内容を紹介する。

リアライズ ソリューション開発部 部長 兼 マーケティング・営業部 部長の櫻井崇氏

櫻井氏はまずCDOに関して「定義としては、データガバナンスやデータ管理について、最終的な責任を持つ経営幹部といえます。全社的な観点から、データ管理戦略の策定、データ品質やデータ処理プロセスに関する方針策定などを“組織横断”で推進する役割を持つわけです。データを資産として管理し、組織を横断したデータ利活用で経営に貢献する。これは一人では行えませんから、CDOはこうしたチームの責任者といえます」と語る。 さらに「もちろんわざわざCDOを立てる必要など無く、トップがCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)でも構わないのですが、こうした役割を担うチームが存在すること自体が重要です」と続けた。

それでは、日常業務のどのようなシーンでデータの大切さを感じるのか。 たとえば、上司から翌週の経営会議までに、四半期の到達地点や年度の着地点が分かるレポート作成を依頼されたとする。そこで必要なデータを収集・分析、レポートにまとめて上司へ提出したところ、「本当?」と聞かれたとする。ここで明確に答えられれば良いのだが、実際には自信を持って説明できることが少ないのではないだろうか。

「データ活用の前提として、求められているのは"目の前のビジネスに活かす"ことです。データの品質向上、データ統合、クレンジングなどの手法に目を奪われがちですが、それ自体は目的ではありません」と語る櫻井氏。

確かに最近はデータドリブン関連のツールが数多く提供されており、中には大規模なシステムを構築することなく、オフィス内のPCにインストールするだけで分析結果が得られる製品も登場している。しかし、リアライズにはこうしたツールの分析結果に疑問を持ったり、裏付けが得られないといったりした相談も多いという。

櫻井氏は「こうしたお客様に実情を聞いてみると、トランザクションやログデータ自体がおかしい、データの持ち方が悪い、といった原因はあまりみられません。多くの場合、そもそも類似のマスタデータが複数存在点在していたり、整合性がとれなくなっていたりすることにありますのです。そこでCDOがまずやるべきなのは、マスタデータの品質にこだわりを持つことです」と語る。

入力チャネルの多様化とデータ分散が品質維持を困難に

続いて櫻井氏は、なぜマスタデータの品質にこだわる必要があるのかについて二つの要因を解説した。

まず一つ目は、マスタデータの生まれてくるチャネルが多様化している点にある。昔のようにホストコンピュータが全盛の頃は、データ入力の窓口も1ヶ所だった。しかし現在は、携帯電話やスマートフォンなど実に多彩なデバイスから、しかも不特定多数の人々がデータ入力を行うようになっている。データオーナーが増えれば、それだけデータの品質を保つことが難しくなるのは明らかだ。ましてや一般の消費者がデータオーナーとなるECサイトでは、より困難を極めるだろう。

二つ目は、マスタデータ自体が分散している点だ。これはマスタデータのコピーを使いまわしに加え、社外とデータがつながる時代になり、意図しないデータとの連携などで分散する場合もある。また櫻井氏は「そもそも社内だけを見ても、マスタデータへのニーズが異なっているケースは多いといえます。たとえば事務の担当者と、意思決定用にレポートを参照したい経営者では、マスタに求める内容が基本的に違います」と語る。

会場では多くの参加者が熱心に聞き入っていた

一般的に事務担当者は、現在携わっている注文や商品を顧客に届けることに注力するため、どうしても綺麗にデータを入力しようという意識は持ちづらい。そこでマスタデータの品質を維持するには、データオーナーとして大切なデータを入力している、ということを何度も教え、認識してもらうような取り組みが必要になる。これが最初の一歩だ。

まず目指すべきは「調和型」のマスタデータ運用

それでは、意思決定に欠かせないマスタデータの運用方法とはどのようなものか。 マスタの運用方法として櫻井氏は「解析型」「調和型」「統合型」の3種類を挙げる。 まず解析型は、複数のシステムにあるマスタデータを統合マスタへ集約する従来型の方法だ。これはデータを収集し、分析に活用するというデータウェアハウスシステムの発想であり、実際に事例としても非常に多いのだが、統合や更新は各システムで行うため、統合マスタの管理が難しくなる。

次に調和型は、統合マスタと周辺システムの双方でメンテナンスを実施し、更新結果を同期・共存させるというもの。タイミングによっては統合マスタのデータが最新でないケースもあり得るが、項目などを絞って統合マスタ化を行うため、比較的構築が容易といえる。

最後に統合型は、マスタデータの登録・更新・削除などを統合マスタで一元管理し、そこから複数のシステムへマスタデータを配信するというもの。これにより、統合マスタの情報が常に正となり、最新情報が確認しやすくなる。ただし、マスタ管理の運用が大きく変わることになり得るため、業務システムへのインパクトが大きくなる。

マスタの運用方法について櫻井氏は「弊社のお客様からも、解析型から統合型へ移行したいというご相談が数多くあります。しかし実情として、各業務部門と入力担当者の調整など、いきなり解析型から統合型を目指すには課題が多すぎます。そこでお勧めしているのが、データ収集時に調整機能のようなものが設けられる調和型です。まずはこの調和型を目指し、各システムのリプレイスごとに入力の役割を統合マスタへと移行していく、といった方法がベストでしょう」と語る。

ここから櫻井氏は、データクレンジングや名寄せなどを実際にどのような方法で行うべきなのか、セミナー参加者限定で紹介。そこにはデータマネジメントを専門に手がける同社ならではのノウハウが活かされており、参加者たちは真剣な眼差しで解説に聞き入っていた。

最後に櫻井氏は「IT部門が主導で行うと忘れがちなのが、業務部門の担当にデータを見てもらい、どれが本当に正しいデータなのかを判断してもらうことです。データマネジメントにはツールだけでなく、多くの人々の協力が必要ですから、ぜひ業務部門を巻き込んで横断的に実施することを念頭に置いてください」とアドバイスし、講演は幕を閉じた。

(マイナビニュース広告企画:提供 リアライズ)

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