WHAT'S 株主優待?
株主優待とは、その名の通り株を持っている人にむけた優待のこと。自社の株に優待をつけることで、長期間株を保有してもらう目的で作ったものです。
自社が取り扱う商品やサービスをプレゼントしたり、プリペイドカードなど金券を提供したりしています。通常の株取引の場合、株価の変動によってタイミングを見て売買しなければならないため、初心者にはハードルが高いもの。
そこで桐谷さんは、企業に優待がある限り、その銘柄をずっと持ち続ける優待目的の投資からはじめることをおすすめしています。
KIRITANI's 9POINTS はじめての株主優待で知っておきたい9のこと
Point1
簡単に言うと、
通常の株取引は「狩猟」、
優待目的の株取引は「農耕」
Point2
優待株は少ない株数でも大量保有に近い
利益を受けることができる
Point3
株主優待分を金額換算して、
配当金と合わせて利回り4%以上のものを選ぶ
Point4
権利確定日に株を
所有していなければ、
株主優待を受けることが
できない
Point5
- ①配当利回りが高い
- ②株価が安い
- ③優待が使いやすい
Point6
株主優待を有効に活用するために、
自分がよく使うものを選び、
使用期限に気をつける
Point7
日常生活で使うものは、
株主優待で手に入れる
Point8
株主優待がきっかけで、
いままで知らなかったものにも出会える
Point9
証券会社の口座は
複数開設して使い分ける
Point1
簡単に言うと、通常の株取引は「狩猟」、優待目的の株取引は「農耕」
私は、通常の株取引は「狩猟」だと思っています。これから上がりそうな株を見つけて安値で買って、上がったら売る。逃げ損ねたら自分がやられてしまいます。一方、優待目的の株取引は「農耕」です。株を売らずに持ち続けることで、優待という実が収穫できます。
通常の株取引=狩猟
優待目的の株取引=農耕
取引の種類
株の取引は大きく「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」に分けられます。キャピタルゲインは、株価の値上がりによって得られる収入のこと。インカムゲインは、株を保有することによって得られる収入のこと。株主優待は、インカムゲインのひとつです。
Point2
優待株は少ない株数でも大量保有に近い利益を受けることができる
私が株主優待にのめり込んだきっかけは、リーマンショックで大損をしたことです。
それまでは、株の売買で利益を得ていました。本職の棋士よりも儲かって、2005年には資産3億円超。棋士を引退後は、自分の資産の3倍まで取引ができる信用取引を使って売買をしていました。
しかし、リーマンショックで大損。手元の資金がなくなります。持っている株を売らなければ、生活できない状態でしたが、50万円で買った株を10万円で売るのはとってもつらい。
そこで、生活の全てを株の優待で賄うようになりました。売買での利益をねらわなくなったら、毎日の値動きに一喜一憂する必要はありません。思い起こせば、現役時代は株価が気になって本業に身が入らないことも多々ありました。
優待目的なら、一度いい株を買えば優待は続くので、株価に生活を振り回されることもない。 投資初心者や忙しいビジネスマンにはおすすめできる投資方法だと思います。
株主優待を
おすすめする理由
優待のいいところは、持っている株数による格差が小さいところ。もちろん、100株よりも1000株のほうが、優待品が多かったり、サービスが手厚かったりすることはあります。しかし、その差が10倍になることは珍しい。配当益は株数と比例するのでお金持ちが有利ですが、優待なら少ない株数でも、比較的、大量保有に近い利益を受けることができます。また、優待株は5万円以下で買える企業が100社くらい存在します。これらの点から、初心者で資金も少ない人におすすめできる投資法なのです。
Point3
株主優待分を金額換算して、配当金と合わせて利回り4%以上のものを選ぶ
私が優待株を選ぶポイントは、利回りが4%以上あるもの。優待でもらえる品物やサービスを金額換算して、配当金と合わせて4%を超える利回りなら買っています。その株が値上がりして利回りが4%を下回ったら一度売って、再び安くなり4%に戻ったら買い戻します。
