2011年に発売された“SandyBridge-E”は、メインストリーム製品にはいまだ存在しない6コア12スレッドのラインナップを備えたIntelのハイエンドCPUだ。対応するチップセットである「X79 Express」との組み合わせによって40レーンものPCI-Expressを利用することができ、マルチGPUの性能を最大限に発揮できた。その後2013年には“Ivy Bridge-E”が発売され、X79 Express環境はマルチコア・マルチスレッド・マルチGPUを必要とするユーザーにとっての最高の選択肢として、3年間にわたりコンシューマ製品の頂点として君臨し続けた。

そのIntelハイエンドプラットフォームが、8月29日(米国時間)に刷新された。新たに登場したチップセットは「X99 Express」となり、対応するCPUは“Haswell-E”ことIntel Core i7-5960X、5930K、5820Kの3製品だ。現行機種で最高峰のデスクトップPC環境を構築できるとあって、ハイエンドユーザーの注目度は高い。秋葉原の老舗パーツショップとして名高いTSUKUMO(ツクモ)のBTO-PCブランド「eX.computer」からも、さっそくHaswell-E搭載機が発売された。今回はその中から、「エアロストリーム RA9J-K62/XE」をカスタマイズしたモデルをお借りすることができたので、Haswell Refreshとの違いを含めてチェックすることにしよう。

静音性と冷却性を追求したとされるAeroStreamシリーズのケースを採用した試用機

eX.computerからもHaswell-E搭載PCが多数登場!

TSUKUMOから発表されたHaswell-E搭載機は5機種。CPUやマザーボード自体の価格も相まって、ミドルレンジ向けとなるHaswell Refresh + 9シリーズチップセット製品と比べると高価なモデルがほとんどだ。またCPUごとの価格差が大きいため、どのCPUを選択するかによって全体の価格も大きく変化する。Haswell-Eを選択する方にとっては釈迦に説法かもしれないが、単純に“WindowsやOfficeの動作速度を向上させたい”、“ゲームをより速く動かしたい”といった目的で上位CPUを選択しても、必ずしもその効果が見込めるわけではない点に注意したい。Haswell-Eは「用途に合わせた綿密な製品選び」を行うことによって、その真価を発揮するシリーズなのだ。

