2014年8月30日、IntelのハイエンドCPUが刷新された。新たに登場した"Haswell-E"はハイエンドモデルのCore i7-5960Xが8コア/16スレッド、ミドル/ローモデルのCore i7-5930K/5820Kが6コア/12スレッドと、IvyBridge-Eからさらにコア数を増加させている。さらに、新たにDDR4メモリに対応している点や、ハイエンドプラットフォームならではのPCI-Expressレーン数の多さが魅力となり、けっして安くないシステムながらも高い人気となっている。このHaswell-E発売を皮切りに、BTO PCメーカー各社からさまざまなPCが発表されたが、今回はサイコムが提供する「Silent-Master Pro X99」に注目したい。

静音を最優先に考えたという"超静音PC"「Silent-Master Pro X99」

サイコムは、違いのわかるPCユーザーや法人からの口コミで、人気を広げていった老舗BTOメーカーだ。その技術力は高く、経験豊富な自作ユーザーも舌を巻く美しい配線や、独自の選別と厳密な検証により高い安定性を約束するメモリのポリシーなど、独自のノウハウには事欠かない。さらに、CPUの水冷化だけでなく、3Dグラフィックスカードを独自に水冷化した「Aqua-Master series」や、パーツメーカーと協力し、同一メーカーのパーツを重点的に使用した「Collaboration Model」といった、斬新なアイデアによって生まれた特別モデルもラインナップされており、初心者はもちろんのこと、自作に詳しいユーザーからも熱い支持を受けている。

そんなサイコムが「"静音"の限界に挑戦した」とうたったのが、超静音PC「Silent-Master Pro X99」。Haswell-EのTDPは、そのコア数から推察される通り140Wと非常に高い。またIntel X99 Expressチップセットもまた発熱量の多いチップだ。しっかりと冷却するだけでも大変なこのシステムを、どのように静音化しているのだろうか。サイコムにお願いして「Silent-Master Pro X99」の実機をお借りしたので、詳しく確認してみよう。

PC内部の音を外部に漏らさない堅牢なケース

「Silent-Master Pro X99」は、グラファイトグレーのフロントドアが印象的な、Antec製のミドルタワーケース「P100」を採用したデスクトップPCだ。ケース前面のフロントドアの内側には、14cmファンを2基搭載することができ、本機ではうち1基を装備している。引っ張るだけで簡単に取り外せるフィルターが取り付けられており、PC内部へのほこりの侵入を防いでくれるだろう。なおフロントドアはダブルヒンジ構造となっており、270度の開閉が可能。連続使用時も邪魔にならない。

グラファイトグレーのフロントドアが精悍な印象を与える、Antec「P100」

フロントファンの前には、ケース内部にほこりが侵入するのを防ぐフィルターを備える

ケース前面には、吸気用に14cmファンが1基搭載されている

フロントドアはダブルヒンジ構造を採用。270度の開閉が行える

電源はCPUなどの熱の影響を受けにくいボトム配置となっており、重量のある電源がケース下部に存在することで、重心の安定化に貢献している。ケース背面には12cmファンが取り付けられており、排気は基本的にここから行う。バックパネルはPS/2ポート×2、USB 2.0×4、USB 3.0×4、e-SATAポート、ギガビットLAN端子(Intel I218-V)、光出力付きHDオーディオ端子、CMOSクリアボタンという構成。チップセットにIntelのX99 Expressが採用されているため、CPU内蔵グラフィックス用の映像出力端子は存在しない。グラフィックスカードの出力端子はDVI-I、HDMI、Displayportとなっている。電源ボタンやUSB 2.0/3.0、音声入力/出力などのフロントパネル用端子は前面最上部にまとめられており、スマートフォンなどを天板に置いて充電などを行うことが可能だ。またケース底部の電源ファン用吸気口にもフィルターが取り付けられており、床のほこりの吸い上げを防止してくれる。