「利回り4%」と書くと、初心者には探すのが難しいと感じるかもしれませんね。マネー誌で毎月特集されていたり、優待株をテーマにしている株ブロガーの記事もあります。これらを読めば簡単に探すことができますよ。
ただし、東証一部への上場に必要な株主を集めるために、お得な優待を行う会社も存在します。そういった会社は、上場後に優待を取りやめたりするので注意しましょう。最初のうちは、東証一部で配当をしっかりと出している会社をねらうといいでしょう。
お得な優待株の選び方
現状、配当利回りが4%を超える株は、30〜40銘柄程度と多くはありません。一方、優待製品やサービスを金額換算して配当金と足した場合、4%を超える配当利回りになる株は数百銘柄。配当金ねらいよりも、優待株ねらいのほうが、コストパフォーマンスは高くなります。
Point4
権利確定日に株を所有していなければ、株主優待を受けることができない
株主優待は、株を買えば自動的に受けられるものではありません。条件は、ある時点でその株を保有していることです。それが、「権利確定日」です。
権利確定日は、その名の通り優待や配当を受ける権利が確定する日。権利確定日に株を所有していれば、どんなに保有期間が短くても、株主優待を受けることができます。
そのため、権利確定日が近づくと優待をねらって購入する人が増えて株価が上がり、その後は優待の権利を得た人が株を売ってしまうので、株価が下落することが珍しくありません。私の場合、株価が上がる権利確定日に購入することは避けるようにしています。
株主優待で重要な
「「権利確定日」
権利確定日とは、株主名簿に名前が記載される日のこと。株主名簿に載ることで、株主優待を受ける権利を得ることができます。注意したいのは、株主名簿に名前が載るのは株を買ってから3営業日後になるということ。つまり、権利確定日に買ったのでは遅く、その3営業日前(土日祝日の市場が休みの日を除いて)には買わなくてはいけません。一般的に「権利付最終日」といわれているので、お目当ての優待株があれば、しっかりと確認しておきましょう。
Point5
人気優待株の条件は、①配当利回りが高い、②株価が安い、③優待が使いやすい
人気がある優待の条件は、配当利回りが高い、株価が安くて買いやすい、優待が使いやすいことです。
例えば外食産業は優待利回りが高く、かつ、使う場所が多いチェーン店も多いので、人気が高い。代表的な銘柄が、マクドナルドです。
食品や飲料メーカーは、自社の新商品を詰め合わせた優待が喜ばれます。特にカゴメはファンが多いですね。
最近は食品や飲料と全く関係ない企業も、各地の名産品を取り扱う優待をはじめています。オリックスは、それで株主が急増し、株価も急伸しました。
それ以外では、アミューズメントパークを運営している企業の株主優待チケットや回数券も人気が高いと思います。特に、ブランド力があるテーマパークなどは、割高でもそれを目的に株を購入する人が少なくありません。ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは良い例ですね。
人気のある株主優待
外食産業の株主優待は食事の無料券や金額クーポン券として、アミューズメント産業の株主優待は入場チケットと提供されるケースが多いので、金券として利用できるので人気です。ただし、繁忙期は使用不可などの条件がつくこともあるので、自分の使い方と照らし合わせて、損をしないかどうかを考えておきましょう。
Point6
株主優待を有効に活用するために、自分がよく使うものを選び、使用期限に気をつける
せっかくの株主優待ですから、できれば無駄にはしたくないという気持ちはわかります。そのために注意したいのはふたつ。
ひとつは、自分がよく使う製品やサービスをねらうことです。例えば、映画が好きなら東映や松竹といった映画会社の株を買っておけば、指定劇場で映画鑑賞ができる株主優待券がもらえます。たまに、「地方は東京よりも施設やチェーン店が少ないから、株主優待が使いにくい」という相談を受けます。
しかし、大分にはハーモニーランドといったサンリオの株主優待が有効な施設がありますし、北海道には、ボウリング場や映画館を運営するSDエンターテインメントという会社があります。地方在住でも、自分がよく使っている施設の株主優待を調べれば、意外にお得な会社を見つけることができるかもしれません。
