アプレッソは7月22日、「データ活用セミナー ~企業価値は「データ活用」で決まる! 最新事情と事例から新たな企業価値を創出する~」を開催。"データ活用"をテーマに、「経営」「業務」「IT」 の視点から、トレンドや課題、企業の取り組み、成功のヒントなどを紹介した。

会場の様子

「精度の高い予測を高速に回すことが大事」無印良品 奥谷氏

株式会社 良品計画web事業部 部長 奥谷孝司氏

最初の基調講演には、良品計画web事業部部長の奥谷孝司氏が登壇。「無印良品ネットストア『お客様と時間を共有する』CRM & Social Media戦略『MUJI DIGITAL Marketingの展望』」と題し、無印良品ネットストアのCRM戦略とデジタルマーケティング施策の成果を披露した。

小売業では現在、O2Oやオムニチャネル施策を支えるためのデータ活用が積極的に進められている。なかでも良品計画は、在庫情報の開示やネットとリアルを融合した先駆的な施策の実施で知られ、それらを長きにわたって推進してきたのが奥谷氏だ。

奥谷氏はまず、オムニチャネル時代における「顧客時間の重要性」を指摘。商品の検討から購入、試用、友人との共有、ブランドロイヤリティ獲得までを含めて顧客の時間を可視化し、そこに入り込むことが求められていると説明した。そのためのツールが「MUJI passport」と呼ばれるスマートフォンアプリだ。同アプリにより、ネットとリアルの区別なくファンとのコミュニケーションを図り、持続的な来店客数増、マーケティング施策効果の可視化を実現する。

具体的には、チェックインによるポイント付与やクーポン、期間限定セール「良品週間」の告知、オウンドメディアのニュース配信、会員証などの機能を持ち、顧客との重要なコンタクトポイントとなる。現在440万人が有しており、カード会員、ネット会員、ソーシャルメディアを連携するハブとしても機能する。

成果としては、顧客の属性や行動について、従来はアンケート調査などを行ったりして把握していたものが即座にわかるようになった。たとえば、"人をだめにするソファ"としてネットで話題になったソファは、20代男性が多く購入していた。このことは、メインターゲットである30~40代以外の市場を開拓するヒントになった。また、地理情報の活用にも積極的だ。アプリによるチェックインをGPSで把握し、500mメッシュ地図と照合して、リアルな商圏把握に役立てている。そのほか、プロモーションによる効果の定量化、アプリからの送客、休眠層へのリーチ、媒体費の削減など、メリットは多いことを強調した。

「データ分析とマーケティングの間にはまだまだ大きなギャップがあると思います。大切なことは、顧客データを新しい経営数値と認識し、そこから逃げずにデータと向き合うことです。具体的には、精度の高いマーケティング施策を高速にまわしていくこと。それによりデータを蓄積し、さらに予測精度の高い施策が実施できるようになります」(奥谷氏)

「データ連携HUB構築の3つのポイント」アプレッソ永田氏

株式会社アプレッソ 事業推進本部 マーケティング企画部 部長 永田雅也氏

続いて、主催者のアプレッソで事業推進本部 マーケティング企画部 部長を務める永田雅也氏が登壇。「クラウド/ビッグデータ時代の企業情報システム『データ活用基盤』の在り方」と題し、近年のデータ活用のトレンドや課題、代表的な企業の取り組み、成功のヒントを概観した。

永田氏は、データを取り巻く状況として、大きく3つのトレンドがあると指摘した。1つめはスピードだ。商品のライフサイクルが短くなり、データ活用に積極的な企業ほど好業績を上げる傾向が高まってきた。2つめは多種データだ。行政や民間企業がさまざなデータを公開するようになり、データ売買の市場も生まれつつある。3つめは大量データだ。すべての産業でデータ流通量が増加しており、IoTやインダストリ4.0といった新しい取り組みも活発だ。

こうしたなか、企業は、データの収集、蓄積、分析の3つのプロセスを整備し、データを活用していくことがますます求められるようになった。なかでも、課題になっているのが、データの収集だ。データの収集では、データの正規化、データの有効性、データの多様性/場所という3つを考慮して取り組みを進める必要があるが、これらをどのように整備するかが難しいという。

