株式投資をしていれば、損が出ることもあります。プロでも全戦全勝ではないのですから、何度か負けてしまうのは仕方ないことです。
大切なのは、1回も損を出さないことではなく、1回の損を小さくして利益の額を大きくすることです。そのためには、損が出たときにどう対応するかが重要です。
初心者ほど、含み損が出ている銘柄を「また株価があがるかもしれない」と根拠のない期待を抱き続けながら持ち続けてしまいますが、これは損失額を大きくするNG行動です。
買った株が値下がりしたのに、「また上昇するかも」と思って待っているうちに、どんどん損失が膨らんで売るに売れなくなる人はたくさんいます。
損失を膨らませないためには、損を早めに切り捨てる必要があります。投資対象を、損失が出ている銘柄から値上がりが期待できる銘柄に移すことで、あなたの大切な投資資金を有効に使い、利益を増やしましょう。
株式投資の基本とも言える「損切り(ロスカット)」の基本についてお伝えします。
株で利益を逃すパターンは「利益確定の失敗」と「損切りの失敗」
「株を始めたものの、失敗して損してばっかり」という初心者の方も多いことでしょう。実際、個人投資家のほとんどが、満足行く成績をあげられないと言われています。
なぜ望む結果を得られないのか、なぜ失敗してしまうのかを考えるとき、理解しておきたいことがひとつあります。
株式投資での失敗には利益確定の失敗と損失確定(損切り)の失敗の2種類があること、そしてより傷が深いのは損切りの失敗だということです。
利益確定の失敗では実際に金銭的なダメージは受けない
利益確定の失敗とは、得られたはずの利益を逃すことです。あなたにもこんな経験がありませんか。
- 株価が値上がりしてきたので売ったが、さらに値上がりして「もう少し待っていたらもっと利益が出たのに」と後悔した
- 株価が上昇してきたが、さらに上昇すると予想して待っていたら、株価が下がり始めてベストな売りどきを逃した
どちらも「もっと儲けられたはずなのに」と後悔するパターンですね。
しかし、冷静に考えてみてください。儲けが少なくなったのは確かにショックですが、金銭的にマイナスになって損をしたわけではありません。
利益確定の失敗は、精神的にはダメージが大きいですし、利益が小さくなっていますから失敗は失敗です。
しかし現実的に損失が出ているわけではないことを意識しておけば、失敗を気にしすぎたり、いつまでも引きずることはなくなるでしょう。
損失確定を失敗して大きな損が出るのが本当の「株での失敗」
損失確定(損切り)の失敗は、こんな状態のことです。あなたも経験したことがありますよね。
- 買った株が値下がりしたけど「また上昇するかも」と思って待っているうちに、どんどん損失が膨らんで売るに売れなくなる
- 損失が膨らんでから売ったので、大きな損失が出た
売ると実際に大きな損失が出てしまうし、売らなくても含み損を抱えているので資産は目減りしています。
損を確定させることができず、売るに売れない状態や株のことを「塩漬け状態」「塩漬け株」と言います。
初心者が損切りできない理由!根拠のない期待は捨ててしまえ
保有している1つの銘柄がどんどん値下がって損失が大きくなってしまうと、他の銘柄で利益を得ても全体の利益は目減りします。こんな状態にならないためにはどうしたらいいのでしょうか。
唯一の方法は、株価が下がり始めたら、「含み損が大きくなりすぎて売るに売れない(塩漬け)」状態になる前に、ある程度の損を覚悟で売ってしまうことです。
これが損切り(ロスカット)で、株式投資の基本なのですが、実行できない人もたくさんいます。
初心者が損切りできない理由と、機械的に損切りするためにはどうしたらのいいのかをご説明します。
初心者が塩漬け株を作ってしまう心理的メカニズム
初心者が損切りできない主な理由は3つあります。
- 損失を確定させたくない「損失回避」の性質に流されてしまう
- 自分の誤りを認めたくないプライドがある
- 根拠のない期待を抱いてしまう
「損が大きくなる前に売れ」と言われても、損が出るとわかっている状態で売るのは勇気がいります。「また上がるかもしれないし、もうちょっと持ってみようかな」と考えてしまう人も多いでしょう。
人間には「今、損をすること」を回避してしまう、損失回避という性質があります。損をしそうなとき、損失を確定させることを嫌って、「含み損のまま持っていれば損は確定しない」と、値下がりしている銘柄を売ることを避ける性質です。
