プロの写真の現場が、銀塩フィルムから完全デジタル化に移行されてから久しい。今では限りなく100%に近い現場が、デジタルでやり取りされているといっても過言ではないだろう。では、写真現場のデジタル化とはいったいどういうことなのだろうか? 写真は、おもに「撮影」と「現像」という作業に大別できる。撮影は銀塩カメラからデジタルカメラへ移行したと捉えればわかりやすい。現像に関しては、それまで“プロラボ”におまかせしていたものを、パソコンを使って自ら作業することになった。この現像用パソコンで、大きな役割を果たすのがディスプレイの存在。今回、ディスプレイが、どのくらい大切なのかをプロのカメラマン、魚住誠一氏にうかがってみた。

「自分が信用できる“色”を表現してくれるかがカギ」

フォトグラファー 魚住誠一 (うおずみせいいち)氏 1963年、愛知県生まれ。スタジオアシスタントを経て、94年に独立。一般誌、女性誌、音楽誌、カメラ専門誌など幅広く活躍中。2月13日よりパシフィコ横浜で開催されるカメラと写真映像の情報発信イベント「CP+2014」ではTAMRONブース他多数出演予定。詳しい情報は自身のオフィシャルWEBサイト

マイナビニュース(以下、MN):現像用のパソコンを選ぶ際にポイントはいくつかあるでしょうが、もっとも重視したいのはどこですか?

魚住誠一氏(以下、魚住氏):現像用パソコンを購入する際、もっともお金をかけなくてはならないのは、ズバリ、ディスプレイです。カラーマネジメントの基本はモニター・ディスプレイなので、ここにお金を使わないことにはお話しになりません。自分が信用できるカラーで表示してくれなければ、撮影時にいかに色にこだわろうとも、その苦労はすべて水の泡です。

MN:RAW現像を快適にするために高性能なCPUにしたり、Adobe Photoshopを速く起動させるためにSSDを搭載したりといった考えはないのでしょうか?

魚住氏:予算によります。仮に予算が30万円あれば、15万円以上はディスプレイに費やし、残りで高性能CPUや最新SSDを用意するでしょう。これが予算20万円になっても、ディスプレイには15万円はかけます。この場合、残った予算でCPUやメモリを用意することになるので、パソコン本体のパフォーマンスはかなりプアなものになるでしょうね(笑)。極端にいうと、プロでやっていくのならば、高解像度なデジタル一眼や高性能レンズを購入する前に、信用のおけるディスプレイを用意しておくことのほうが大切だといえます。

MN:では、プロフェッショナルの現場で使えるディスプレイを選ぶのに重視しなくてはいけないポイントは何でしょうか?

魚住氏:ディスプレイを選ぶ際にいくつかスペックを検討するでしょう。「明るさ」「視野角」「解像度」「コントラスト」などがおもな基準となるでしょうが、プロの現場で使うのなら「階調表現」を重視しなくてはなりません。明るい画面ならばゲームやムービーを楽しむのに最適でしょうし、視野角が広ければ複数人でコンテンツを眺めるのに向きます。でも、そのどちらもプロのカメラマンには不要なものなのです。コントラストの強さも場合によってはジャマな存在です。黒を映し出している部分の階調がいかにシッカリと表現されているか、プロの現場で使うのなら、まずここにこだわったほうがよいです。

このようにディスプレイ選びへの徹底的なこだわりをみせる魚住氏。現在EIZO社製のディスプレイを使用している同氏に、今回、ベンキュージャパンが販売するグラフィックス市場向けモデル「PG2401PT」を試用いただいた。同社にとって新分野への製品投入となる「PG2401PT」。高いこだわりを持つ魚住氏にはどう映ったのだろうか。

昨年10月30日に発売された、ベンキュージャパンのグラフィックモデル「PG2401PT」