「ポイントは、つくらずにつなぐ、柔軟に拡張できること、いつでもとりだせることの3つ。それを踏まえながら、データを一元的に集約する基盤であるデータ連携HUBを構築することが重要です」(永田氏)

これら3つのポイントはそれぞれ、スピード、多種データ、大量データという3つのニーズに対応する。そして、データ連携HUBの構築において、これらの3つは、ノンプログラミグ、接続アダプタ、高速処理機構という機能として実装することがポイントになる。これを実現したのが「DataSpider Servista」だ。永田氏は、ユーザー事例を挙げながら、DataSpider Servistaの機能を詳説。データ活用でキモとも言えるデータ連携HUBの構築の重要性を重ねて強調した。

「アウトカム、解析単位、説明変数で分析せよ」データビークル西内氏

株式会社データビークル 取締役 西内啓氏

基調講演2には、データビークル取締役 西内啓氏が登壇。西内氏は「統計学が最強の学問である」の著書で知られる統計学の専門家だ。西内氏は「データを価値に変えるには」との演題で、データ分析で起こりがちな課題、価値を引き出すための分析に必要な3つのポイントを紹介した。

西内氏はまず、PDCAサイクルについて、本来は、データに基づいて意思決定が行われるべきだが、現実のビジネスはさまざまな要素がボトルネックになり、改善のサイクルがまわらないことを指摘した。ボトルネックの発生要因は、データの整理がされておらず連携ができないことや、機械学習の専門家などがITや現場に無知なこと、経営者が数字嫌いで都合のいいように数字を読み替えてしまうことがあげられる。こうした要因を受け、現場担当者に混乱が生じてしまい、うまくPDCAサイクルがまわらないという。

こうしたことを防ぐためにAmazonなどの企業は、意思決定者を介在させず、データから直接、現場を改善できる仕組みを整えている。こう言うと先進的に思えるが、この元祖は日本の製造業だ。たとえば、トヨタは「カイゼン」や「QC7つ道具」などで原因を探り、データをとり、品質の向上につなげてきた。いますべてのオフィスで行われるべきことも、こうしたデータを価値に変える活動だという。

そのうえで、西内氏は、データの分析方針(比較軸)として、「アウトカム」「解析単位」「説明変数」という3つのポイントが重要だと指摘した。アウトカムとは「"望ましさ"を具体的に定義したもの」で、売上や在庫コストなどのこと。解析単位とは「"望ましさ"を比べる単位」で、顧客、従業員、商品などのこと。説明変数とは「"望ましさ"を左右しうる特徴」で、属性、行動、心理特性などのことを指す。

たとえば、アウトカムとして「売上」を設定すると、「売上の高い顧客/低い顧客」「売上額の高い商品/低い商品」が比較できる。この場合、「顧客」や「商品」が解析単位となり、顧客の「属性」や「行動」などが説明変数になる。

「この3つが整理できていればツールが答えを教えてくれます。それで答えを得たら、アクションは3パターンしかありません。動かすか、ずらすか、最適化するかです」(同氏)

たとえば、「来店」というアウトカムに対して、説明変数が「心理要因」「広告接触」「ブランド力」など動かしうるものであれば、広告を打ったり、ブランド訴求をしたりして、それを動かす。もし、説明変数が「性別」「年齢」「世帯収入」など動かせないものであった場合は、異なる性別や年齢層にターゲットを変えるなどして、ずらす。さらに、説明変数が「季節」や「天候」など、ずらすこともできない場合は、当日の接客人数を減らすなどして、最適化する。

「こうした打ち手のインパクトは前年比でせいぜい数%の業務改善しかなりません。しかし,全社規模でみれば数%でも営業利益で数億円規模になることもあります。分析結果のレポートを見て、さまざまな打ち手を早いタイミングで繰り出すことが大切です」

そのうえで、西内氏は、スピーディーに打ち手を繰り出すためにデータビークルで提供しているツール「Data Diver」の特徴も紹介した。