「目論見書」とはファンド(投資信託)を購入する上で、必ず目を通す資料です。
目論見書は「交付目論見書」と「請求目論見書」の2種類。交付目論見書にはファンドの基本情報、請求目論見書にはファンドの詳細情報が記載されています。
特に次のような「どんなファンドなのか」という内容を記載している交付目論見書は、ファンドを購入する前に必ずチェックしてくださいね。
この記事では2種類の目論見書の概要と、交付目論見書の読み方のポイントを紹介します。
目論見書とは、ファンド(投資信託)の説明書
目論見書は、投資家がファンドを購入する上で重要な情報が網羅されている資料です。
目論見書の作成・交付は法律により義務付けられており、記載する項目についても細かく定められています。
目論見書には「交付目論見書」と「請求目論見書」という2種類があります。違いを次の表で見てみましょう。
目論見書 | 違い |
---|---|
交付目論見書 | ・請求の有無に関わらず投資家に必ず交付しなければいけない ・ファンドの基本情報が記載されている |
請求目論見書 | ・投資家から請求があった場合に交付しなければいけない ・ファンドの詳細情報が記載されている |
交付目論見書にはファンドの目的や方針などの基本的情報。請求目論見にはファンドの沿革や経理状況などより詳細な情報が載っています。
今回の記事では投資家に必ず配布される「交付目論見書」について詳しく解説していきます。
交付目論見書を読むときの5つのポイント
交付目論見書には次の内容が記載されています。
- ファンドの目的や特色、仕組み
- 投資方針や投資対象
- 運用手法や運用プロセス
- 分配方針
- 投資制限
- 投資リスク
- 運用実績や投資状況
- 費用や税金に関する情報
- 申込に必要な情報
- 信託約款の内容 など
項目が多すぎて何を見たらいいのか分かりませんよね。
でも見るべきポイントは大きく分けると、たった5つです。
次の項目から「eMAXISSlim バランス(8資産均等型)」と「ひふみ投信」という実際のファンドを例に、目論見書のチェックポイントを確認していきましょう。
目論見書の読み方ポイントその1、ファンドの目的や特色を知ろう
まずどんなファンドに投資しようとしているのかを知る必要があります。
「ファンドの目的・特色」では、次の4つに注目しましょう。
- ファンドの目的
- 主要投資対象
- 投資方針※
- 分配方針
ファンドの目的では「どのような投資成果を目指して運用しているのか」がわかります。
主要投資対象で「何を投資の対象にしているのか」、投資方針で「どのような方針で運用しているのか」もチェックしましょう。
eMAXISSlim バランス(8資産均等型) | ひふみ投信 | |
---|---|---|
ファンドの目的 | ・日本を含む世界各国の株式、公社債、不動産投資信託証券市場の値動きに連動する | ひふみ投信マザーファンドの受益証券を通じて国内外の株式へ積極的に投資する |
主要投資対象 | 国内外の株式、債券、不動産へ12.5%ずつ | 国内外の株式 |
投資方針 | 合成ベンチマーク※に連動する成果を目指す | 市場価値が割安な銘柄に長期投資する |
分配方針 | 年1回。分配対象収益が少額の場合には実施しない | 年1回。委託会社の判断により行わない場合もあり |
eMAXISSlim バランスは株式、債券、不動産などへバランスよく投資します。ひふみ投信の方は債券等より株式へ積極投資するファンドだと分かるでしょう。
運用方針についてもeMAXISSlim バランスがベンチマークに連動する安定した収益を狙うのに対し、ひふみ投信は成長性のある割安企業へ積極的に投資するスタイルを取っています。
分配方針では、次の2つを確認してくださいね。
- どのような方針に基いて分配を行っているのか
- どのようなペースでいつ決算を行っているのか
ファンド購入後、「分配金がどれだけ出ているか」などをチェックするために、分配の頻度や決算のタイミングを知っておく必要があります。
目論見書の読み方ポイントその2、ファンドのリスクを知る
ファンドには価格変動、為替変動、金利変動などによる元本割れのリスクがあります。これらの変動に備えるために、購入前にリスクを把握しておきましょう。
- 基準価額の変動要因
- リスクの管理体制
実際にeMAXISSlim バランスとひふみ投信の目論見書に記載されているリスクを確認します。
eMAXISSlim バランス(8資産均等型) | ひふみ投信 | |
---|---|---|