Haswell-E搭載機一覧

シリーズ AeroStream (エアロストリーム)
型番 RA7J-J62/XE
CPU Intel Core i7-5820K (6コア、定格3.3GHz、TB時最大3.6GHz)
チップセット Intel X99 Express (ASUS X99-S)
メモリ PC4-17000 DDR3 16GB (4GBx4)
グラフィック AMD Radeon R7 250X
ハードディスク HDD 1TB / SerialATAIII
光学ドライブ DL対応 DVDスーパーマルチ
電源ユニット CWT製 500W (80PLUS BRONZE認証)
ケース eX.computer ATXミドルタワー(EX1/598TA)
OS Windows 8.1 Pro / Windows 7 Professional 64ビット
構成価格 149,800円(税込・2014年9月上旬現在)
シリーズ AeroStream (エアロストリーム)
型番 RA9J-K62/XE
CPU Intel Core i7-5960X (8コア、定格3.0GHz、TB時最大3.5GHz)
チップセット Intel X99 Express (ASUS X99-S)
メモリ PC4-17000 DDR3 32GB (8GBx4)
グラフィック NVIDIA GeForce GTX 760
ハードディスク HDD 2TB / SerialATAIII
光学ドライブ DL対応 DVDスーパーマルチ
電源ユニット CWT製 650W、80PLUS BRONZE認証
ケース eX.computer ATXミドルタワー(EX1/598TA)
OS Windows 8.1 Pro / Windows 7 Professional 64ビット
構成価格 279,800円(税込・2014年9月上旬現在)
シリーズ G-GEAR
型番 GA7J-G62/XE
CPU Intel Core i7-5820K (6コア、定格3.3GHz、TB時最大3.6GHz)
チップセット Intel X99 Express (ASUS X99-S)
メモリ PC4-17000 DDR3 16GB (4GBx4)
グラフィック NVIDIA GeForce GTX 750
ハードディスク HDD 1TB / SerialATAIII
光学ドライブ DL対応 DVDスーパーマルチ
電源ユニット CWT製 650W (80PLUS BRONZE認証)
ケース G-GEAR ATXミドルタワー(62R3)
OS Windows 8.1 Pro / Windows 7 Professional 64ビット
構成価格 149,800円(税込・2014年9月上旬現在)
シリーズ G-GEAR
型番 GX9J-D62/XE
CPU Intel Core i7-5930K (6コア、定格3.5GHz、TB時最大3.7GHz)
チップセット Intel X99 Express (ASUS X99-S)
メモリ PC4-17000 DDR3 16GB (4GBx4)
グラフィック NVIDIA GeForce GTX 760
ハードディスク HDD 2TB / SerialATAIII
光学ドライブ DL対応 DVDスーパーマルチ
電源ユニット CWT製 650W (80PLUS BRONZE認証)
ケース G-GEAR neo ATXミドルタワー(CM690 II)
OS Windows 8.1 Pro / Windows 7 Professional 64ビット
構成価格 199,800円(税込・2014年9月上旬現在)
シリーズ G-GEAR
型番 GX9J-E62/XE
CPU Intel Core i7-5960X (8コア、定格3.0GHz、TB時最大3.5GHz)
チップセット Intel X99 Express (ASUS X99-S)
メモリ PC4-17000 DDR3 32GB (8GBx4)
グラフィック NVIDIA GeForce GTX 780Ti × 2 [SLI接続]
ハードディスク TOSHIBA製 256GB MLC. + HDD 2TB / SerialATAIII
光学ドライブ DL対応 DVDスーパーマルチ
電源ユニット Enarmax製 1000W (80PLUS PLATINUM認証)
ケース G-GEAR neo ATXミドルタワー(CM690 II)
OS Windows 8.1 Pro / Windows 7 Professional 64ビット
構成価格 469,800円(税込・2014年9月上旬現在)

下は14万円台から、多数のラインナップがさっそく用意されている。それぞれのモデルに込められたeX.computerのこだわりは次のページから紹介していくこととして、まずはHaswell-EそれぞれのCPUの特徴と、X99 Expressの進化ポイントについて解説していきたいと思う。

CPU選びのポイントはコア数とレーン数

Haswell-Eの3製品の違いは3点。1つ目はコア数、2つ目は動作クロック、3つ目はPCI-Expressレーン数だ。トップモデルとなるCore i7-5960Xの特徴は、唯一8コア/16スレッドを実現している点にある。この点のみで購入を決断する人も多いだろう。ただし8コアが発する熱を、最大放熱量の指針であるTDP140W以内に収めるのはやはり難しいようで、動作クロックは3.0GHz、ターボ・ブースト・テクノロジー(TB)動作時3.5GHzに抑えられている。ミドルレンジのCore i7-5930Kは、6コア/12スレッドとなり、動作クロックは3.5GHz(TB時3.7GHz)。Haswell-EではローエンドとなるCore i7-5820Kはといえば、こちらも6コア/12スレッド、動作クロックは少々下がって3.3GHz(TB時3.6GHz)。ローエンドでは4コアとなっていたSandyBridge-Eのラインナップと違い、最廉価モデルでも6コアが利用可能だ。しかしその分PCI-Expressのレーン数が削られており、5960Xと5930Kが40レーンを有しているのに対してCore i7-5820Kは28レーンと、マルチGPUを活用したい人には致命的な違いがある。コストの差も大きいため、非常に悩ましい製品構成だ。

CPUスペック一覧

Core i7-5960X Core i7-5930K Core i7-5820K
コア数/スレッド数 8コア/16スレッド 6コア/12スレッド
定格動作クロック 3.0GHz 3.5GHz 3.3GHz
TB時最大動作クロック 3.5GHz 3.7GHz 3.6GHz
スマート・キャッシュ 20MB 15MB
対応ソケット LGA2011-v3
TDP 140W
対応メモリ DDR4-2133 4チャネル
PCI-Express Gen3.0:40レーン Gen3.0:28レーン
1000個ロット時の1個当たりの価格 1059ドル 594ドル 396ドル
実勢価格 12万円前後 6万8000円前後 4万5000円前後

