2014年もいよいよ年の瀬。昨今の経済状況で懐の暖かさ具合はさまざまかと思うが、皆に平等に訪れる初売りの時期が刻々と近づいている。今年も自作PC市場にはさまざまなパーツが登場した。特に定格動作クロック4.0GHzのDevil's Canyonや驚異のワットパフォーマンスを実現した第2世代Maxwellなどは、その性能で不況を吹っ飛ばすヒット商品となっている。だが今回は、そんなハイエンドPCからちょっと視点を変えて、特定用途に特化した家庭向け自作PCについて考えてみたいと思う。

本稿で自作マシン。コンセプトはオーディオ専用無音PC

用途に合わせた超小型PCでコンテンツを気軽に楽しむ

昨今はPCが広く一般家庭に行きわたり、コモディティ化も大きく進んだ。ゲームや動画などのコンテンツを極限まで楽しもうと思えば性能はいくらあっても足りないくらいだが、逆に日常でそこそこ高品質に嗜む目的ならば、スペックはそれほど重要ではなくなっている。むしろそこそこのPCを用途に合わせて用意したほうが捗るシーンは少なくないだろう。しかし、ミドルタワーを何台も用意していてはスペースがいくらあっても足りない。そこで今回は、Mini-ITXマザーボードと超小型ケースを使った構成を考えてみたい。

ケース1:ハンディカムお父さんのエンコード&編集マシン

ハンディカムで撮りためた一年の映像は、年末年始こそ編集の絶好のタイミング。実家に帰省して暇を持て余している時間は、まさに動画編集のための時間だ。だが、ノートPCに搭載されたCPUではエンコードに時間がかかるうえ、編集ソフトの動作も緩慢になりがち。では、キャリーケースに突っ込んで持っていける小型編集用PCなどを組んでみてはいかがだろうか。TDPの低い「Core i7 4790S」のようなCPUであれば、工夫次第で小型ケースにも搭載できるはず。これは「GA-H97N-WIFI」のようなマザーボードに取り付ければ、実家のテレビのHDMI入力に接続し、無線LANの設定を行うだけで高速エンコード&編集環境が完成する。

802.11ac対応無線LANやINTEL製LANコントローラを搭載したmini-ITXマザーボード「GA-H97N-WIFI」

ケース2:小型でもハイスペック! テレビでゲームを楽しむコンソール

家族みんなが休めるお正月は、小型のゲーミングPCを使ってリビングの大画面テレビでゲームを楽しみたい。最近のゲームは、家庭用ゲーム機でもPCでも楽しめるようマルチプラットフォームで発売されることが多く、PCでも家族で遊べるゲームが増えてきている。そしてゲームプラットフォームのSteamでは、ゲームコントローラーでの操作を前提としたインターフェース「Big Picture」を選択でき、リビングでのゲームプレイも簡単だ。リビング設置用ゲーミングPCを組むならば、ゲーミングマザーボードと強力かつ小さなグラフィックスカードを選びたい。このような用途には、ゲーミングシリーズのmini-ITXマザーボード「GA-Z97N-Gaming 5」がぴったりだろう。これにCore i5 4690SのようなCPUと、NVIDIA GeForce GTX970というハイエンドGPUをわずか17cmというコンパクトな基板に収めた「GV-N970WF3OC-4GD」を積めば、コンパクトハイエンドゲーミングPCの出来上がりだ。

Killer E2200やALC1150など、ゲーマー向けの機能を備えるmini-ITXマザーボード「GA-H97N-WIFI」

17cm基板にハイエンドGPUであるGeForce GTX970を搭載したグラフィックスカード「GV-N970WF3OC-4GD」

ケース3:コンパクト&ファンレス構成で静かなオーディオ再生用PC

PCでオーディオを楽しむ際に最大の敵となるのが騒音だ。いかに優れたオーディオインターフェースとスピーカーを使用しても、ファンの音が鳴り響いていては聴感上のダイナミックレンジが狭くなってしまう。密閉型ヘッドフォンを利用するのも手だが、最近のハイエンドヘッドフォンには優れた開放型が多く、悩ましいところ。しかし考え方を変えれば、オーディオ再生はそれほどスペックを必要としない処理だ。ならばファンレスで運用できる小型PCを組んでしまえばいい。今回は、往年の高級オーディオ機器での視聴を目的に、このオーディオ再生用PCを実際に組み上げてみよう。

長年愛用している筆者宅のスピーカー、ウィルソンベネッシュ「ARC」。結婚後はめっきり活躍の場が減ってしまった

こちらも今となっては懐かしい、ゼンハイザーの「HD590」と、グラドの「SR-225」。ともに開放型だ