価格変動リスク | ・株価、債券、不動産価格の影響を受ける | ・株価変動の影響を大きく受ける |
流動性リスク | 不動産投資信託証券は株式に比べて市場規模が小さく、流動性リスクが高い | 株式を不利な価格で売却するリスク |
信用リスク | 株式や債券発行者の経営・財務状況の悪化による価格下落の可能性 | 企業の経営・財務の悪化や外部評価の悪化による株価下落リスク |
為替変動、カントリー・リスク(新興国リスク) | ・新興国のクーデーター、デフォルト等によるリスクがある ・為替ヘッジなし |
・為替変動による影響。株式発行企業が立地する国の経済・政治情勢によるリスク ・為替ヘッジなし |
分配金 | 年1回。分配対象収益が少額の場合には実施しない | 年1回。委託会社の判断により行わない場合もあり |
特徴は「価格変動リスク」と「流動性リスク」の違い。eMAXISSlim バランスの方が投資対象が多いため、基準価額の変動要因が多くなります。
ひふみ投信は株への投資が中心なので基準価額も株価に左右されます。株価が好調なときは利回りも高いですが、株式市場全体が不調だとそれだけ下落幅も大きくなるという特徴があります。
目論見書の読み方ポイントその3、運用期間や決算日を確認する
ファンドには「期限があるもの」と「無期限のもの」があります。信託期間に記載されている、「運用されている期間」を確認しましょう。
また決算日も分配金のタイミングを知るために必要ですので、あわせてチェックしておいてくださいね。
- 信託期間
- 決算日
eMAXISSlim バランス(8資産均等型) | ひふみ投信 | |
---|---|---|
信託期間 | 無期限 | 無期限 |
決算日 | 年1回(毎年4月25日) | 年1回(毎年9月30日) |
目論見書の読み方ポイントその4、ファンドの運用状況を確認する
ファンドの運用状況や資産規模は、投資を検討する上で重要な情報です。しっかり確認しておきましょう。
- 基準価額・純資産の推移
- 分配の推移
- 主要な資産の状況
「基準価額・純資産の推移」が次のような場合は、そのファンドへの投資を控えましょう。
- 基準価額が下落傾向にある
- 純資産総額が減少傾向にある
目論見書に記載されている「主な資産の状況」には、組入れられている資産の内容やバランス、組入れ上位銘柄など、ファンドの特徴が詳しく記載されています。
目論見書の読み方ポイントその5、ファンドにかかるコストを把握する
ファンドに投資をする場合、販売手数料や信託報酬、信託財産留保額などの費用や税金がかかります。どんな費用や税金が、どのタイミングでどのくらいかかるのか、把握しておきましょう。
- ファンドの費用
- 税金
ファンドの費用には、販売手数料や信託報酬、信託財産留保額など、そのファンドにかかるさまざまな費用が記載されています。
税金として記載されるのは、購入時、分配時、償還時にかかる所得税、地方税など。
どんな費用や税金がどのくらい必要なのか、把握しておいてくださいね。
これらの情報を把握しておけば、購入後「トータルの利益(損益)がどれくらいなのか」をチェックしやすくなりますよ。
eMAXISSlim バランス(8資産均等型) | ひふみ投信 | |
---|---|---|
購入時手数料 | 無料 | 無料 |
信託報酬 | 年率0.17172% | 年率1.0584% |
分配時 | ・配当所得として課税 ・普通分配金に対し20.315% |
配当所得として課税 ・普通分配金に対し20.315% |
換金・償還時 | ・譲渡所得として課税 ・換金、償還時の差額に20.315%の課税 |
・譲渡所得として課税 ・換金、償還時の差額に20.315%の課税 |
これら以外の項目にも、投資地域や銘柄選定までの投資プロセスなど多くの情報が記載されているから、しっかりと目は通しておけよ。
投資信託を始めるなら、まずは目論見書をチェックしよう!
目論見書はファンドの説明書です。ファンドの基本情報が記載される「交付目論見書」と、ファンドの詳細情報が記載される「請求目論見書」があります。
交付目論見書は必ず交付されるので、ファンド購入前に必ずチェックしてくださいね。
交付目論見書は、次の5つのポイントに注目して読んでみましょう。
・ファンドの目的や特色を知る
・ファンドのリスクを知る
・運用期間や決算日を確認する
・ファンドの運用状況を確認する
・ファンドにかかるコストを把握する
ファンド購入後に情報の変更があった場合には、目論見書も改定され、新しく発行されることがあります。そういった場合にも、目論見書を再度確認してください。