「自分の投資行動が間違っていたと認めたくない」というプライドも、損切りの判断を鈍らせてしまいます。しかし、株式投資において大切なのは、プライドを守ることではなく、損失を小さくして利益を守ることだと意識しましょう。
「また上がるかも」という期待も、初心者が陥りやすいダメな心理です。株価は下がり始めるとどこまで下がるかわかりませんから、保有し続ければ損失は広がる可能性が高いです。
「一時的な悪材料が出て下がっているだけで、技術力も市場シェアもあるから絶対に株価が戻るはず」などの理由がなければ、早めに損切りしてください。
塩漬け株の弊害!含み損を抱える上に、新たな銘柄に投資できない
「含み損のまま保有していれば、損失は確定しない」とか、「損切りしない限り、実際に損はしない」と言う人もいます。確かに、損切りしなければ実際に損はしません。
しかし、塩漬け株はあなたの投資の幅を狭め、資産の効率的な運用を邪魔します。
塩漬け状態の株を保有していると、そのぶんの資金を他の投資に回せません。「この銘柄は絶対にあがる!めったにない投資チャンスだ!」という銘柄があっても、塩漬け株に資金を拘束されているせいで、新たな株を買う余裕が足りないという事態になりかねません。
損失がさらに増えるかもしれない塩漬け株と、株価上昇が期待できる株を天秤にかけてみましょう。上昇する可能性が高い株の方を持ちたいですよね。
冷静に損切り判断ができる範囲の金額で投資をするのが重要
- 1回の損失を小さくして利益を守る
- 株価が下がり始めるとどこまで下がるかわからない
- 塩漬け株は投資チャンスを潰す
これらは、落ち着いて考えれば当たり前のことだと思えます。
それでも損切りができない人が多いのは、「損を出したくない」と思うあまり冷静さを失っているからです。そして、投資している金額が大きいほど、冷静な心理状態を保ちにくくなります。
感情的にならず、冷静な判断ができる範囲の金額だけを投資に回すことで、合理的に損切りできる状況を作りましょう。
投資に回せる資金がどれくらいかわからない人は、こちらの記事の「株は少額からでも始められる!余裕資金が少なくてもOK」を参考にしてください。
損切りラインは10%値下がり!逆指値注文で機械的にロスカット
銘柄などにもよりますが、一般的には10%値下がりしたら損切りラインと言われています。
「ここまでの値下がりは許容できる」と最初に自分で決め、それを超えたら迷わず損切りしましょう。
「頭ではわかっているけど、実際に損失が出た時に思いきって損切りできない」という人に使って欲しいのは、逆指値(ぎゃくさしね)注文です。
逆指値注文とは、「ある一定の株価以下になったら売る」という注文のことです。
逆指値注文は事前に発注でき、実際に株価が下落したときに機械的に損切り可能なので、リスク管理として使うのがおすすめです。
逆指値注文のメリットや使い方は指値・成行・逆指値の使い方!便利な株の注文方法で詳しく解説しています。
損切りしないナンピン買いの効果は?実は損失が膨らむ可能性大
株で損失が出ても損切りしないで、新たな資金を投入して「ナンピン(難平)買い」をする人もいます。
平均取得単価を下げる手法なのですが、資金に余裕がない人や、長期投資・長期保有するつもりがない人にはおすすめできません。
ナンピン買いは損失を減らして見せてくれる手法
ナンピン買いとは、株価が下がった時に、同じ銘柄を追加で買うことです。平均取得単価を下げ、損失が減ったように見せる効果があります。
(2)株価が下がったので、500円で100株追加購入(計5万円)=取得単価は500円
(3)合計すると15万円÷200株で平均取得単価が750円になる
1000円で買って今の株価が500円なら50%損ですが、750円の取得単価で以下の株価が500円なら、33%の損になります。株価が下落した割合は下がっていますが、損失額は変わりません。
- ナンピン買い前:購入費用10万円、時価総額5万円なので、5万円の損
- ナンピン買い後:購入費用が15万円、時価総額は10万円なので、5万円の損
ナンピン買いで損失が膨らむ!ナンピン買いをおすすめしない理由
特定の人以外には、ナンピン買いはおすすめできません。
ナンピンした時点からさらに株価が下落したら、ナンピンしなかった場合よりも多くの損失を抱えることになるからです。