もうひとつは、株主優待券の使用期限に気をつけること。私は、近々使うものは専用ポーチに入れて、〆切り順に並べることで使い忘れがないようにしています。
株主優待を有効活用する方法
株主優待は、使わなければ宝の持ち腐れ。上手く活用するには、できるだけ自分が使う製品やサービスに絞り込むことです。その際、有効期限を気にしながら、〆切りが早いものから使っていくことを忘れないようにしましょう。
Point7
日常生活で使うものは、株主優待で手に入れる
日常生活で使うものは、食品や衣類など、ほとんど株主優待で手に入れています。今日、乗ってきた自転車もそうですね。
身につけているものでは、シャツは紳士服のタカQ、ズボンはスポーツ用品店のヒマラヤ、靴はスキー用品を販売するアルペン、靴下はクロコダイルですが、これはアパレルメーカーのヤマトインターナショナルです。ベルトは、どこか忘れたのですがカタログギフトでもらいました。
すみだ水族館の年間パスポートも2枚頂いたので、デートもできると思っていたのですが、彼女ができなかったので、知り合いの編集者にあげてしまいました(笑)。
日常生活に役立つ株主優待
株主優待には、外食や衣服、レジャー、カタログギフト、QUOカードなどが多く、日常生活に使えるといったイメージがあります。また、飛行機会社や鉄道会社には、飛行機や電車の優待チケットが、レンタカー会社にはレンタカーの割引券など存在します。無料宿泊券を提供しているホテルもあるので、旅行や帰省に使ってみてはどうでしょう。
Point8
株主優待がきっかけで、いままで知らなかったものにも出会える
せっかくの株主優待は無駄にしたくないので、できるだけ使い切るようにしています。それによって趣味が広がるといったことはありますね。
例えば、映画。元々はあまり観なかったので、優待券がまとまった冊子をバラして、金券ショップに売っていました。
しかし、会社側が転売できないようカード式にしたので、仕方なく観るように。いまでは年間100本以上を鑑賞して、映画評論のお仕事も頂けるようになりましたね。ジョニー・デップに会うこともできました。
優待だけでなく、
株価にも注意
株主優待は多種多様なので、いままで食べたことがない食品やレストランに出会えることもあり、世界が広がります。ただし、株高局面では、利回りという観点では旨みが少なくなります。NTTなど高配当利回り株を購入して、その配当金で映画のチケットを買ったほうが利回りという面ではお得になるケースもあるので、購入する株価には注意をしておきましょう。
Point9
証券会社の口座は複数開設して使い分ける
私のメイン口座は松井証券です。1日10万円までの取引は売買手数料が無料、そして、株式投資・金融情報サイト「QUICK」も無料で見られるのは嬉しいですね。ほかには、SBI証券、ライブスター証券、GMOクリック証券、岩井コスモ証券に口座を持っています。この5社は使いやすいですね。
株式投資をはじめるにあたって口座を開設するときには、複数の証券会社を利用するのがおすすめです。その理由はふたつ。ひとつは、証券会社ごとに使えるツールが異なること。私は「QUICK」は松井証券で、「会社四季報」はSBI証券で見ています。もうひとつは、口座を持っていればメールマガジンが送られてきて、情報を入手できることです。
証券会社の選び方
証券会社の口座は複数開設して使い分けるのが合理的。証券会社ごとに異なるツールを使って、効率的でお得な株式投資を目指しましょう。ちなみに、口座開設と管理費が無料の証券会社を選ぶことを忘れずに。
Affer interview
私も俺株を見て
勉強したいくらいです(笑)
「俺株」はキャラが立っていてストーリーも面白い。画も見やすいし、株の初心者でもとっつきやすいと思います。これを読んでいると、自然に株のことがわかるようにできていますね。まだ知らない人も多いと思うので、「俺株」が広がれば、株に興味を持つ人が増えるのではないでしょうか。
桐谷広人 きりたに・ひろと
1949年生まれ、広島県出身。08年のリーマン・ショックと信用取引で資産3億円を6分の1にまで減らして以降、生活のほとんどを企業の株主優待で賄い、暮らしている。著書に、「桐谷さんの株主優待生活」(角川書店)や、「桐谷さんが教えるはじめての株主優待」(総合法令出版)など。