続いてX99 Expressを確認しよう。最大の変更点は、始めてDDR4メモリを採用したことだろう。規格の変更に合わせてピン数、形状なども変更となったため、DDR3メモリとの互換性は無い。データ転送速度は2133MHzとなっており、DDR3で現在主流となっている1600MHzよりも高速だ。電圧はDDR3の1.5Vから1.2Vに引き下げられ、より省電力化している。加えて、X79 Express同様にクアッドチャネルアクセスが可能なため、メインストリーム向けの9シリーズチップセットよりも高速なアクセスが可能。メモリ性能の違いについては、ベンチマークテストで詳しく触れていきたい。CPUごとの特徴を鑑みた上で改めてeX.computerのPCラインナップを見てみると、それぞれのモデルの特徴が分かってくるだろう。あくまでマイナビニュースとしての視点だが、それぞれのモデルのおススメ用途は以下のようになる。

Core i7-5960X搭載機 : 将来を見据えたゲーミング、最強の編集制作作業マシン

Core i7-5960Xを搭載する場合、その最大のメリットは8コア/16スレッドを利用できることとなる。前述の通り動作クロックは3.0GHzとそれほど高くないので、そのCPU処理能力が活かされるのはマルチコアに最適化されたアプリケーションだ。設計の古いアプリケーションやゲームでは逆にその性能を活かしきれず、むしろ動作クロックのぶんだけ劣ってしまう可能性もある。ゲームなどではその傾向が顕著で、4コアまでしか効率的に利用できないタイトルが多い。とはいえ、1コアあたりのCPU性能の伸びが鈍化しているため、アプリケーションのマルチスレッド対応が今後一層進むことは間違いない。またPCI-Expressも40レーン利用できるので、マルチGPU環境にももってこいだ。CPUやGPUのコア数がリニアに反映される編集・制作ソフトや、将来を見据えて最新のテクノロジーを搭載しておきたい方に向いているだろう。

AeroStream RA9J-K62/XE

G-GEAR GX9J-E62/XE

Core i7-5930K搭載機 : マルチGPUを活かせるマルチメディア編集・ゲームマシン

一方Core i7-5930Kは、コア数こそ6コアに減少するものの、動作クロックが3.50GHzと比較的高い。またPCI-Expressは40レーン利用可能であるため、NVIDIA SLIやAMD CrossfireなどのマルチGPUソリューションに対して適正がある。こういった傾向から、グラフィックスカードを複数枚積んだハイエンドゲーミングマシンを構成するにはうってつけのモデルとなる。また、CPUよりもGPUの処理能力が重要となるソフトを利用する際にはCore i7-5960Xよりもコストパフォーマンスが良く、グラフィックスワークステーションにも向いているだろう。3製品の中ではもっともバランスが良好なため、迷ったときにはCore i7-5930Kを選択したのちに各パーツをカスタマイズすると良さそうだ。

G-GEAR GX9J-D62/XE

Core i7-5820K搭載機 : マルチコアを活かした動画エンコード&ゲーミングマシン

Core i7-5820Kはもっとも安価に提供される製品だが、Core i7-5930K同様に6コア/12スレッドが利用でき、動作クロックも3.3GHzと決して低くない。メインストリームCPUより上のコア数を狙うにはうってつけのモデルだ。ただし、PCI-Expressは28レーンに抑えられているため、グラフィックスカードをx16で動作させられるのは1枚のみとなる。よってマルチGPUへの対応はメインストリームとほぼ同等で、ゲームなどを目的とした場合は優位性が見出しにくくなる。よって、Core i7-5820KはHaswell Refreshよりも高い映像や写真、音声などのエンコード性能を得たいユーザーの選択肢となるのではないだろうか。

AeroStream RA7J-J62/XE

エアロストリーム RA9J-K62/XE

次ページでは、お借りした試用機のハードウェアを確認していこう。