現在、液晶ディスプレイは生活の至るところに浸透している。テレビやPCのモニタにとどまらず、コンビニなどのキオスク端末、インフォメーションパネル、カーナビ、携帯端末など、枚挙にいとまがないほどに幅広い分野で活用されている。液晶ディスプレイを目にしない日はなく、すでに必要不可欠な存在といっていいだろう。

だが、これほどまでに液晶ディスプレイが人の生活に密着したことから、ディスプレイを眺める時間は増し、さまざまな健康被害に対する懸念も生じている。その一つが「VDT症候群」だ。これはディスプレイを長時間使用する作業により、目や体や心にいろいろな影響が出てしまう病気のこと。その症状は、夕方になると近くのものが見にくくなる「夕方老眼」や眼精疲労、ドライアイ、白内障などに加え、肩こり、睡眠障害、不安感、抑うつ状態など多種多様。なかでも顕著なのは、やはり目への負担だ。以前にマイナビニュースが行ったVDT作業者を対象とした読者アンケートでも、大半の人が目の疲れを訴えていた。しかしながら、液晶ディスプレイが生活と密な関係にある現状で、液晶ディスプレイから距離を取るのはなかなかに至難である。それならば、せめて使用する時間が長いであろうPCの表示環境を改善し、目への負担を軽減するのがベターだろう。

目への負担を改善するポイントの一つは画面の明るさ

第一に改善する点は画面の明るさだ。ディスプレイの輝度は明るすぎると疲労しやすくなり、逆に暗い場合には視認性が落ちるためストレスになるといわれている。このため、室内の照明に応じて、ディスプレイの明るさや色温度も最適な設定に調整し直す必要がある。輝度や色温度の調整機能はたいていのディスプレイが備えているため、すぐにでも実行できるはずだ。

画面のチラつき「フリッカー」とは

次に昨今話題になっているフリッカーへの対策だが、これはユーザー側だけで対処するのは難しく、しっかりとしたディスプレイを選択するしかない。フリッカーとは画面のチラつきのことで、ディスプレイが明滅しているように見える状態を指す。

フリッカーの原因はいろいろと考えられるが、リフレッシュレートやケーブルの接続状況を見直しても、例えば目の疲れが取れないというのなら、使用しているディスプレイがフリッカーを感じやすい製品である可能性が高い。最近よく聞かれる例だと、LEDバックライトを使用しており、かつパルス幅変調(以下PWM)方式の調光を用いている液晶ディスプレイでは、フリッカーが出やすいようだ。

フリッカーの要因と、パルス幅変調方式とLEDバックライト

PWM方式の調光とは、バックライトを人が感知できないほどの高速で明滅させることによって明るさを調整する方式のことであり、古くから多くのディスプレイに採用されてきた。単位時間内で点灯時間を長くすれば人の目には明るく見え、消灯時間を長くすれば暗く見えるわけである。

最大輝度設定100%

中間輝度設定50%

最低輝度設定0%
オシロスコープによるPWM調光方式の測定結果。輝度は上から最大輝度、50%、最低輝度となっている。常時点灯の最大輝度以外では、オンとオフを繰り返すことにより輝度の調整を行っている

技術としては非常にこなれており、回路もシンプルなので低コストで搭載できるのだが、これがLEDバックライトの登場(従来のバックライトは冷陰極蛍光管)によって、少々事情が変わってしまった。LEDは点灯と消灯の切り替えがシャープであり残光時間が非常に短い。従来の冷陰極蛍光管(以下CCFL)では緩やかに明るさが減衰していたために、残光で気がつきにくかったフリッカーが、LEDではそれと感じられるようになってしまったわけである。

CCFL(左)とLED(右)の波形。CCFLが緩やかでスムーズに変調する波形であるのに対して、LEDは非常に急峻な波形となっている

それでも高速な動作なので普通に眺めている状態でフリッカーを明確に感じることは少ないだろうが、視点を振ったときなど、ふとした拍子に見えることはあり得る。また、その原理上、バックライトが消灯している時間が長くなる低輝度ではフリッカーを感じる機会は増えるだろう。無論、明滅による輝度調整を必要としない最大輝度で使用すればフリッカーは生じないが、250cd/㎡や300cd/㎡といった高輝度のモニタを常時眺めていては、とてつもない負担が目にかかってしまう。

それでは、フリッカーを感じない人ならば問題はないのかといえば、そのようなことはない。認識する・しないに関わらず、PWM調光方式によるフリッカーは目の疲れ、ストレス、頭痛や嫌悪感などの症状を引き起こすことがある。取り分け、長時間ディスプレイと向き合うような人には深刻な問題となり得る。