ナンピン買いをしていいのは、資金に余裕があり、中長期で少しずつ株を買い足していくと決めている人の場合です。
例えばある銘柄が300株欲しい場合に、300株を一気に買うのではなくて、100株ずつ買い足していくことで、株価の下落局面では取得コストを下げる効果があります。定量購入方式といいます。
購入時期 | 株価 | 購入株数 | 取得費用 |
---|---|---|---|
1月 | 1,000円 | 100 | 100,000円 |
2月 | 800円 | 100 | 80,000円 |
3月 | 600円 | 100 | 60,000円 |
1~3月合計 | 平均800円 | 300 | 240,000円 |
もともと300株買うつもりなのですから、安くなったときに買えたほうがいいというわけです。
その場合でも、損失が膨らみ過ぎないように、「この株価を超えたら、損切りする」「財務状態が悪くなって投資先としての魅力がなくなったら損切りする」という損切りラインを決めておくことは大事です。
株式投資をするときには、自分で株価の行方を予測をして株を買いますね。長期投資でも短期投資でも、その想定している範囲を超えたら、損切りするのが鉄則です。
ナンピン買いについては「ナンピン買いすべきタイミングとは?安易な買い増しはNG」を参照してください。
塩漬け株を使った貸株サービスで稼げるのは微々たる額
「塩漬けでも配当金がもらえるから、損切りせずに長期で持つ」「塩漬け株でも、貸株サービス※を使えば金利を稼げる」と主張する人もいます。
確かに、塩漬け株も長い視点で見れば株価が上昇するかもしれませんし、実際にそれで利益を上げている人もいます。こんな考え方なら気楽ですね。
しかし、気が楽になったところで損失を抱えて続けているという現実は変わりませんし、株価が本当に上がるかもわかりません。
より効率的に資金を回転させて利益を上げていきたいなら、やはり損切りが必要です。
自分が持っている株を証券会社に貸し、金利を受け取れるサービスのことです。こちらの記事でメリット・デメリットを詳しく紹介しています。
ボーナス銘柄以外は貸株サービスを利用する価値なし
「塩漬け株を貸株にして、金利を受け取る」という方法も魅力的ですが、実は、貸株で相当額の利益が出るのは、証券会社が指定するほんの一部のボーナス銘柄だけです。
たいていが1%以下の金利で、利益は微々たるもので「ないよりマシ」といった程度です。
参考に、auカブコム証券のボーナス金利銘柄(2015年11月分)を見ると、15%の金利がつく銘柄が目を引きますが、全体を見ると1%以上の金利がつくのはわずか100銘柄程度です。
その他の500~1,000銘柄は0.50%、2,500~3,000銘柄は0.10%しか金利はつきません。
コード | 銘柄 | 貸株金利 |
---|---|---|
1433 | べステラ | 15.00% |
3692 | FFRI | 15.00% |
3918 | PCIホールディングス | 15.00% |
3914 | ジグソー | 15.00% |
6177 | AppBank | 15.00% |
6031 | サイジニア | 14.00% |
6048 | デザインワン・ジャパン | 13.00% |
6047 | Gunosy | 10.00% |
3742 | ITBook | 10.00% |
3689 | イグニス | 9.00% |
しかも、貸株サービスを利用するとこんなデメリットもあります。
-
【貸株サービスのデメリット・リスク】
- 証券会社が倒産した時に株を失う
- 配当金相当額を受け取って確定申告すると、二重に課税される
- 株の保有期間に応じた株主優待のグレードアップが受けられないかも
これなら、損切りして値上がりを期待できる株を買うほうがいいと思いませんか。
損切りして塩漬け株を作らない!負けの数ではなく額を意識しよう
初心者は「勝つ数、負ける数」にこだわりがちですが、「勝つ額、負ける額」のほうが重要だと意識する必要があります。
損を早く切り捨てて、有望な銘柄にうつりましょう。そうすることで、損失を最小化し、資金を有効に使って利益を最大化できます。冷静に損切りするのは株式投資の基本の心構えですから、常に頭の片隅に置いて投資に臨んでください。