ケース背面の様子。電源はボトム配置となっており、吸気も底部から行う

Haswell-Eはグラフィックス機能を備えていないため、バックパネルのI/Oには映像出力端子がない

電源ボタンなどのフロント用I/Oは、前面の最上段に設置されている

ケース底部にある電源ユニットの吸気口にもフィルターを備えている

ケース上部には14cmファンを2基取り付けられるが、静音モデルである本機ではフタがされている。フタの内側はウレタンフォームによる防音加工が施されているため、CPUファンのノイズを効果的に抑えてくれるだろう。ケース左右のパネルに通気口は存在せず、こちらも内側にウレタンフォームが取り付けられている。ケース内部のフレームも非常に強固に設計されており、しっかりと振動を抑え、共振ノイズを抑止してくれそうだ。また、サイコムの人気の秘密の一つであるケーブルの配線は、結束しすぎないスマートな取り回しで、お手本にしたくなるほど完成度が高い。エアフローの妨げにならないことは間違いなく、パーツの増設時も邪魔にならないだろう。

ケース上部には14cmファンを取り付けられるスペースがあるが、本機では騒音を減らすためにフタがされている。なおフタの内側は防音加工が施されていた

ケースの左右のパネルに通気口などはなく、シンプルなスチールの板となっている

左右のパネルの内側にも、防音加工が施されている

ケース内部の様子。ストレージを支えるフレームは太く、しっかりと共振を抑えてくれそうだ

サイコムのケーブル配線の技が光るマザーボードの裏側。もちろんエアフローを妨げることなどないだろう

静音性を重視した厳選パーツを各所に使用

続いて、本機のスペックを確かめていきたい。CPUはHaswell-EのミドルモデルとなるCore i7-5930K。6コア/12スレッドを搭載しており、動作クロックは3.5GHz(ターボ・ブースト機能利用時最大3.7GHz)だ。下位モデルとの最大の違いはPCI-Expressのレーン数となり、Core i7-5820Kの28レーンに対し、40レーンという数を誇る。チップセットはX99 Expressとなり、ASRockのX99 Extreme4を採用。ハイエンドプラットフォームだけに、ストレージポートの数やPCI-Expressスロットは非常に充実している。メモリは最新規格であるDDR4-2133の4GBを4枚、計16GB搭載しており、クアッドチャネルにて動作。アクセス速度はコンシューマ向けPCでは現在最速クラスを期待できる。

マザーボードはASRockのX99 Extreme4が採用されている

Crucial製DDR4-2133の4GBメモリを4枚搭載し、16GBをクアッドチャネルで動作させている

グラフィックスカードには、NVIDIAのGeForce GTX 750 Tiが採用されているASUS製のSTRIX-GTX750TI-OC-2GD5を搭載。STRIXシリーズのファンは、GPU温度が50度を超えたときに回転が始まる超静音仕様となっており、GPUの使用率が低いときにはゼロノイズで動作する。またGPUにヒートパイプを密着させたDirectCU IIクーラーにより、ファンが回っても回転数を低く抑えることに成功している。ストレージはSSDとHDDの2台構成。試用機ではCrucialのM550 SSD 128GBと、SeagateのBarracuda 500GBが搭載されていた。電源はCorsairの650W製品RM650。80PLUS GOLDの認証を取得した高効率電源となる。こちらも負荷率が40%未満のときはファンが停止するモードを備えており、PC全体の静音化に貢献してくれるだろう。

グラフィックスカードはGeForce GTX 750 Ti。セミファンレス設計が特徴となるASUSのモデルを採用している

試用機に搭載されたSSDはCrucialのM550 SSD 128GB。最新モデルにはやはりSSDが欠かせない

データ用としてSeagate Barracuda 500GBのHDDを備える

高効率、フルプラグイン、セミファンレスなど見所の多い、Corsair製電源RM650を装備

Core i7-5930K+X99 Express+DDR4メモリを、高品質な静音パーツで包んだ「Silent-Master Pro X99」。その構成だけでも騒音の少なさが期待できる。次ページでは、本機の目玉となるその静音性について検証しよう。